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調和の守護者 リリィ&コピ第五部  作者: マスター


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第190話 波が来るまで、あと七分

第189話では、リリィたちは南方群島の七島連盟へ向かいました。


しかし、島の人々は外部からの観測を拒否していました。


かつて惑星調和補完機構が、助言という名目で島々の暮らしを統一しようとしたためです。


リリィたちはその意思を尊重し、引き返そうとします。


ところが突然、海面が急激に低下。


島から救難信号が上がり、巨大な波が迫っていました。


海上警備隊長カイラは、緊急避難のために入域を許可します。


「島を救ったからといって、俺たちの暮らしに口を出す権利が生まれると思うな」


リリィたちは、その条件を受け入れました。

「浜に子どもが十二人!」


カイラが叫んだ。


《潮騒》の船首から、島が見える。


浜辺には、小さな人影。


その向こうでは、大人たちが必死に手を振っていた。


コピが海面を測定する。


「沖合に大規模な水位変動を確認。第一波到達まで約七分と推定」


「七分!?」


オルガの顔色が変わる。


ティアナが舵を切った。


「浜まで船を寄せる!」


「駄目だ!」


カイラが叫ぶ。


「珊瑚礁がある! 大型船は座礁する!」


ティアナは歯を食いしばった。


「じゃあ、どうする!」


カイラは迷わず答えた。


「小舟を出せ!」


***


救助艇が海へ降ろされた。


リリィ、オルガ、カイラ。


三人が乗り込む。


ティアナは《潮騒》に残った。


「救助したら戻れ! 無理なら高台へ走れ!」


「分かった!」


小舟が浅瀬へ向かう。


普段は海面下にある珊瑚礁が、ところどころ露出していた。


オルガが櫂を握る。


「右!」


「左だ!」


「どっち!?」


「私から見て右!」


「じゃあ最初からそう言って!」


カイラが一瞬だけ笑った。


だが、すぐ真顔に戻る。


「急げ!」


浜へ到着。


子どもたちが泣いていた。


「お母さんが!」


「山へ向かった!」


「僕たち、置いていかれた!」


カイラが叫ぶ。


「違う! 迎えに来た!」


リリィは子どもの前にしゃがむ。


「今から高いところへ行くよ」


一人の少女が首を振った。


「お兄ちゃんがいない!」


「どこ?」


「洞窟!」


カイラの表情が変わった。


「潮見洞か……!」


オルガが聞く。


「近いの?」


「浜の向こうだ!」


コピが警告する。


「推定到達まで五分」


リリィは少女を見る。


「お兄ちゃん、何歳?」


「十歳!」


カイラが即断した。


「俺が探す。お前たちは子どもを高台へ!」


「でも!」


「ここは俺の島だ!」


その声には迷いがなかった。


リリィは頷いた。


「分かった!」


***


十二人の子どもを連れて、石段を駆け上がる。


浜から高台へ続く避難路。


しかし途中で、崩れた岩が道を塞いでいた。


オルガが舌打ちする。


「こんな時に!」


コピが別の経路を示す。


「右側の斜面に迂回路があります」


リリィは子どもたちへ声をかけた。


「こっち!」


だが、少年が一人、足を止めた。


「そこは駄目!」


「どうして?」


「雨が降ると崩れる!」


リリィは止まった。


コピの地図には、安全な道として表示されている。


でも、地元の少年は違うと言う。


「コピ?」


「地盤の安定性までは確認できていません」


少年が別の方向を指した。


「あっち! 昔の畑道!」


木々の間に、細い道があった。


リリィは即座に決めた。


「そっちへ行こう!」


オルガが子どもを抱き上げる。


「走れる子は走って!」


***


一方、潮見洞。


カイラは暗い洞窟へ飛び込んでいた。


「おい! 誰かいるか!」


奥から声が返る。


「ここ!」


少年が岩の上に取り残されていた。


足元には、潮だまり。


その水が不自然な速さで引いている。


「動くな!」


カイラが駆け寄る。


少年を抱き上げた。


その瞬間。


ごごごご……。


遠くで、海が鳴った。


コピの通信が入る。


『第一波到達まで二分以内と推定!』


「分かってる!」


カイラは洞窟を飛び出した。


だが、浜にはもう小舟がなかった。


避難路は遠い。


その時。


丘の上からリリィの声がした。


「カイラ!」


振り向く。


リリィたちが、木の上から縄を垂らしていた。


「こっち!」


カイラが叫ぶ。


「どうして戻ってきた!」


「戻ってない!」


リリィが答える。


「高台から迎えに来たの!」


オルガが縄を引く。


「少年を先に!」


カイラは少年を縄につかまらせた。


上から島民たちが引き上げる。


一人。


そして、カイラ自身。


最後に岩場へ飛びついた瞬間。


海が盛り上がった。


***


「伏せて!」


リリィが叫んだ。


巨大な波が浜へ押し寄せる。


白い壁。


砂浜の小屋が、次々と飲み込まれた。


小舟が転がる。


流木が飛ぶ。


水が石段を駆け上がってくる。


カイラが少年を抱え、岩陰へ身を寄せる。


リリィは木の根につかまった。


オルガが叫ぶ。


「リリィ!」


「大丈夫!」


しかし、その瞬間。


足元の土が崩れた。


「えっ――」


リリィの身体が傾く。


海へ向かって滑り落ちる。


オルガが手を伸ばした。


届かない。


次の瞬間。


細い光が走った。


リリィの身体が止まる。


