302話 桜色のお花見
チェリーとその部下に連れられていったオルセーユ。涙目になりながら必死に許しを請う。
「チェリー様!申し訳ありません!チェリー様の命令にはむいたことは重々反省しております、どうか!」
「オルセーユ。私は他の国の魔族が来た場合、絶対に触れはならないと言っておいたはずだ。それに直前でも私は注意した。それにも関わらず、私の言うことを無視したのだ。残念だ、お前は失敗作だったようだ」
「チェリー様!どうかお許しを!」
オルセーユは涙を流し、許しを請う。チェリーはそんなオルセーユに対し、まるで表情を変えずに、オルセーユの肩に手をかけた。
「ギ、ギャアアアアー!」
オルセーユは断末魔とともにそこから煙のように消えてしまった。チェリーの周りにいた部下たちは、その様子を見てゾッとしていた。
「ふむ。こいつはたしか下級魔族だったな。やはり力のないやつほど、私の言うことを聞かない傾向があるのか」
チェリーは部下であるオルセーユが目の前から消えてしまったにも関わらず、淡々とした様子でそう呟いた。周りの恐怖に引きつった部下たちの様子など目もくれずに。
「い、いえ、チェリー様!わ、我々は絶対的なチェリー様の従順なる下僕!チェリー様が右を向けと言えば、永遠に右を向いていられます!」
「そ、そうですともチェリー様!オルセーユが特別だっただけで、他は違います!」
周りの部下は必死にチェリーをフォローする。チェリーは表情一つかえずに、部下たちに命令を出す。
「ああ、それはありがたいな。さて、厄介者も消えたところで再びあの青魔族様達のおもてなしだ。彼らには絶対触れてはならぬぞ。そして丁重に扱え」
「はい!チェリー様!」
チェリーは部下たちを引き連れ、再びコバルト達の元へ戻った。そしてコバルト達に挨拶をした。
「コバルト様、先程はオルセーユが大変失礼しました。彼女はこの花街から追放し、郊外に連れていきましたのでどうぞご安心を。ささ、宴会をお楽しみください」
「え?なにもそこまでしなくても」
ピュアが不思議そうに言いかけたが、それ以上はやめておいた。なにかこの国の魔族しかしらない暗黙のルールがあるのだろう。
そしてライトは相変わらずもこのチェリーを疑っていた。何かを企んではいるのは間違いないが、それがわからない。それにどのような力があるのかもわからない。ただただ不気味だった。
そしてコバルトも、オルセーユのあの冷たい感触にただゾッとしていた。そしてライトと同じく、チェリーに何か不気味さを感じていた。
(チィ、まずいな。ライト様だけではなく、コバルト様も何か勘ぐりだした)
チェリーは表情にこそ出さなかったが、頭の中ではかなり焦っていた。そしてこの先、どう疑われずにコバルト達と団欒をしてゆけばいいのか、と考えていた。
「まあ、皆様、せっかく桜色の国に来たのですから、どうぞどうぞ。中心街で桜の木、お花見をして楽しみましょう!」
「ああ、それはいいわね」
オルセーユの処罰に、多少の違和感は覚えたものの、ピュアだけはあまりチェリーに対し勘ぐりを入れなかった。悪いやつには見えなかったし、自分たちは歓迎されているのだろうと判断した。
そして花見が始まると、もはやどんちゃん騒ぎ。昼間っからごちそうをたべ、裸踊りで大はしゃぎするものもあらわれた。そこには種族は関係なく、ただみんなが楽しんでいた。
ライトはとっくりで酒を飲みながら、だされたごちそうをうまそうに平らげた。コバルトとピュアも、とても楽しそうにどんちゃん騒ぎを見ていた。
そしてチェリーはそんな中、相変わらずも無表情だった。そしてあの紫の国のスイーツ大会に参加したときに作ったチェリーパイを食べながら、コバルト達を眺め、ただ何か考え事をしているようだった。




