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調和の守護者 リリィ&コピ第五部  作者: マスター


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第191話 沈む島と、帰らない人々

第190話では、七島連盟を襲った津波から、リリィたちと島民が協力して子どもたちを救いました。


しかし、危機は終わっていませんでした。


島には古くから伝わる言い伝えがあります。


「海の口が開くとき、七つの島のうち一つが消える」


そして実際に、最南端の島の周囲で海底が沈み始めていたのです。


第191話。


リリィたちは、島が沈むという現実に直面します。

「島が沈むって、どういうこと!?」


オルガが地図を覗き込んだ。


赤く点滅しているのは、七島連盟の最南端。


小さな島だった。


コピが説明する。


「周辺海底の地形変化を確認しています。ただし、島全体が沈むと確定したわけではありません」


「じゃあ、まだ大丈夫?」


「いいえ。追加の津波や地盤崩壊の危険があります」


リリィはカイラを見る。


「人は住んでるの?」


「ああ。百四十人ほどだ」


「連絡は?」


「さっきから取れない」


カイラの声が低くなる。


「島の名前はミナトア。七島で一番小さい島だ」


そこへ、長老が姿を現した。


「やはり、海の口が開いたか」


カイラが振り返る。


「長老、言い伝えのことを教えてくれ」


長老は沖を見た。


「昔、一つの島が海へ消えた」


リリィが尋ねる。


「本当に?」


「私も見たわけではない。古くからそう伝えられている」


長老は続けた。


「だから七島では、海が不自然に引いたとき、何より先に高台へ逃げる」


コピが静かに言う。


「過去の大規模な津波や地盤変動が、伝承として残った可能性があります」


クロが明滅した。


――記録媒体を持たない長期観測情報。


「そうだね」


リリィは頷く。


「でも、今はその話を確かめるより先に、島の人たちを助けないと」


***


夜明け前。


《潮騒》はミナトアへ向かった。


ティアナが舵を握る。


「昨日の津波で航路が変わってる。気をつけろ!」


カイラも船首に立っていた。


「浅瀬は俺が案内する!」


海は静かだった。


静かすぎるほどに。


オルガが海面を見つめる。


「また急に波が来たりしない?」


コピが答える。


「可能性があります。沿岸への接近は慎重に行う必要があります」


やがて、島が見えた。


緑に覆われた小さな島。


白い砂浜。


木造の家々。


一見、何も変わっていない。


しかし。


「……あれ?」


リリィが気づいた。


浜に人が集まっている。


荷物を持った人。


子どもを抱く人。


老人を支える人。


避難の準備はしている。


だが、船へ乗ろうとしない。


カイラが叫ぶ。


「ミナトアの者たち! 迎えに来た!」


浜から返事があった。


「帰れ!」


ティアナが眉を寄せる。


「……何だって?」


***


島の代表は、壮年の男性だった。


名前はダルマ。


腕を組み、リリィたちを睨んでいる。


「島から出るつもりはない」


カイラが声を荒らげた。


「海底が沈んでるんだぞ!」


「分かっている」


「だったら!」


「ここが俺たちの島だ」


ダルマは背後を指した。


畑。


家。


船着き場。


先祖の墓。


「何百年も暮らしてきた場所を、簡単に捨てられるか」


リリィは何も言えなかった。


カイラが歯を食いしばる。


「命より大事なのか!」


「命だけ助かっても、その先をどう生きる?」


ダルマの言葉に、周囲の人々が頷いた。


オルガが小声で言う。


「……気持ちは分かるけど」


コピが警告した。


「地盤変動が継続しています」


リリィは一歩前へ出た。


「島を捨ててください、とは言いません」


ダルマが見る。


「じゃあ何だ?」


「一度、高い場所へ移動してほしいんです」


「そこなら助かるのか?」


リリィはコピを見る。


コピは首を横に振るように光を揺らした。


「安全は保証できません」


ダルマが苦笑する。


「なら、同じことだ」


リリィは言葉に詰まった。


***


その時、地面が揺れた。


ごごご……。


浜の端に亀裂が走る。


「危ない!」


オルガが叫ぶ。


人々が後退した。


波打ち際の小屋が、大きく傾く。


柱が折れた。


ばきん!


