最後の国へ
男って、バカだなぁ……。
風車の前で抱きつき合う男女が2人、というか、一方が強引に肩を抱いている、というのが正しいだろう。
そんな事は前々から思っていたことだけど今はより、切実にそう思う。
うん、男ってバカだ。
目の前でガイルに告るアルザもそうだが、何よりもその様子をポカンと――悔しそうに見つめている愚弟にそう思う。
――バカ……。
「はぁ…… 光輝、バカはほっといて、もう行こう。」
「え、でも、ガイルが……。」
そんなにガイルが気に入ったんだったら3人で仲良くしてやがれ。 私は、1人でも良いから、パパの所へ帰る。
私が、そんな風に光輝に対し憤りを覚えて歩き出した時、見覚えのある顔が前から歩いて来るのが見えた。
……来るのが、遅いんだ。
「お、どうした、カスミ。お前らしく無い、泣きそうな顔して。」
何でも無いかの様な顔をして、バカがもう1人、私の所へ帰ってきた。
「煩い……。」
今は、お前の顔なんかは見なくなんかなかった。そう思いを込めて、バカ――ブサ男の顔を睨む。
そいつは、あっけらかんとして、真面目だが、何処と無く間の抜けた顔に面いっぱいの悪戯っ気ある笑顔を浮かべて、私に言った。
「なんだよ、もしかしてオレに会えなかったのがそんなに寂しかったか?」
面白そうに顔を歪めたまま、私の顔を覗き込んで来るブサ男……ピエトル。
まったく、煩くて不愉快な奴だ、突然いなく成ったと思ったら、最高で最悪のタイミングで戻ってきやがる。
「おーい、姉ちゃん、待てよ。」
後ろから聞こえてくる声は間違いなく愚弟の物で、やはり、認めたく無いがその声に安心感を覚えている自分がいた。
「ッ……⁈ ピエトル、戻って来てたのか……。」
「何だよ、コウキ、俺が居たら何か不都合でもあんのか。」
分かっているだろうに、分かっているだろうからこそ、ブサ男はは面白そうに……悲しそうに、光輝をからかうのだろう。
……この、風の国へ来て、そしてまたブサ男が私の所へ帰ってきた、という事は、やはり迫っているのだろう……。
私と光輝が元の世界に帰る……私とブサ男の別れの時が。
今だ愚弟とブサ男は2人で楽しそうに何やらを言い合っている。
既に遠くに、小さく見えるだけの風車が妙に巨大で……生々しく感じる。
そうか……もう、目の前何だな……。
「……ピエトル、速く本題に入れ、戻って来たのはバカとバカ騒ぎしにきたわけじゃないだろ。」
私は、気持ちを抑えてブサ男に声を掛ける。私の声が荒野に響いた途端、2人はじゃれ合う事を辞め、ピタリと止まる。
素直になれない、ならない。
もうすぐ、パパの元に帰ることができる。
ただ、それだけを私は考え続ければいい、それ以外……いらないから。
「そう…だな。」
そういうと、ピエトルは重々しく語り出した。語る最中にその体は徐々にラクダの形へと変わっていく。
「オレは、お前達2人を迎えにきた……この世界、最後の国、“砂の国”――オレの故郷、そして……お前達が最後に辿り着く場所へ……。」
“砂の国”……それが、私がこの異世界で最後に過ごす、国……。
そして、ピエトルの、本当の故郷……。
次回か次々回が最終ですかねぇ?




