↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
調和の守護者 リリィ&コピ第五部  作者: マスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/65

第167話 存在しない地下三階

第166話では、都市充足率98.7%の仕組みが見えてきました。


数字そのものは嘘ではありません。


ただし、現在の配置に適応できず「再配置手続き中」となった市民は、集計から一時的に外れます。


一方で、再配置によって暮らしやすくなる人も多く、都市外へ移る場合にも支援があります。


アルケイアの制度は、単純な排除ではありません。


そんな中、配置局職員のミレアから公開見学へ招かれました。


しかしその夜、宿に匿名の紙が届きます。


「配置局で、地下三階を見て」


公開都市図では、配置局は地下二階まで。


第167話では、都市を動かす配置局へ入ります。

配置局は、思っていたより明るかった。


大きな窓。


白い壁。


広い待合室。


受付には人が並んでいる。


怒鳴り声もない。


兵士もいない。


「もっと怖いところ想像してた」


オルガが小声で言う。


リリィも頷いた。


「私も」


「おはようございます」


ミレアがやってきた。


昨日と同じ制服。


表情も穏やかだ。


「本日は、公開範囲をご案内します」


リリィは一瞬だけ、ポケットの紙を意識した。


地下三階を見て。


今は言わない。


まず見る。


「お願いします」


***


最初に案内されたのは、職業配置室だった。


壁一面に、市民の希望と求人が表示されている。


「都市が全部決めるわけではないんですね」


リリィが言う。


ミレアは頷いた。


「第一希望から第三希望まで提出できます」


「希望が通る人は?」


「約七割です」


オルガが驚く。


「思ったより高い」


「残りは?」


「適性、健康状態、空き枠を見て別案を提示します」


一人の男性が職員と話していた。


「厨房は苦手なんです」


「では倉庫管理はどうでしょう」


「夜勤が……」


「日勤枠を探します」


普通の相談だった。


無理やり連れていかれるわけではない。


次は住居配置。


子どものいる家庭。


高齢者。


歩行に不自由のある人。


職場への距離。


さまざまな条件を見て、住む場所を調整している。


コピが言う。


「合理的です」


ミレアは頷いた。


「そのための制度です」


リリィは聞いた。


「再配置が嫌な人は?」


「理由を聞きます」


「それでも嫌なら?」


ミレアが少し黙る。


「保留できます」


「ずっと?」


「いいえ」


そこだけ、答えが短かった。


***


昼前。


再評価面談も見せてもらった。


一人の女性が座っている。


向かいには職員二人。


「現在の仕事を続けたいです」


女性が言った。


「理由を教えてください」


「好きだからです」


職員は否定しない。


「現在、作業達成率が基準を下回っています」


「分かっています」


「負担を感じていますか?」


「感じています。でも続けたい」


職員たちは顔を見合わせる。


「では三か月の継続観察にしましょう」


女性はほっとした。


面談終了。


オルガがリリィを見る。


「普通に優しいね」


「うん」


だからこそ分からない。


エナは、なぜ外へ出されたのか。


見学の途中で、リリィは尋ねた。


「エナの記録を見られますか」


ミレアの表情が少し変わった。


「本人の同意がありません」


「そうですよね」


リリィは引いた。


ミレアが逆に驚いたようだった。


「もっと食い下がると思いました」


「本人の記録だから」


「……そうですね」


ほんの少しだけ、ミレアの態度が柔らかくなった。


***


午後。


地下へ降りた。


地下第一階。


記録保管。


地下第二階。


都市計算室。


巨大な装置が並んでいる。


市内から集められた情報を使い、住居、仕事、食料、医療などの需要を予測する場所だ。


オルガが装置を見上げる。


「これがみんなの生活を決めてる?」


ミレアが訂正する。


「提案しています。最終判断には人間の職員が入ります」


コピが設備を見る。


「完全自動ではない」


「はい」


リリィは少し安心した。


人間が決める。


異議も出せる。


保留もある。


なら、どこがおかしい?


