光の奔流、神の嘲笑。
砂の国…
かつて、楽園と呼ばれた、この世界最初の国。
文明が始めに起こり、神を奉じ、そして、異世界からの巫女と生贄を望んだ国。
最初から、これが普通ではないことなどわかっていた、オアシス……あれがその最たる物だろう。
大昔に起こった戦争で失われた大自然の名残だと、前にピエトルは私に話した。
その時はふぅん、と聞き流しているだけだったが、あの時……。
光の国を見たときに、そのすべての考えは吹き飛んだ、何故なら光の国には……街頭樹が植えられていた。
それがどうしたのだ? という話になりそうだが、私がそれまで回ってきた国々にはそんな物は存在しなかった。
せいぜいが、水の国に生えていた短い葦程度だった。
だが、それにもかかわらず光の国には多いとは言えない物の木々が街中に植え付けられていた。
その時、私はふとこんなことを思った。
――だれかが、この世界の自然……文明すらも操っている?――
そして、そんな突拍子も無いような私のバカげた考ええは、ピエトルによって保証されつつあった。
「……ついたぞ、ここが、最後の国、砂の国の都……“カラサ”だ。」
なんでもないかの様に言ってのけるピエトル。
「……これ、どういうこと……?」
目の前には堅牢な城壁、その奥に見える巨大な宮殿……。
だが、私と光輝にとっては、そわな景色たど目に入ってはこなかった。
何故なら、私たちにも想像がつかないほどの人、人、人!
その城壁を埋め尽くすかの様に街中……いや、国中のエルフが私を出迎えにきていた。
その中の中央……私たちの正面にいる顔中に毛の無い……しかしシワだらけの老人が私たちと元へ歩いてきた。
「……ごくろうだった、ぴえとるよ……いせかいのおとめ、ならびにきかんのいけにえ……たしかにかくにんしたぞ。」
光の無い目がハッキリとピエトルの事を見据え、その私よりも背の低い身長からは想像もできないほど低い、唸り声の様な声を上げた。
――この時、私はハッキリと……恐怖を感じた。
「……長老、その事で、帰還の生贄はこのオレでは……!」
ピエトルが大声で物申すが、その長老とやらの一睨みで止められる。
帰還の……生贄?
……乙女はどう考えても私の事だろう、そりゃあ光輝は綺麗な顔してるから女の子に見られる事も全くないわけではないが……そっちだったらキレる。
「ならん、いかいのものをかえすのには、いかいのものをつかわねば、おとめのきかんはすべからくおなじちのながるるものであかなわねばならんのだ。」
いまこの長老のセリフ読み飛ばした人なんにんくらいいるかねぇ?
そんな事はともかく……
そっか、だいたい読めてきた。
こいつら、光輝を殺す気だ。
「さぁ、はやく、おとめといけにえをさいだんへはこべ、ぎしきのじゅんびらはできておる、かみにふたたびわれらのちゅうせいをちかうときがきた。」
神……! そうだ、私を送ったのは確か神だった!
……あれ? じゃあ光輝はどうやってこの世界にきたんだ?
「ねぇ、光輝……こいつらの言ってる意味、流石にわかるよね?」
「……ああ、オレは姉ちゃんの罪を消すための生贄にされて、姉ちゃんは神とやらの生贄に為れる……って、ところだな」
なにそれ、怖い。
「どゆこと?」
「この世界に俺が来たのって、姉ちゃんよりも少し後なんだ、そんときに色々世話に成ったやつがいて、そいつにこの世界の宗教の事とか、それに関する儀式のことを聞いたんだ」
……まさか、あのダンディー髭面の私を連行しようとしやがったあの警察官か。
「で、あの人、オレに教えてくれたんだ……あの四国同盟の真の意味を……。」
光輝……おまえ、一体何を……?
