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月影
遠い昔、少年が夜を指さして
月の影がみえる、と言った
嘘だと思った
陽の当たらない場所が見えるはずはない
光がないから影なのだ
それでも少年は笑った
やはり、月の影はそこにある
時が経ち、私にも暗月がみえた
月の美しさは変わらない
むしろ、幼い頃よりもずっと
歳を追うごとに貴く、白く、輝いている
そんな私にも暗月がみえる
日の当たらない、影がそこにある
幼い頃は目に映ることのなかった
この世の影だ
欠けたることのない望月より
暗く輝く新月より
三日月こそを美しく思うのは
色濃い影と、そこに投げかけられた光が
命の実像にかさなるように見えるから
それは人に、よく似ている




