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O-039 王妃オクタヴィアナの回顧 2

※初心者故、気になったタイミングでこまめに加筆や修正を行います。何卒ご了承下さいませ。

※更新頻度は緩やかです。

※暴力的な表現の記述があります。ご注意下さい。

※次の話に向けてのエピソードの為、内容は短めです。


▼episode 039 - BGM

① https://open.spotify.com/track/25YnDL0y62aSk7wc35WBGJ?si=_n65P63IQqSOX6IKeBciLQ

② https://open.spotify.com/track/3bww72H7lCeisfYs22CF7J?si=MEpA_iCURreRf31VNNPmug



 




 いつの間にか日は落ちて、森を静謐な闇色へと染めていく。


 目的の泉に辿り着いた。


 焚火に照らされた視線の先、男達の話し声が響く。


 興奮しているのか、荒い口調の遣り取り。





 オクタヴィアナ達は静かに距離を詰める。


 ひゅっ、と息を吐く小さな合図はメイナードのもの。


 二本の指で自身の両目、次に目的の場所より少し離れた右側を指差した。続けて反対側と護衛の一人を指す。


 オクタヴィアナが無言で頷くと、メイナードと護衛は左右に音も無く散開した。


 ディケンズは、離れた位置で待機していた小柄な護衛に視線を投げ、樹上を指した。護衛は頷いてするすると木を登る。開けた視界から目標を確認すると、捉えた情報を手信号で仲間へと共有した。



 ——男……四人。


 馬二頭、馬車一台。



 頭上の護衛はそのまま枝に跨ると背負っていた弓矢を構えた。矢を(つが)え、主人の合図を待つ。


 馬を置きに行った護衛二人がオクタヴィアナ達の背後に戻った。


 ディケンズがオクタヴィアナの肩を二度、叩く。


 ——配置完了。


 オクタヴィアナは前を睨んだまま首肯した。


 右手を上げ、開いた手を握りしめる。


 ——合図を待て。


 左右に展開した二人の姿は見えないが、既に所定の位置で次の号令を待っている。


 分かる。感じている。


 仲間達の呼吸を。


 それだけの死線を共に潜り抜けてきた。


 オクタヴィアナ達はじりじりと更に距離を詰めた。






 男達は騒いでいる。


 煤けた幌馬車が一台、脇には馬が二頭。


 奥には泉、手前の焚火近くに男が三人。


「つかよ! どうする!?」


 妙に慌てた様子、上擦った声が響く。


「どうするもこうするもねえ!」


 手前にある大木で隠れていた位置から、一際体格が良い男が現れて地を蹴った。


 土埃が巻き上がる。


「俺達ゃ餓鬼(がき)に一杯喰わされたんだ!!  ちょっとした金持ちの娘だから簡単だ、ってな!!」


 大男の苛立ちを前に、三人の男達は身を(すく)めている。


「と、とにかくよ? 予定通りこいつの屋敷に金を要求すりゃ良いじゃねえか」


 三人の足元、襤褸布に包まれた塊を一人が足で乱暴に転がした。


 ごろり、と不自然な動きで転がってオクタヴィアナ達の目に飛び込んだもの——。




 それは——白く、細い、子供の手。


 ——幼い子供の手、だった。


 塊が(うずくま)るように微かに震え、動いた。


 ——生きている。




「馬鹿野郎! ()()だぞ!? どんな方法使ったって金なんか手に入らねえ! 身代金でも要求しようもんなら、俺等はあっという間にとっ捕まってぶっ殺されるだけだ!」






 オクタヴィアナの全身にざわり、と鳥肌が立った。


 公女……公女だと?


 オクタヴィアナを始め、背後の者達も息を呑んだ。


 では——あの子供はレクレディ公爵家の子女か!


 シュタインガルド侯爵領と隣り合ったレクレディ公爵領との境目。


 自分達は偶然にも公女を誘拐した犯人達と遭遇したのだ。







「この餓鬼がっ! 金持ちの娘を知ってるなんてほざいて! 俺等を(そそのか)しやがって! そこいらの商家の子供だと思ったから攫ったんだ! 小金持ちの成金ならちょいと脅かしゃ大金が手に入ったものを……くそっ!」


 大男がもう一つの塊を蹴り飛ばした。


 転がったのは、こちらも子供だった。


 焦茶の髪、痩せ細った腕、汚れた服、貧しい庶民の身成(みなり)をした少女だ。


 蹴られたというのにぴくり、とも動かない。


 胸に突き立てられた小刀が鈍く光った。


 周囲の土は赤濡れている。



「まんまと俺らを騙しやがった! こうなると分かっていてこいつは嘘を吐きやがったんだ!!」



 大男は更に子供を踏みつけ、力一杯に蹴飛ばした。


 ぐらり、と動いた頭に意思は見えない。


 両目は力無く(くう)を見つめていた。


 開いた瞳孔。


 ——既に絶命している。





「じゃ、じゃあ! ど、どうすんだよ! 金が手に入らないんじゃ……」


「殺されるなんざ真っ平御免だ……親方! 早く逃げようぜ!」



 尻に火が着いて今にも逃走しそうな三人に向かって、大男が怒鳴った。


「こいつにゃ顔を見られてるんだ!! このまま放って逃げてどうするってんだよ!」





 焚火に照らされた男の表情に、赤く揺らめく悪意が(ほとばし)った。





 大男が、公女と思しき塊に向かって歩き出す。




「——殺るしかねえだろ。そいでもって、こいつらを森ん中に埋めて——ずらかるぞ!」





 男達の視線が——地面に転がった公女に集中する。








 ——刹那。


 オクタヴィアナが鞘引(さやび)き、抜刀した。


 それが、合図だった。







今回は沈黙。


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