私と光輝がブツブツと会話している間にも儀式の順日とやらはたんたんとこなされて行っていた。
「ねぇ、光輝……四国同盟の真意って……どういうこと?」
しかし、わたしにはそのことがどうしても気になってしまった。
光輝が最初にお世話になった都かいうやつは多分雷の国でわたしのことを覗いて来た変態のことには間違いないだろうが……。
たしかに、あいつは国際警察とかいってそれなりに四国同盟のことには詳しかったと思うが……。
だからと言って、何故それが、いまこの光輝の口から聞こえてくるのだろう?
とか!おもっていたら、突然私はピエトルから耳打ちを為れた。
「おまえ……自分よ目的は覚えているよな?」
目的……?
そうか、目的か……。
「もちろん……私は、絶対に帰る……って、目的だったな……それがどうした?」
「シッ…! 声がでかい。……いいか、多分もうじきしたら異世界とこの世界を繋ぐ、穴が出てくる……その穴に、光輝のやつを連れて、飛び込め……」
い、いや……それはわかってるけど……。
ピエトルは、一体どうするつもり……?
「……多分、この国は明日にでも滅びるから、レグルスでも頼って火の国へ行く」
また、生意気にも私のここがろを読んだのか、少し間をおいて渡しの心の質問に応えてくる。
「ッ……⁈ 滅びるって……一体⁉」
「詳しい事は帰ってから光輝にでも聞け! ほら、多分……もうじきゲートが……」
そう、ピエトルが口にした、瞬間だった。
「――長老、儀式の準備は完了しました、直ぐにでも“神の国”への門は開けます」
長老へ報告してくる男の声が私たちちの元まで聞こえてきた。
“神の国”……まさか、私たちの世界のことか?
「そうか……では、じかんがおしい、そうきゅうにいけにけをささげ、おとめをかみのもとへとおくろうぞ」
長老がそういった瞬間、“門 ”が開いた。
それはきょだいな光の奔流で、まるで形はなくて……それがなんでなんて呼ばれているのかは渡し地は全くわからなかったが、兎も角 ……そこから、懐かしい香りがするということだけは、真実だった。
「いまだ、走れ……カスミ」
ッ……
いろいろ、わからないことはおおいし、そういうのが私は一番嫌いだけど……!
「走るよ! 光輝!」
「え……? おい」
私は、光輝の手首を掴み、その光の奔流――ゲートに向かって、走った。
☆
気づいたときには、私と光輝はまるで、雲の中……光に包まれた、見覚えのある場所にいた。
って、思い出した、ここ私が最初に神に呼び出されて来た場所だわ。
ってことはよ? マジであの門は神の国に繋がってったてことか?
「あ〜……と、いらっしゃい?」
と、私が1人で色々考えていると、そこに、間の抜けた情けない声が響いた。
「あ、神」
「ひどいな、これでも本物なんだが……。」
「そう見えない、おまえが悪い」
私と神とがなんとも悲生産的な会話をしていると、愚弟がよこから現れた。
「お、おい……じゃあ、あんたは本物の……神…さま?」
「ん〜まぁ、君たちの言ってる神さまとはちょっとおもむきが異なるけど……一応神は神。」
神ねぇ……。胡散臭い。
「まぁ、君たち姉弟には感謝してる、おれの世界を護ってくれたわけだからな。」
「は? どういうこと?」
わたしは、このバカ神のいっていふ事が理解できずに思わず聞き返していた。
「まぁ、端的にいうと、あの世界は滅びかけていたんだ、それを君たちに助けてもらったわけだ」
……? べつに、滅びかかっていふ様には見えなかったけど……。
「荒れ野の民だ、あいつらは決して自然に生まれる存在なんかじゃないんだ……」
「つまり、世界の膿……そんな様な存在だと?」
神の言葉に光輝が受けて答える。
うみ……海? うーん、あの世界で海水浴をした覚えはないけどな?
