8話
「お嬢様、つきましたよ」
「ありがとうございますわ、中田さん」
「いえいえ。旦那様と奥様は準備が終われば来ると仰ってましたよ」
「分かりましたわ」
ドレスアップしてもらい、中田さんという方にパーティー会場まで送ってもらいましたけど中田さんは一緒に会場には行けません。仕事があると言っていましたわ。でも伊集院家の令嬢が一人で、というのも駄目なことは分かっています。
ドレスが汚れないように丁寧に車内から出る。そして運転席に近づくと私の要望を言う。
「秋彦が来るまで一緒に待っていただいてもよろしいでしょうか?」
「あぁ、そのことなんですけど...」
中田さんが何か言おうとしたけれど何かをみて言葉を止める。次の瞬間私の腹部に衝撃が走って車に衝突しそうになりましたけれどなんとかその場に留まることが出来た。
「麗奈久し振り〜!行こ行こ!」
お腹に回された手が離れたかと思うとすぐにその手は私の右手をつかんでいました。きっちり着せられたタキシード。元々顔も良いのでかなり様になっていますわ。
人懐っこい笑みを浮かべた彼は私の婚約者なるお方、神山秋彦という名前。元々会社の為に婚約させられた私達、秋彦の方が会社に大きく関わっているのでしょうね。両社とも子供を駒のように扱っているのにあまり気に食わなかった当初でしたけど、嫌いではないのでもういいですわ。
秋彦の近くには側近の専属執事である笠松様。中田さんと挨拶を交わしている。笠松様も一緒なら大丈夫そうかしら。中田さんに視線を向けると私の意図を読み取ったのか一度頷き「帰りにはご連絡を」と言って車を動かした。
「それでは行きましょう」
「そうだね!まずは西園寺様に挨拶するんだっけ、一緒に行こう」
一度にこやかに頷くとパーティー会場へと足を動かした。秋彦は見た目は静かそうですのに、中身が想像つかないくらい人懐っこいんですわ。別に世に言うギャップ萌えとかではありませんけどね!
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「わぁ!可愛らしいケーキですわ!」
目の前にはスイーツがずらりと並んでいて私はその内ラズベリーのケーキに目をつけた。綺麗に飾られたわけではないのですけれど、私にはそれがきらきら輝いて見えたのです。これ取り寄せてもらいましょう、家でも食べたいですわ
一口サイズくらいで大きくはないので沢山食べれそうですわね、人の目がありますからそれは控えますが。
「!!秋彦、これ中身チョコレートのムースになっていますわ!」
「食べに来たんじゃないんだからさ...」
「っと、いけませんわね。挨拶に行きましょう?そう言えば秋彦はプレゼントを何にしましたの?」
「え、教えない」
まあ私も教える気は無いんですけれど。手元に持つ箱からしてそれほど大きなものではなさそうですわね、アクセサリー類でしょうか?なら私と同じですわね
人集りが出来ているところに西園寺様がいらっしゃるのでしょう。あんなに囲まれていたらちょっとくらい嫌な気を起こすような気がしますわ。きっと西園寺様はメンタルがお強いのでしょう。
「でも少し西園寺様とお話ししたいんだよね。...あれだと無理そうかな」
「パーティーが終了したら話しかければいいと思いますわよ」
「あまり遅くなりすぎるとお父様に叱られるからそれはやめておくよ。あれ?でもその時は麗奈どうするの?」
「帰りますわよ。秋彦の用事でしょう」
「あはは、だよね」
一ヶ月以上やってなくてすいません。
短いんですが区切りつけたかったんです