腰に、光の帯が巻きついていた。


コピの補助装置だった。


「引き上げます!」


オルガと島民たちが、一斉に縄をつかむ。


リリィは岩場へ引き戻された。


直後。


大きな波が、その下を通り過ぎた。


***


数十分後。


第一波は引いた。


だが、海面はまだ不安定だった。


コピが警告する。


「後続波の可能性があります。沿岸部へ戻らないでください」


カイラは高台から浜を見下ろした。


建物が壊れている。


船も流された。


しかし。


子どもたちは全員、生きていた。


「……助かった」


カイラが呟く。


リリィが頷く。


「うん」


オルガは地面に座り込んだ。


「もう、足が動かない……」


そこへ、少女が走ってきた。


「お兄ちゃん!」


救助された少年が振り向く。


二人は抱き合った。


カイラは、その姿を黙って見ていた。


***


夕方。


島の集会所。


避難した人々が集まっていた。


カイラはリリィたちを紹介する。


「この人たちが手伝ってくれた」


島民たちが頭を下げる。


リリィは慌てて首を振った。


「私たちだけじゃありません。避難路を教えてくれた子も、縄を引いてくれた人たちもいました」


カイラは小さく笑った。


「そうだな」


その時、年配の女性が立ち上がった。


島の長老らしい。


「助けてくれたことには感謝する」


リリィは頷く。


「はい」


「だが、入域許可は救助活動のためだけだ」


オルガが顔を上げた。


「もう出ていけってこと?」


女性は静かに答えた。


「そうは言っていない」


集会所がざわめいた。


女性は続ける。


「客人として迎えるかどうかは、島の者が決める」


カイラが驚く。


「長老?」


「助けられたから、すぐ信じるわけではない」


女性はリリィを見る。


「だが、話くらいは聞いてもいいだろう」


リリィは微笑んだ。


「ありがとうございます」


***


その夜。


島の高台では、避難した人々が焚き火を囲んでいた。


リリィたちは少し離れた場所に座っている。


オルガが星を見上げた。


「大変な一日だったね」


「うん」


クロが静かに浮かんでいる。


――質問。


リリィが見る。


「何?」


――島民の少年が示した道は、私の地図に存在しなかった。


「そうだね」


――それでも、最適な避難経路だった。


「うん」


――観測記録に存在しない情報が、現地には存在した。


リリィは笑った。


「だから、知らないことがあるって面白いんだよ」


クロはしばらく黙った。


――記録を更新する。


その時。


カイラがやってきた。


「リリィ」


「どうしたの?」


「長老が呼んでる」


「今?」


「ああ」


カイラの表情は、昼間より険しかった。


「津波の原因について、聞きたいらしい」


リリィは立ち上がった。


「私も知りたい」


カイラが首を横に振る。


「違う」


「え?」


「長老たちは、原因を知っているかもしれない」


オルガが立ち上がる。


「どういうこと?」


カイラは低い声で言った。


「この島では昔から、海が突然引いたら高台へ逃げろと教えている」


「それは普通じゃない?」


「そうだ」


カイラは頷く。


「でも、今回のような引き潮が起きる場所を、昔の人々は別の名前で呼んでいた」


リリィが尋ねる。


「何て?」


カイラは島の沖を見た。


月明かりの海。


その先には、小さな黒い島影。


「海の口」


コピが反応する。


「地名ですか?」


「分からない」


カイラは続けた。


「ただ、古い言い伝えでは……」


少し間を置く。


「海の口が開くとき、七つの島のうち一つが消える」


リリィの表情が変わった。


「島が……消える?」


カイラが頷く。


「長老は、その言い伝えが今回の津波と関係していると考えている」


その瞬間。


クロが強く明滅した。


――異常を検出。


コピも同時に地図を開く。


「南方群島の海底地形に変化があります」


オルガが息をのむ。


「何が?」


コピが答えた。


「島の南側で、海底が大きく沈降しています」


地図の一部が赤く染まった。


そして。


七つの島のうち、最も南にある小島。


その周囲の水深が、急激に増していた。


リリィは画面を見つめる。


「……まさか」


クロが静かに言った。


――島の消失が始まっている可能性がある。


七島連盟。


その名を支えてきた七つの島。


一つが、海へ沈もうとしていた。

第190話では、迫る津波から島の子どもたちを救うため、リリィたちと七島連盟が初めて協力しました。


避難の途中、コピの地図にはない古い畑道が、地元の少年によって示されます。


観測記録にない情報でも、そこに暮らす人々は知っている。


クロにとって、新たな学びとなりました。


また、島の人々は救助への感謝と、外部からの干渉を拒否する意思を分けて考えます。


長老は、リリィたちを無条件で歓迎するわけではありません。


しかし、話を聞くことは認めました。


そして終盤。


七島連盟には古くから、


「海の口が開くとき、七つの島のうち一つが消える」


という言い伝えがあることが判明します。


直後、最南端の島の周囲で海底の沈降が確認されました。


次回は、海底で何が起きているのか、そして七島連盟が守ってきた暮らしと島そのものを巡る決断へ進みます。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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