小屋が海へ滑り落ちる。


ダルマの顔色が変わった。


コピが叫ぶ。


「海岸部の地盤が崩壊しています!」


さらに地面が揺れる。


カイラが声を張った。


「全員、浜から離れろ!」


今度は誰も逆らわなかった。


人々が高台へ向かって走り出す。


しかし。


一人の老人だけが戻ろうとした。


「あそこに墓が!」


リリィが腕をつかむ。


「今は危険です!」


「妻が眠ってるんだ!」


老人の目に涙が浮かぶ。


「置いていけるか!」


リリィは強く腕を引かなかった。


かわりに言った。


「場所は、覚えていますか?」


「……え?」


「帰れるようになったら、また来られるように」


老人は震える声で答える。


「覚えてるに決まってる」


「だったら、今は生きてください」


老人の表情が崩れた。


カイラが肩を貸す。


二人は高台へ向かった。


***


高台の広場。


百人以上が集まっていた。


コピが海底の変化を報告する。


「島の南側で沈降が進行。地盤の一部が海側へ移動しています」


ティアナが尋ねる。


「島全部が沈むのか?」


「現時点では不明です。ただし、沿岸部の安全は確保できません」


ダルマが俯いた。


「……どうすればいい」


リリィは答えた。


「一時的に避難しましょう」


「どこへ?」


「七島の別の島へ」


カイラが頷いた。


「受け入れは俺が頼む」


ダルマは顔を上げた。


「戻れるのか?」


リリィは少し考えた。


「分かりません」


沈黙。


「でも、戻れる可能性を残すには、今生きていることが必要です」


ダルマは長く黙った。


そして。


「……分かった」


ゆっくり頷いた。


「まず子どもと老人を乗せてくれ」


***


避難が始まった。


ティアナの《潮騒》。


カイラの警備船。


さらに近隣の島からも小型船が到着する。


人々が次々と乗り込んだ。


クロが海面を観測していた。


――疑問。


リリィが振り向く。


「何?」


――島民は、危険を理解していた。それでも退避しなかった。


「うん」


――なぜ、地盤崩壊後に判断を変更した。


リリィは少し考えた。


「本当に失うかもしれないって、実感したからかな」


――危険性は以前から存在した。


「数字だけでは、分からないこともあるんだよ」


クロは沈黙した。


その時、コピが警告を出した。


「リリィ! 海底で新たな変動!」


海図が赤く染まる。


ミナトアの南側。


海底に巨大な亀裂が伸びていた。


「地盤の移動が加速しています!」


ティアナが叫ぶ。


「全船、急げ!」


***


最後の船が離岸した直後。


島が大きく揺れた。


ごおおおおん!


山の斜面から土砂が崩れる。


浜辺が砕ける。


海面が盛り上がった。


リリィは船縁をつかんだ。


「島が……!」


ミナトアの南半分が、ゆっくり海へ崩れ落ちていく。


木々。


家々。


畑。


すべてが波に飲み込まれた。


船上の人々から悲鳴が上がる。


ダルマは何も言わなかった。


ただ、島を見つめていた。


カイラが肩に手を置く。


「……生きてる」


ダルマは小さく頷いた。


「分かってる」


その声は震えていた。


「分かってるんだ……」


***


昼過ぎ。


避難船団は、七島連盟の中央島へ到着した。


ミナトアの住民は全員の所在確認が進められ、行方不明者はいなかった。


しかし、故郷の大部分を失った。


長老は静かに言った。


「昔の人々は、海の口と呼んだ」


リリィが見る。


「うん」


「その意味を、今の私たちは知らなかった」


コピが答える。


「今回の現象は、海底斜面の崩壊を伴う地盤変動と考えられます。ただし、発生原因はまだ特定できません」


クロが明滅した。


――観測記録に未登録の海底構造を確認。


オルガが振り向く。


「また古代施設?」


――不明。人工物とは断定できない。


リリィは地図を見る。


ミナトアの南。


海底の亀裂。


そのさらに奥に、奇妙な形。


円でも、塔でもない。


巨大な空洞のような構造。


「これが、海の口?」


コピが答える。


「可能性はあります」


クロが続ける。


――追加情報を検出。


「何?」


――古代の観測記録に、同一地点が存在する。


リリィは顔を上げた。


「補完機構の?」


――違う。


クロの光が弱まる。


――補完機構が建造される以前の記録である。


オルガが息をのむ。


「もっと昔?」


――肯定。


地図の海底に、古い文字が浮かび上がった。


コピが解析する。


「第七海溝・深層空洞域」


その下に、さらに一文。


「内部への干渉を禁ずる」


リリィは黙った。


海の底には、補完機構より古い何かが存在している。


そして七島連盟は、観測を拒んできた。


偶然なのか。


それとも。


「長老に、もう一度聞いてみよう」


リリィが言った。


その瞬間。


クロが、初めて強い警告を発した。


――待て。


全員が振り向く。


――旧記録の最終行を復元した。


コピが表示を拡大する。


そこには、短い文章が残されていた。


「この場所は、封じられたのではない」


リリィが息をのむ。


「……どういうこと?」


クロは答えた。


――「外へ出ないように、隔離された」


海の底。


巨大な空洞。


その奥で、何かが動いた。

第191話では、七島連盟の最南端にあるミナトアが大規模な地盤崩壊に見舞われました。


住民たちは故郷を離れることを拒みます。


しかし、実際に海岸が崩れ始め、リリィたちは一時避難を呼びかけました。


結果として住民は退避できましたが、島の南半分が崩落。


多くの人々が住まいや畑を失いました。


そして海底調査の結果、ミナトアの南に巨大な空洞があることが判明。


そこには、惑星調和補完機構よりも古い観測記録が残されていました。


記録には、


「内部への干渉を禁ずる」


という警告。


さらに、


「この場所は、封じられたのではない。外へ出ないように、隔離された」


という一文がありました。


次回は、この深海空洞の正体と、七島連盟が長年守ってきた禁忌の関係へ踏み込んでいきます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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