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調和の守護者 リリィ&コピ第五部  作者: マスター


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20/21

第145話 風車が口になる夜

第144話では、二周目・北として、眠り布の湿りを整えました。


これで、南・西・東・北の道は、ひとまず仮安定します。


しかし台帳には、三周目は「役を戻す」とありました。


南に灰読み。

西に砂聞き。

東に井戸見。

北に種守り。

中央に風車読み。


風守りは一人ではなく、五つの役で風を見ていたのです。


そして夕方、村中央の風車の影が五つに分かれました。


台帳には、


「五つ目の影が出る時、風車は目ではない。

口になる。

その夜、村へ風を問え」


とありました。


第145話では、風待ち村が、風を読む役目を取り戻し始めます。

日が沈むと、村の中央は静かになった。


火は使わない。


灯りも最小限。


風車の影を見るため、広場には低い反射板だけが置かれた。


風車は、ゆっくり回っている。


ぎい。


ぎい。


羽根は四枚。


けれど、地面に落ちた影は五つに見えた。


ナジが小さく言う。


「本当に、五つある」


オルガが目を細めた。


「一本多いね」


コピが確認する。


「風車羽根の影ではなく、基部の通気柱が砂塵を動かし、五つ目の影のように見せています」


ナジが首を傾げる。


「つまり?」


「地下の風が、見える形で出ています」


ラサが記録板に書いた。


五つ目の影。地下風の通気柱。風車が口になる前兆。


ガル老人は黙って風車を見ていた。


顔は険しい。


でも、逃げようとはしない。


リリィは村人たちへ言った。


「今日は、風を動かす日ではありません」


村人たちが静かになる。


「誰が風を見るのか。それを決める日です」


ラサが台帳を開く。


声は、少し震えていた。


「三周目。役を戻す。

道具は一人で持つな。

歌は一人で閉じるな。

風は一人で決めるな」


オルガが小さく頷いた。


「大事なやつだ」


ラサは続ける。


「南に灰読み。

西に砂聞き。

東に井戸見。

北に種守り。

中央に風車読み」


ナジが手を上げかけて、止めた。


ガルが横目で見る。


「言いたいことがあるなら言え」


「僕、風車読みやりたい」


広場が少しざわめいた。


ラサがすぐ言う。


「ナジ、これは遊びではありません」


「分かってる」


「夜に一人で出るのも禁止です」


「分かってる」


ナジは紙風車を握りしめた。


「でも、僕は風の向きが分かる。紙風車で。じいちゃんの話も覚えてる」


ガルは黙っていた。


ラサもすぐには返せない。


コピが静かに言った。


「ナジの観測は、これまで複数回、実測と一致しています。ただし単独判断は推奨されません」


オルガが付け足す。


「つまり、見習いならあり」


ナジの顔が明るくなる。


ラサは少し考え、頷いた。


「風車読みの見習い。正式な判断は、大人と一緒に」


ナジは大きく頷いた。


「はい!」


ガルが低く言う。


「風車読みは、風車を見るだけではない。村の全ての音を聞く」


「聞く!」


「返事が早い者ほど危ない」


ナジは口を閉じた。


オルガが笑いをこらえた。


次に、牧倉の管理人が前に出た。


「西の砂聞きは、私がやる」


ラサが尋ねる。


「理由は?」


「砂留め布を毎日見るのは、倉番の仕事に近い。麦に入る砂を見てきたから、砂の増え方は分かる」


ガルが頷いた。


「悪くない」


さらに、井戸番の女性が手を上げた。


「東の井戸見は、私が」


「中央井戸を毎朝見ているからですね」


ラサが言うと、女性は頷いた。


「水の色と匂いなら、分かる。底までは分からないから、教えてほしい」


リリィは微笑した。


「分からないことを言えるなら、大丈夫です」


南の灰読みには、誰もすぐ手を上げなかった。


黒い灰。


赤い粒。


光る粒。


熱い風。


怖いのは当然だった。


沈黙の中で、ガルが杖を突いた。


「南は、私が見る」


ナジが驚く。


「じいちゃん?」


「昔、父と見た。全部は知らんが、最初に逃げるわけにはいかん」


ラサは少しだけ迷った。


「では、灰読みはガル老人。ただし、補佐を一人つけます」


オルガが言った。


「一人で抱えない。大事」


村人の若い男が、おずおずと手を上げた。


