↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネオ・サツマ・リローデッド:ニンジャ・ジゲンリュウ・カルネージ  作者: 堀川うつら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/8

第6話:【ヒュウガ・ネオン・インフェルノ】

◆◆◆


日向(ヒュウガ)南部、飫肥(オビ)油田データセンター地帯。

ここでは地下から湧き出る原油と天然ガスを直結火力発電に回し、数百基のスーパーコンピュータ・モノリスが青白い冷却液の煙を噴き上げながら24時間唸りを上げている。

この肥沃なる電子回廊を支配するのが、日向の絶対王者【イトウ・メガプレックス】である。

「オホホホホ! 見よ、あの無様なサツマの土百姓どもを!」

飫肥城・中央データ要塞のバルコニー。

キョウト風の豪奢な十二単型ケブラー防弾ドレスを纏い、黄金の扇子を揺らすのは、イトウ・メガプレックス総帥――イトウ・ヨシスケ。

その背後には、最新鋭の光ファイバーを編み込んだ超伝導鎧に身を包む、イトウ親衛サイバー騎馬隊五百が整然と並んでいた。

「大隅の田舎侍を倒した程度で気脈を通じたかと思えば、我が飫肥サーバー群を狙うとはな。文字の読み書きも怪しいサルどもに、高度情報戦の何たるかを叩き込んでやれ!」

『ハッ!』

親衛隊が一斉に頭部ポートから軍用電子戦プロトコルを展開。飫肥油田の全防衛タレットが照準を西へ向けた。

◆◆◆

一方、飫肥要塞を望む山嶺。

立ち込める油煙の向こうを睨みながら、ツルヒメ=タネガシマは日傘のグリップを握り直していた。

ドレスの裾は破れ、ところどころ煤けている。だが、その瞳にはチェストハウンドと出会った頃のような表面的な営業スマイルではなく、武器商人としての冷徹な観察眼が宿っていた。

「……敵の兵力は五百。すべて光ファイバー直結の第一線級サイバネ武士よ。おまけに油田コンプレックス全体が堅牢なファイアウォールと自動防衛タレットで要塞化されている。正面から突っ込めば、チェストする前に蜂の巣ね」

