<四>
数匹の狐があらゆる場所で不審な動きをする人間たちを見つけ出し、監視していた。
細工され、包装された飴玉は枝分かれするように人手に渡り、その数は追いきれなくなるほどだった。
追跡先で物陰に隠れるようにして倒れている人間を目に留めた狐は、何かを確かめるようにニオイを嗅ぎ、もう興味がなくなったのか何もせずにその場から姿を消す。
またとあるアパートでは虚ろな目から段々と光を失くしていく顔をじっと眺め、その人間の側に大量に落ちている見覚えのある包み紙を一枚銜えて立ち去った。
個室や人の目につきにくい場所で、廃人のように座り込む複数の人間を目撃することもあり、それを琥珀色の瞳はただ淡々と眺めるばかりだった。
* * *
「――いやもう拒否られたから無理だな。ちょろそうに見えたけど、意外と用心深いんだわ」
細い裏路地で、一人の男が気怠そうにスマホで話をしている。
それを屋根の上からじっと見つめていたのは、一匹の猫だった。
「そーそー。待ち伏せしても勘付かれてかわされるからもう時間の無駄だろ、他行くわ。……あ? あー女の方も大丈夫だって、オレのことまだ友達だと思ってるっぽいし、一先ずこのままで。……奢れ? ハハ。今度金入ったらな」
通話を終えて立ち去る男を、今度は塀の上に座り込んでいた猫が視線で追う。
角を曲がって大通りに出ると、次にあとを追ったのは道端で餌付けされていた野良猫だった。
今度は視線だけじゃなく移動してついていく。
後ろからは「もう行っちゃうの?」という引き留めようとする人間の声が聞こえたが、野良猫は振り返ることなく男を追って去っていった。




