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光速の恋人たち ーー 宇宙大回転マッハシステム  作者: 二月三月
水金地火帯点

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14/15

金星爆破、アイジュマルが説得するも、メリルはいろいろ納得できない


「やあ、ひさしぶりだ」


 亜空間(スュードスペース)から現れたジャックはシオン(友だち)に抱きついた「元気そうで何より」


 抱きつかれたほうのシオンは少しばかり驚いた。ジャックってこんな感情表現するやつだったか? いや、遠い昔、初めて会ったときはこんなだったかもしれない。


「ずいぶん良い顔になった。えらくハンサムになったな」


 本当にそう思ったからシオンは言ったのだが、ジャックは冗談だと思ったらしい。笑いながらシオンの肩を叩いた。


「アイジュマル」叫んで抱きついたのはティナのほうだ「もうヒジャブは着けないんだ。宇宙だから当たり前か」


「ヘルメットかぶるのにジャマだからね」アイジュマルは笑う「ティナも元気になったね。うれしい」


「ウジウジ悩んでるのがめんどくさくなった」ティナは笑った「理由なんか必要なかった。何をするんでもね」


「それで? 2人が来たからには、もう始めて良いのか?」


 ビルがそう訊ね、ルーガも目くばせする。それについてはジャックが答えた。


「そうだよ」ジャックはその件についてはモノのついで(ヽヽヽヽヽヽ)みたいな言い方になった「ホントはユータが来るはずだったんだけど、学園祭の準備でいそがしそうだったんで、代わりにボクが引き受けた。みんなヤル気満々だし、今回は、その、ボクとアイジュマルはまだ部外者みたいなもんだし…」


 いちおうアイジュマルに気を使ってか、アイジュマルのところだけジャックの声が低くなる。アイジュマルは笑っている。


「学園祭? 吉祥学園のか、オレたちにも招待状が来てる」


「そう、それ」シオンの言葉に、ジャックの口調が早口になる「学園祭のあとにしようってユータは言うんだけど。学園祭行って、また帰ってきて、仕事終わらせて、で、月見台(ムーンゲイザー)を移動させて、って大変だろう? それなら、早く終わらせて、月見台(ムーンゲイザー)、いやヒスパニオラcか、移設して軌道確定すれば、学園祭だって、みんなゆっくり楽しめる…」


「いや、そのヒスパニオラcなんだけどさ」たまらずビルが口をはさむ「もう何度も繰り返して悪いけど、ほんとに大丈夫なのか? 月見台(ムーンゲイザー)はこんなにちっちゃくて軽いんだぞ?」


「大丈夫だ」ジャックは言い切った「オールインワンもワンエムも太鼓判を押してる」


「そう?」アイジュマルが含み笑いで参戦した「オールインワンはいつもイケイケだから、あんなだけど。少なくともキュービット(量子コンピューター)は、ギリギリかな、くらいの感じだったよ」


「ギリギリいけるなら、いけるってことで同じだよ」


「ま、それも、そうかな」アイジュマルは否定まではしなかった「私もキュービットと話したいことがある。メリルのこと、キュービットはメリルと仲が良いみたいだから」


「メリルにも?」


 ティナは不安げに訊ねた。彼女(メリル)についてはティナにもすこし責任がある。アイジュマルはティナを気づかうように言う。


「ううん、そういうことじゃないのよ」アイジュマルの口調はおだやかだった「メリルはもちろん自分で決める必要があるけど、そうじゃなくて、私は最近のメリルのこと、あまり知らないから、会う前に、よく知ってるコンピューターに訊いてみたほうが良いかな、って、その方が良いかなって思ったのよ」




「こんにちはメリル。たしか直接会うのは初めてだよね」


 にこやかに笑うアイジュマルに、メリルは緊張で顔を強張(こわば)らせた。でも、まあ、しかたがない。作り笑いではあったが、どうにか笑顔を返し、挨拶した「こんにちは」


「あなたのこと、ハツミさんに頼まれたの。よく話を聞いてあげてって」


「あの、おばさんが?」言ってしまってから、あわててメリルは口を押さえた「あの…、その、ハツミさんが何て言ってたんです?」


「すごく回りくどくて面倒くさい話になるけど…、大丈夫?」


「はぁ、まあ…、どうぞ…」


「ドゥーマ・アッシャー博士、あなたも知ってる。ヒスパニオラa、むこうでは工場長って呼ばれてるんだけど…、まあ、いろいろやってる。変な機械作らせたら天下一品だし…」