地下第二階の廊下を歩く。


突き当たり。


そこに階段があった。


下へ続いている。


リリィの足が止まった。


表示はない。


地下二階のさらに下。


匿名の紙を思い出す。


オルガも気づいた。


視線だけでリリィを見る。


ミレアが言った。


「こちらで公開見学は終了です」


リリィは階段を見る。


「この下は?」


ミレアが止まった。


「設備区画です」


「地下三階?」


「正式な階層名称はありません」


嘘ではない。


でも、答えにもなっていない。


リリィは迷った。


匿名の紙を出すべきか。


その時。


階段の下から、人が上がってきた。


若い職員だった。


リリィたちを見るなり、足を止める。


腕には書類。


一枚が床へ落ちた。


オルガが拾う。


「落としましたよ」


「ありがとうございます」


渡そうとした瞬間。


リリィには、文字が見えた。


未配置者長期滞留一覧


その下。


現在人数 1,263


職員が紙を受け取り、急いで階段を上がっていった。


リリィはミレアを見る。


「未配置者って?」


ミレアは答えない。


「再配置待機の人とは違う?」


沈黙。


オルガが低く言う。


「1,263人いる」


ミレアは目を閉じた。


そして、静かに言った。


「今日の見学は終了です」


「ミレアさん」


「終了です」


声は強くない。


でも、それ以上は通さない声だった。


リリィは追わなかった。


「分かりました」


三人は階段へ向かう。


だが、ミレアが呼び止めた。


「リリィさん」


振り返る。


ミレアは、迷っていた。


長い沈黙のあと。


「今夜、旧市場へ来てください」


「え?」


「一人で」


オルガがすぐ言う。


「それは却下」


ミレアが初めて少し笑った。


「では、三人で」


「何を見せるんですか?」


ミレアは階段の下を見た。


「私が毎日、何を決めているのか」


***


夜。


旧市場。


昼よりさらに人が少ない。


ミレアは制服ではなく、普通の服で待っていた。


「来ましたね」


「はい」


「先に言っておきます」


ミレアはリリィを見る。


「地下三階に、拷問部屋も牢獄もありません」


オルガが言う。


「まだ何も聞いてないけど」


「顔に書いてあります」


「そんな顔してた?」


「少し」


リリィが聞く。


「じゃあ、何があるんですか」


ミレアは答えた。


「行き先のない人たちです」


沈黙。


「再配置しても合わない」


「外縁区でも?」


「はい」


「都市の外へ行かないの?」


「行けない人もいます」


高齢者。


家族を介護している人。


外で暮らす技術を持たない人。


他都市から受け入れを断られた人。


そして。


「アルケイアを出たくない人」


ミレアが言った。


「故郷だから?」


「はい」


エナと同じだ。


リリィは聞いた。


「その人たちを地下三階に住ませてる?」


「違います」


ミレアは首を横に振る。


「地下三階は、未配置者を管理する部署です。人が閉じ込められているわけではありません」


オルガが息を吐く。


「そこは安心した」


「ですが」


ミレアの表情が曇る。


「記録上、彼らは通常市民統計から外れます」


リリィは理解した。


「1,263人」


「はい」


「困っている人たち」


「はい」


「でも98.7%には入らない」


ミレアは頷いた。


「入りません」


リリィは聞いた。


「どうして?」


ミレアはしばらく答えなかった。


そして、静かに言った。


「入れると、都市評価が下がるからです」


オルガの表情が変わる。


「誰が困るの?」


「都市評議会」


「なぜ?」


「予算が減ります」


リリィは眉を寄せた。


ミレアが説明する。


アルケイアでは、各区への予算配分に充足率が使われている。


充足率が高いほど、


「制度が機能している」


と評価される。


すると、次年度の資源配分も安定する。


逆に低ければ、予算が削られ、再編対象になる。


オルガが呆れたように言った。


「困ってる人を数えたら、その人を助ける予算が減るの?」


「そうです」


「変じゃない?」


ミレアは苦く笑った。


「だから困っているんです」


初めてだった。


配置する側の人間が、


困っている


と言った。


リリィは黙った。


悪意ではない。


制度が、制度自身を守ろうとしている。


数字を良く見せる。


数字が良ければ予算を守れる。


予算を守れば、多くの市民を助けられる。


だから、数字から一部の人を外す。


その結果、その人たちはさらに見えなくなる。


「変えられないんですか」


リリィが聞いた。


ミレアは答えた。


「変えようとした人はいます」


「どうなったの?」


「一人、まだいます」


「誰?」


ミレアは小さな紙を差し出した。


住所が書いてある。


外縁第四区・旧時計塔


「明日、ここへ行ってください」


「誰がいるんですか」


ミレアは答えた。


「アルケイアの充足率を作った人です」


リリィは紙を見る。


「制度を作った本人?」


「はい」


「その人が、外縁区に?」


ミレアは頷いた。


「自分で作った制度によって、再配置されました」


オルガが思わず言う。


「それは……」


ミレアは苦く笑った。


「皮肉でしょう?」


リリィは旧時計塔の住所を握った。


制度を作った人。


その制度によって、数字の外へ出された人。


アルケイアの問題は、誰か一人の悪意ではない。


なら。


作った本人は、今この都市をどう見ているのか。


次の答えは、外縁第四区にあった。

第167話では、都市配置局の内部を見学しました。


配置局では、市民の希望も聞かれ、再評価でも継続を認められる場合があります。


アルケイアの制度は、単純に人々を強制配置する仕組みではありません。


しかし、地下二階のさらに下には「未配置者長期滞留」を扱う部署が存在していました。


未配置者は牢獄へ入れられているわけではありません。


ただし、通常の市民統計から外されています。


その理由は、充足率が予算配分に使われているためでした。


困っている人を数字に戻せば、都市評価が下がる。


都市評価が下がれば、その人たちを含む市民を支える予算まで減る。


その矛盾の中で、制度を運営するミレア自身も苦しんでいました。


そして最後に、新しい人物の存在が明らかになります。


アルケイアの充足率制度を作った本人。


その人物は現在、自分の作った制度によって外縁第四区へ再配置されています。


次回は、外縁第四区の旧時計塔を訪ね、制度を作った人物がなぜ数字の外へ出されたのかを追います。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。