第九十五話 黒服の引き渡し
「確保お疲れさまでした、エルブさん」
俺の事をコードネームで呼ぶのは、結社『川蝉』のメンバーである、バイロンこと重倉 雄二である。重倉は年齢では俺よりも上だが、川蝉の中では俺の後輩である。そんな重倉は黒服達の拘束を強めながら、俺に質問をしてきた。
「エルブさん。今回もお手柄ですが、こいつら一体何なんです?」
重倉の質問に俺は少し首を傾げながら答えた。
「尋問などは今回していないから分からないが、一人の少女を追っていた所を見つけたんだ」
俺の返答に、重倉は「へぇ~」と言った後、不思議そうに言った。
「珍しいですね、エルブさんが善悪の確認もせずに突貫なんて。もしかしてその子に惚れたんですかい!駄目ですよー、仕事に恋情を持ち込んだらー」
俺は楽しそうに話す重倉の脛を蹴り苦悶させて言う。
「違う。持ち込んだのは私情だ」
「それもどうかと思いますけどね」
重倉は地面を転げながらそう言った。その間にも他の川蝉のメンバーは着々と準備を終わらし。
「じゃ、じゃあ連れていきますね……」
「あ、明日この件でそっちに行くってあの人に伝えておいてくれ」
二分も掛からず運ぶ準備を終わらせた重倉達にそう言うと、重倉はサムズアップをし、川蝉の聴取施設に向かって行った。
「じゃあ俺達も行くか」
「うん!」
俺は少女を背負い、走って家へ帰った。