「うん、そう、教授の機械は面白い」


「機械だけじゃなくて、本人も人気あるよ。みんな工場長の工作室によく行ってる。まあ、工場長はいいんだ。いや、よくないのか? やっぱりいいんだ。それで、いま仲間うちの女の人と、なんて言うんだっけ? そうそう、いい感じ(ヽヽヽヽ)になってる女の人がいて…」


「誰が?」


「工場長が」


「教授が?」メリルは心底驚いた「へえ、意外と上手いことやってんだな、教授。大学にいたときは浮いた噂ひとつなかったのに」


「…いま学校の保健医やってるんだけどね、その女の人。それでその()が、っていうか私より年上なんだよ、その人。でも幼い感じがして、日本人だからかな。まあ、どうでもいいや、その()がハツミさんの…っていうか、ハツミさんでも間違いじゃないんだけど、吉祥(ヽヽ)の遠縁の人で、それでハツミさんが心配してるのよ」


「はあ、まあ、教授じゃ、女の扱いなんてできないだろうしね」


「そうなの。だから、ちょっかいかけないで欲しいの」


「は?」


 いきなりの話の飛びようにメリルは面食らった。そして、アイジュマルはメリルをじっと見てる…。あたし?


「あ、あの、意味わかんないんだけど…」


「博士に会うために宇宙に来たんじゃなかったけ?」


「い、いや…、そうだけど」


「うん、あなたの努力は認めるけどね。いま工場長と保健の先生って、生徒(デザイナーズ)たち(チルドレン)に人気があって、できればもう少し仲良くならないかなあ、ってみんな思ってるの」


「あたし、関係ないじゃん」


「関係ないんなら、別にいいのよ。でも、工場長も男だしね。昔の教え子とか来たら、若いし、心揺らいだりとか、あるんじゃないの?」


「教授と? まっぴらごめんだけど? そりゃ、面白い人だとは思うけど、そういうのと、ぜんぜん別じゃん。あのさあ、ティナからアイジュマルと話してって言われたから、正直、もっと大事な話だと思ってたんだよ。それが…、教授にこなかけるな(ヽヽヽヽヽヽ)って、なんなのよ? いったい?」


「その気ないんなら別に問題ないんだけど…」


「だからさ、もっと重要な(ヽヽヽ)話ないの? 金星爆破するって話。そっちはどうなの?」


「それは爆破するよ。そのためにジャックと私も月見台(ムーンゲイザー)に来たわけだし」


「…あのさ、そこ、そんな軽く流していいの?」


「軽く? 何が?」


「そもそもさ、金星って勝手に爆破して良いもんなの?」


「ダメなの?」


「いや、よくわからないから訊いてんだけど…」


「私もよくわからないけど、金星は将来爆発するって解析結果が出たし…。あなたも手伝ってくれたからよくわかるでしょ?」


「70%推定で120年後から2億8千万年後の間、99%なら158万年後から1964万年後の間だよ」


「そう、それで200万分の1の確率で18日20時間後に破裂する可能性がある。そのモデルにしたがって爆発限界を加速して、金星と地球の相対位置から金星が太陽の裏側、外合にある間、ってまあ今だけど、地球に比較的影響のない外合の間に爆破する、っていう計画(プラン)だったと思うけど」


「そうだけど、だからね」メリルは話の通じなさに身悶えした。実はアイジュマルが初めてではない。月見台(ムーンゲイザー)にいる他の人にも訊いてみたが、皆似たような反応だった。自分が間違ってるのか? 最初はそう思って自問していただけだったが、明らかに自分が間違ってるらしいのが薄々わかってきて絶望しかけている。


 いろんなことに落とし所が見つからない。メリルはずっと困惑したままだ。




「で? どんな感じ?」


 ラウンジでひと息ついているアイジュマルにティナが訊く。


「うーん、まあね。いちおう釘は刺してみたんだけど」ダージリンティーのはいったカップから口をはなしたアイジュマルが言う「話が通じない。シノノメみたいにはいかないなぁ。難しい」


「シノノメ、って吉祥の?」ティナが言う「ハツミさんの親戚でしょ。そりゃ、そんなのとくらべても無理だよ」


「シノノメに会って、最初に言われたんだ。お前(アイジュマル)はジャックのことだけ見てろ、って」


「…なんとも、…そりゃ、恐ろしい」


「それで、シノノメの言う通りにしたら、うまくいったの。真似してみようと思ったけど…、私には無理だわ」


「年季が違うんでしょ、吉祥じゃね」


「そうだね」アイジュマルはこくこくと2度うなずいた「ハツミさんにも言われた。言うだけ言ってダメなら、ハツミさんが何とかするって。だから私の仕事は終わり」


「金星どうすんの?」


 そんなの誰かがやるでしょ、アイジュマルが言って、ティナも、まあ、そうだね、と同意した。



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