表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/17

光魔法の力

 大公家での生活、礼儀作法などや歴史、その他様々な学問を学ぶのに並行して、ミレイユは大公城でも魔法について学んでいた。

 ミンディアの指導により彼女は治癒魔法まで使えるようになった。


 「い、痛みが無くなった……ありがとうございます、公女様」

 「素晴らしいですお嬢様。もう治癒魔法は申し分ないですねっ!」

 「あ、ありがとうございます、ミンディア先生」

 

 今日は治癒の実地練習として訓練で怪我をした騎士の手当てを行っている。

 酷い打撲があって顔を顰めていた騎士は、彼女が魔法をかけると驚いたように目を見開いた。打撲の痕がすっかり消え痛みも無くなっているのだ。

 治癒魔法は完璧ですと興奮気味に語るミンディアに恥ずかしそうに礼を言うミレイユ。


 「成長促進の魔法で練習した成果が出ましたね。公女様の魔力の使い方は習い始めた時より格段に上手くなり、潜在的な魔力も開花して高まっています。公女様ほどの治癒魔法を使える術者はなかなか居ませんよ」

 「そ、そんなにほ、褒められると照れます……」

 「照れてください照れてください。私も希少な光魔法の使い手であるお嬢様をご指導出来て光栄ですっ」


 騎士団を後にしたミレイユ達はユーリィが遊んでいるという薬草園に、彼女を迎えに行くために歩いている。

 光の精霊である彼女は甘い物を好んで食べるが、一番の好物は花の蜜だ。それを聞いたミレイユは大公城の一画にあった薬草園で成長促進の光魔法の練習をして、見事に咲き誇ったそこはユーリィのお気に入りの休憩場所なのだ。


 「あれ?薬草園に人だかりが出来てますね」

 「ですねぇ……おや、ハインツ兄さんまで来てるや。どうしたんだろう」


 薬草園の入り口まで来たところで、文官や使用人達が集まっている事に気付くミレイユ。人だかりの中に兄で大公子の補佐官を務めるハインツまで居る事にミンディアが首を傾げる。

 二人が近づいていくと、彼女達に気付いたハインツが駆け寄ってくる。


 「ああ、丁度良かった。大公女殿下にお聞きしたい事がありまして」

 「な、何かありましたか?」


 ここは自分が光魔法を練習していた場所だ。何か悪い事をしちゃったのかな、と不安そうな顔をするミレイユだが、ハインツは心配しないでくださいと微笑む。


 「ここの係の者から園内に希少な薬草が幾つも生えていると報告を受けて、確認に来ていたのです。こちらは大公女殿下が魔法の練習をされていた場所ですよね?」

 「そ、そうですけど……希少な薬草ですか?」

 「ええ、公女殿下がこちらに来られる少し前に栽培を試みたのですが、芽すら出てこず諦めていたのです。それがいつの間にか芽を出し立派に成長していると」

 「そりゃ公女様の光魔法のお陰ですね。芽が出ずに埋まったままだった種が魔法で活力を得て一気に成長しちゃったかー」


 大公家の事業として貴重な薬草を栽培しようという試みをこの薬草園で行っていたが、その結果はいずれも芳しくなかった。

 その後は試験区画はしばしの間放置されていたのだが、久しぶりに係員が見に来たところ、そこに薬草が群生して大騒ぎになっていたのだ。

 ミレイユはここで何度か広範囲に成長を促す魔法を練習した事があるが、それによって活力を得た薬草は芽生え立派に成長したのだろう。

 

 「兄さん、これってそんな貴重な薬草なの?」

 「ああ、重い病に効く薬草なんだが、この大陸では上手く育たず東方大陸からの輸入に頼っていたんだ。これが栽培できるとなったら凄い利益が大公家に生じるぞ!これは盗まれたら大変だな。すぐにこの薬草園は封鎖が必要だな」


 これを盗まれたら大損害だ、などとブツブツ言いながら考え込むハインツを前に、なんだかすごい事になってきちゃったと内心慌てているミレイユ。

 

 「それじゃあ、ここではもう練習しちゃダメですか?ユーリィがここを気に入っているんですが」

 「ああいえ、公女殿下やあの子なら大丈夫ですよ……いや待てよ、いっその事セルヴェン様と大公殿下にこの事を報告して……」

 「おーい、もしもーし?こりゃダメだ、兄さんスイッチ入っちゃった。公女殿下、ユーリィちゃんを迎えに行きましょう」

 「は、はい、分かりました」


 ミレイユとミンディアは、ブツブツと計算や警備計画を呟き始めたハインツをその場に残し、薬草園の奥へと足を踏み入れた。様々な薬草が咲き乱れる小道を抜けると、ひときわ色とりどりの花々が集まる一角に、ユーリィがふわふわと浮かんでいた。


