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Zakkan  作者: 波暮
17/27

懐中時計


懐中時計が手に入れば

時間が巻き戻ると信じていた


一からやり直せたら

総ての過ちを正せるのに、と


未練も後悔もなく

瞋恚もなく悲哀もない


完璧な人生を取り戻したい



執着があればこそ、


分かれ道に置いてきた

半身の行く末を想う


望まぬ別れを強いられて

だからこそ 今も ずっと


分かれ道で手を振った

わたしとわたし


世界がふたつに裂けて

真夜中の対岸のような、もう一つを、


ずっと探していた



──ああ、そんなの有り得ない


わたしは、わたしだからこの道を選んだ


もう一つなんてない

あのときなんてない


未練も、後悔も、瞋恚も、悲哀も

選び取った わたし自身だ


この手を血に浸して

灼けた鉄を握りしめて

焼け爛れる皮膚に泣き叫びながら


 掴み取ったのだ


燃えるような怒りに

 目を赤く染めて、

ドス黒い後悔に

 胸を焦がしながら、

尽きぬ涙の如き

 雨に凍えて、震え、


砕け散った鏡のような

心を繋ぎ止めていた、


絡まった糸に


鋭利な時計の針を添えて

たやすく、やさしく、摘みとる


止まらない震えに体が強張って

でも、どこかで安堵していた



たとえ針を巻き戻そうと

畢竟、同じように生きただろう


すべてはわたしであればこそ

 在るべくして生まれ

 有るべくして生きた


だから、一秒を想う/一秒を刻む

どこから来て、なにをして、どこへ行く?


分かれ道などない


世界の境界まで続く、

 透明なエーテルが光る、銀河の浅瀬を踏み締めた


手に持った懐中時計が、針を廻している


一秒を想う

 /一秒を刻む


一歩踏み進む

 /一秒を刻む

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