ツルヒメは隣に立つチェストハウンドを見上げた。

漆黒の巨漢は、相変わらず無言で『捨て奸』のメンポを明滅させている。

「……聞いてるの、チェストハウンド? 今回ばかりは『知恵を捨てよ』じゃ済まない相手よ。相手は日向のITの巨人なんだから」

「敵の頭蓋が何重のファイアウォールに守られていようと、叩き割れば同じこと」

「だからその前に炭になるって言ってんの! ……まったく、誰か一人くらいマトモな軍師はいないのかしら、この会社」

ツルヒメが深いため息をついたその時。

背後の移動式テントのフスマが静かに開いた。

「ドーモ。ツルヒメ=サン」

現れた男の姿に、ツルヒメは思わず息を呑んだ。

白銀と純白のナノ繊維で織られた豪奢な『サイバー袈裟・天照』。

首には大型の光ディスクを連ねた念珠を掛け、温和で慈悲深い仏のような微笑みを浮かべている。

シマヅ・コングロマリット最高経営責任者(CEO)――長男、ヨシヒサ=シマヅである。

「よ、ヨシヒサCEO……! 自ら前線までお出ましに……?」

ツルヒメは思わず背筋を正した。トシヒサの理屈っぽさとも、ヨシヒロの威圧感とも、イエヒサの狂気とも違う。底知れない「底の抜けた静けさ」がこの男にはあった。

「ええ。日向の同胞が迷いの中にいると聞き、救済(サルベーション)に参りました」

ヨシヒサは穏やかに微笑み、指先で空中に印を結んだ。

「イトウの総帥ヨシスケ殿は、我がシマヅを野蛮と見下し、油田の利権を独占しておられる。仏神のお心に背く行為です」

「で、では……何か神仏に祈るような、奇策でも……?」

ツルヒメが恐る恐る尋ねる。

「ええ。すでに祈祷(ハッキング)は完了しております」

「はい?」

ツルヒメが目を瞬かせた瞬間、ヨシヒサの頭部多層インプラント『八幡神信託システム』がカチリと音を立てて翡翠色に発光した。

遥か成層圏に浮かぶシマヅの軍事衛星108基が同期。

ヨシヒサは念珠をシャランと鳴らし、優雅に読経を始めた。

「南無八幡大菩薩……ポートスキャン、エクスプロイト成功。管理者権限奪取。……慈悲あれ」

◆◆◆

その瞬間、飫肥要塞のバルコニーにいたイトウ・ヨシスケのHUDが、真っ赤なアラートで埋め尽くされた。

【WARNING:後方兵糧冷却コンテナ・オーバーヒート】

【WARNING:飫肥油田パイプライン内圧急上昇】

【WARNING:主電源制御コード・オーバーライド】

「な、なんだ!? 何が起きている!?」

ヨシスケが叫ぶ。

「そ、総帥! 敵の電子攻撃です!」

オペレーターが泡を吹いて叫んだ。

「シマヅの回線から送られてきた『南無阿弥陀仏』の念仏パケットが、我が社のセキュアゲートを突破! 後方の食糧コンテナ数千個の電子レンジ機能が全開になり、備蓄のバイオ米と薩摩芋が異常発熱しております!」

「はぁッ!? 飯を温めてどうする気だ!?」

「いえ! 加熱しすぎたバイオ芋から高濃度のエタノールガスが発生! それが油田の送油パイプラインに逆流して――」

ドガアアアアアアアアアン!!!!

飫肥要塞の背後、イトウ軍の補給基地が連鎖爆発を起こした!

夜空を真昼のように照らす火柱! 吹き飛ぶバイオ米! 降り注ぐ焼き芋の雨!

「アイエエエエ!? 補給線が! 予備バッテリーと燃料が全滅!?」

親衛隊の陣列がパニックに陥り、光ファイバーの通信網が火災の電磁ノイズで完全に寸断された。

◆◆◆

山嶺のツルヒメは、双眼鏡を覗いたまま顎が外れそうになっていた。

「な……何よそれ……! 祈祷ってただの極悪クラッキングじゃないのよ! どうして兵糧庫の電子レンジから油田を誘爆させられるの!?」

「これも神仏のお導きです」

ヨシヒサは慈愛に満ちた笑顔のまま、合掌した。

「腹が減っては戦はできぬと申します。先に飯を灰にして差し上げれば、迷いも消えましょう」

(この長男が一番狂ってるわ……!!)

ツルヒメは背筋に冷や汗をびっしりと滲ませた。

だが、敵が混乱した今こそが千載一遇の好機。

ツルヒメの商人としてのプラグマティズムが、恐怖を上回って即座に作動する。

彼女はドレスの裾をキュッと結び直し、日傘の安全装置を解除した。

「チェストハウンド! 敵の防衛ラインに穴が空いたわ! 今ならタレットの管制も死んでる! 行くわよ!」

「問答無用」

ズシン。

チェストハウンドが一歩を踏み出す。

その重装甲のメンポから、高純度エタノールの蒸気が猛烈な勢いで吹き上がった。

「ヨシヒサ=サマの電脳教化、確認。敵陣の混乱度、98パーセント」

背中の『ジゲン・スラッシャー』がマグネットから滑り出る。

「これより、物理的説法を開始する」

「チェストハウンド=サン」

ヨシヒサは微笑みを絶やさぬまま、静かに念珠を繰った。

「首尾よく、初手で導いておやりなさい」

「チェスト」

二輪駆動式重サイバネ軍馬『オオミズチ』のエキゾーストが火を吹き、漆黒の処刑人と、日傘ガトリングを構えた武器商人の少女は、燃え盛る飫肥油田の地獄へと坂を駆け下りていった!

イトウ・メガプレックスとの日向泥沼電脳戦。

その幕が、焼き芋の香ばしい煙とともに切って落とされたのである!

◆◆◆


◆◆◆

【あとがき】

読者=サン、第6話の読了ドーモ。原作者です。

「無益な殺生は仏神のお心に背くもの。迷いの中にいる同胞を救済(サルベーション)いたしました」

鈴を転がすような美声とともに、微笑みながら首の念珠を繰る長男ヨシヒサ!

その実態は……『全電子レンジ強制過熱によるバイオ芋エタノールガス誘爆』!

油田プラントもろとも後方補給線を丸ごと吹き飛ばし、降り注ぐは甘く香ばしき焼き芋の雨!

これぞ仏神クラッカー・ヨシヒサの慈悲深き説法(クラッキング)!

話の通じそうな大人の経営トップが現れたと一瞬でも安堵したツルヒメの胃壁は、またしても初手で大爆発四散!

一番物腰が柔らかい男が、一番躊躇なくエグい焦土作戦を叩き込む!

知恵も油田も焼き芋も、すべてまとめて神仏の火に投げ込め!

次回、シマヅ本社にイトウのサイバー暗殺部隊が潜入!

令嬢の色仕掛け vs 三男トシヒサの狂気の屁理屈法務!

迷うな! 評価の星とブックマークを初太刀で叩き込め!

チェストーーーーーッ!!!

◆◆◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。