とむ
「ガイル……」
青年の、か細い、しかしあまりに力強い言葉が、風車前の田園に否応無く響きわたる。
この田園内見渡しても人影は4人……つまり、私達だけだ。
風車の前に風の国の代表で4国の会議に出席していた青年がこちらを……いや、雷の国の女宰相、ガイル・ギャレオンに熱い視線を注いでいた。
その視線から、ガイルを庇う様に立つ光輝、そんな3人を遠巻きに見つめる、面白くない私。
膠着状態の続いた3人の中で、最も最初に沈黙をやぶったのは、風の国の代表の青年に声を書けられた、雷の国の女宰相……ガイルだった。
「あ…アルザ……くん」
ガイルの瞳が揺れるのがこちら側からでも確認ができた。
すげぇな、私、こっからだとガイルの背中しか見えねえぞ。
それにしても……なにか、動揺でもしてるのか? こわばる背中が印象的に映る。
ふぅ……ん。同じ女として、見過ごせない展開だな。
カスミは昼ドラが好きな普通の17歳だ。
アルザと呼ばれた青年が風車小屋からコチラ……ガイルの正面へと、一歩近づいた。そしてまた一歩……その歩みは緩やかだが、しかし確実にコチラへと近づいてきている。
顔は、緊張しているのか、どことなく硬い表情を浮かべている。しかし、瞳は熱ぽっく、目の前の女の事しか眼中に入っていないようだった。
それに対し、強く見つめられるガイルは、アルザ以上に身を硬くし、彼が歩み寄ってくるのをただ膠着し、待っていた。
そして、ついに彼女の前にアルザがたどり着く、瞬間、より一層強い風が2人を煽った。
一方を焚きつけるように、もう一方にはその灯火を吹き消すかのごとく。
「アルザ……く…ん」
か細い、風に乗って漸くわたしのところまで聞こえる程度の消え入りそうな声がガイルの口から漏れる。
いま、この場の主役は彼ら2人だった。もはや、私も光輝もそれを飾り立てる蝋燭のような物だ。
強烈なスポットライトが当てられた主役には、あれば便利だが、なくても別に困らない程度のもの……。
「オレ……オレはっ……!」
突如、ガイルの肩を抱くアルザ。
顔はりんごの様に赤くなっており、確か23だとかいう男にしてはあまりに初々しかった。
「お前の事が好きだ、結婚してくれ!」