「膿……そうだな、そういうのが一番正しいかもしれないな。」
神が自嘲する様に呟く。
「たが、姉ちゃんはともかく、オレは一匹だってモンスターを狩ったことなんかないぞ?」
私はともかくとはなんだ、失礼な。
「いいや、モンスターを狩る事に意味があるんじゃなくて、ただ君たちが居てくれる事で世界は癒されたんだ」
……言ってる意味がまったくわからんのだ……
「じゃあ、たの世界にはもうモンスターはいないのか?」
「白血球があるからと言って身体から全て菌がなくなるわけではないだろう?」
しらんなぁ……。
で、要するに何が言いたいんだ?
「……そうだね、何が言いたいか、っていったら……ありがとう、だな」
ありが…とう?
「ああ、君達のお陰でね、ありがとう。」
……結局、なにを言ってるかはわからないけど、とにかく感謝されたらしい。
「わたしと光輝はこの後どうすればいいんだ?」
まさか、ここで暮らせとはいわれまいよな?
「……そう言いたいところだけど……」
と、いって神は私たちに向かって微笑むと、自分の真横を指差した。
すると、私たちがこの場所に来た原因ともいえる、あの光の奔流が巻き起こった。
おい、まさかこの中に入るとまた砂の国に戻る事になるんじゃないだろうな?
「なぁ、これ…どこにツナかってんだ?」
「君達の世界……そして、君たちの家の前……かな。」
かな、ってなんだ、かなって。
ハッキリしろよ、神。
「何はどうあれ、オレと姉ちゃんは帰れる……って、事でいいんだよな?」
「ああ、もちろんだ。」
ふかく頷く神。じゃあ別になんら迷うことは無いか。
「じゃあ、行こう……光輝。」
私と光輝は、その光の渦巻く流れに向かって歩き始めた。
こわい……
なぜだか、わたしはその時、砂の国以上の恐怖を感じてた。
本当に帰れるのか? という、疑問から生じた大きな恐怖心だった。
いつ……私が怖がっている事が伝わったんだろう……。
とにかく、私が内心の恐怖を押し殺してゆっくり歩いて居たとき、私の、ガラ空きの左手に、光輝の右手が絡みついて来た。
「なっ……」
私は、あまりに突然の事に何もいえ無いで、ただ、光輝の熱を持った、大きな手に包まれた。
……こいつ、こんなに手出かかったけ?
私の恐怖心が少しだけ和らぎ、そんなくだらないコトが頭を掠めた、その時。
「大丈夫だって、こうして2人で手ぇ繋いだけばさ……例え出る場所が家じゃなくても、また2人で頑張れるから……」
私を見下ろしながら、まるでそれが絶対に起こるコトだと……純粋過ぎる目で私に訴えて来た。
『だから、オレを信じて欲しい。』
……そう、だね。血が繫がって居無いとはいえ、私は姉なんだ。
「別に……おまえに言われなくてもわかってる。またもし家以外の場所に着いたらこきつかってやる」
そんな憎まれ口を叩きながら、わたしと光輝はひかりかがやく渦の中に飲まれて行った。
☆
光の中で閉じて居た目をあける。左手にはまだ暖かい感触が残っている。
そして、瞼を開いて、真っ先に私の目に入って来たのは、愛おしい、あまりに愛おしい我が家だった。
「光輝……!」
私は、自分のとなりに立つ少年の方へ向かって振り向いた。
「ああ、帰ってこれたみたいだな……」
だが、私はそんな光輝きの言葉を待たず、駆け出して居た。
が、玄関の前で立ち止まって、考えを改める。
……まぁ、いっか。
「光輝……おまえ、あの時はカッコ良かったから……それは認める……け、けど、別に惚れたとかそう言うわけじゃないから!」
私は、言い終えるとさっさと家の中に飛び込んだ。ッ……! やっぱり言わなきゃ良かった。
「わかってるよ……姉ちゃん、いつも男に同じ事いうんだからさ……。」
玄関前で、光輝がこんなコトを粒やているともしらないで。