 『あっ、ミレイユちゃん。見てくださいですっ、すっごくいい香りの花が咲いてるんですっ』

 「ユーリィ、そんなに花に顔を近づけて……花粉でくしゃみしちゃうよ?」


 ツインテールにした金色の髪を揺らしながら嬉しそうに話すユーリィに、ミレイユは優しく微笑みかける。ユーリィは彼女の肩の辺りにふわりと移動すると、魔法で集めた花の蜜を差し出した。


 『はい、これ一番甘い蜜!ミレイユちゃんにも分けてあげるですっ』

 「わあ、ありがとう……あ、本当に甘くて美味しい」

 『そうでしょう?ここの花はミレイユちゃんが魔法をかけたから、すっごく元気で蜜もたっぷりなんですっ』

 「公女様の光魔法は素晴らしいですね。こうして見ると、本当に多種多様な花が咲き誇って綺麗なものです」


 差し出された蜜を指先で舐め、その甘さに顔を綻ばせるミレイユ。

 ミンディアが園内を見渡しながら感心したように言う。確かに色とりどりの花々は生き生きと輝き、園内は花の香りに満ちていた。

 全部ミレイユちゃんのお陰ですっ、と語るユーリィにミレイユは照れくさそうに微笑む。

 

 その翌日から大公城の敷地内に多くの職人が訪れ何か建物を建て始めている。何を作っているんだろうと城の自室からミレイユとユーリィは興味深そうに見つめていた。

 完成したのは広い温室だ。ガラス張りの外観は美しく、内部も綺麗に整えられ温室内で茶会を開けるようにもなっている。

 

 「綺麗……」

 『凄いですー』

 「貴重な薬草などを育てる為にこの温室を作ったんだ。毎日でなくていいから、ここの花達に魔法をかけてやって欲しい」

 

 美しい建物を前にポカンと口を開けるミレイユとユーリィの傍らに立つセルヴェン。この温室は魔法で温度を適温に維持して、結界も張られている為許可の無い者は入れないと語る。大公家の事業として本格的に薬草園を運営する為に建てたのだ。また客人を招き花と紅茶を楽しむ事も出来るそうだ。


 「大公家のお役に立てるのなら、私頑張りますっ」

 「ありがとう、でも無理の範囲でしてくれ、君は日々の勉強も忙しい身なのだから」

 「はいっ、でも私もこの素敵な温室が、花で満たされるのが早く見たいです」


 温室内に入ったミレイユはその綺麗な室内を見回して感嘆の声を漏らす。ここで花が咲き誇ったらどれだけ素敵だろうか、自分もそれが見たくてしょうがない。


 「恵みの光よ、みんなに活力をあげて」

 「これは……凄いな」

 『はわわっ、ミ、ミレイユちゃん凄いですっ』

 

 両手を握り目を閉じて祈りを捧げ己の魔力を高める彼女。目を開けた彼女が言葉を紡ぐと同時に両手を掲げれば、そこから暖かい光が温室全体へと広がり、雨のような淡い光が温室内に降り注ぐ。

 その幻想的な光景を目の当たりにして思わず声を漏らすセルヴェンとユーリィ。温室内で作業していた庭師達もその光景に手を止めていた。

 光を受けた薬草園から移植したばかりの花は嬉しそうに揺れ、閉じていた蕾を開かせるものすらある程だ。


 「またやりに来ます。花が咲き誇るのが楽しみですね」

 「ああそうだな。見頃になったら皆でお茶会をするとしよう」

 「はいっ」


 それからというもの、ミレイユは時間を見つけては温室に足を運び、花々に魔法をかける日々が続いた。彼女の光魔法を受けた植物は驚くほど早く成長し、やがて温室は色とりどりの花で満たされていった。

 後にその温室は大公城の名所となり、そこに開かれる茶会に招かれるのは貴族にとって素晴らしい栄誉となるのだった。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございます。


 この話を気に入って頂けたら、評価やブックマーク、ご感想を是非お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ここまで読みました。 最初はかなり辛い境遇で読んでいて苦しくなりましたが、その分ミレイユが大公家に迎えられて大切にされるようになってからは素直に「良かったな」と思えました。特にセルヴェンが本来はラスボ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