「俺が補佐します。火を使わない見張りなら、できます」


ガルは彼を見て、短く頷いた。


北の種守り。


ここでも、村は静かになった。


古い種。


封印壺。


眠り布。


失えば、乾き年の備えも失う。


ラサが一歩前へ出た。


「北は、私が見ます」


ガルがすぐに言った。


「記録係が全部持つな」


ラサは頷いた。


「だから、私は種守りではなく、記録補佐として入ります。種守りは、村で決めてください」


ナジが少し考え、村の年配女性を見た。


「ミナ婆ちゃん、種のこと詳しいよね」


呼ばれた女性が目を丸くする。


「私かい?」


「畑の種、いつも分けてる」


女性は困ったように笑った。


「風の種は知らないよ」


リリィは言った。


「知らないまま始めて大丈夫です。開けない、触らない、変化を見る。それが最初です」


ミナは、しばらく黙った。


そして、小さく頷いた。


「なら、見る。起こすかどうかは、まだ決めない」


ラサが記録する。


北・種守り。ミナ。記録補佐ラサ。封印壺は開けない。


五つの役が、仮に決まった。


中央、風車読み。ナジ、見習い。大人補佐つき。

南、灰読み。ガルと補佐。

西、砂聞き。倉番。

東、井戸見。井戸番。

北、種守り。ミナとラサ。


完璧ではない。


でも、空席ではなくなった。


その時、風車の音が変わった。


ぎい。


ぎい。


ごう。


広場に、低い風が通った。


火はない。


強い風もない。


なのに、風車の基部から砂が薄く舞い上がり、地面の五つ目の影が濃くなった。


ナジが息をのむ。


「風車が……しゃべる?」


ガルが低く言った。


「口になる夜だ」


ラサが台帳を読む。


「村へ風を問え。

問う者は五つ。

答える者は一つではない。

風車の口が鳴れば、役は名を返せ」


オルガが眉をひそめる。


「名を返せ?」


その瞬間、風車が低く鳴った。


ごおん。


誰かを呼ぶような音だった。


ナジの紙風車が、南を向いた。


ガルが息を止める。


「最初は南か」


リリィは小さく頷いた。


「灰読み」


広場の全員が、ガルを見た。


ガルは杖を握り、少しだけ背を伸ばした。


「南、灰読み。ガル。聞いている」


風車がもう一度鳴った。


ごおん。


今度は、西へ影が揺れた。


倉番が慌てて前へ出る。


「西、砂聞き。……聞いている」


次は東。


井戸番が手を胸に当てた。


「東、井戸見。見ています」


次は北。


ミナが少し震えながら言った。


「北、種守り。起こさず、見ています」


最後に、五つ目の影が中央へ戻った。


ナジは紙風車を握る。


喉が鳴った。


ラサが静かに言う。


「ナジ」


ナジは一歩前に出た。


「中央、風車読み見習い。聞いています」


風車が止まった。


一瞬だけ。


村中が静まり返る。


次に、羽根がゆっくり回った。


正方向。


ぎい。


ぎい。


コピが告げる。


「風車回転、安定。地下風の急変なし」


オルガが息を吐く。


「成功?」


コピは少し間を置いた。


「三周目、役の応答は成立しました」


ナジが小さく笑った。


けれど、すぐに風車の足元で別の音がした。


こつ。


こつ。


まるで、地下から誰かが叩いているような音。


ラサが台帳をめくる。


顔が強張った。


「続きがあります」


リリィが尋ねる。


「何と?」


ラサは読み上げた。


「役が名を返した夜、風車の下を聞け。

そこに、六つ目の名が眠る」


オルガが低く言った。


「五つじゃなかったの?」


ナジの紙風車が、風車の足元へ向いた。


地面の下から、もう一度。


こつ。


返事のような音がした。


五つの役は戻った。


だが、風車の下には、まだ誰も名乗っていない六つ目が眠っていた。

第145話では、三周目の始まりとして、風待ち村に五つの役を戻しました。


南の灰読み。

西の砂聞き。

東の井戸見。

北の種守り。

中央の風車読み。


風守りは一人ではなく、五つの役で風を見ていたことが分かります。


村人たちは、それぞれの暮らしに近い場所から役を引き受けました。


風車読みは、紙風車で風を読み続けてきたナジが見習いとして担うことになります。


夜、風車は「口」となり、五つの役に名を返すよう求めました。


それぞれが名乗ると、風車は正方向で安定します。


しかし最後に、風車の下から謎の音がしました。


台帳には、


「役が名を返した夜、風車の下を聞け。

そこに、六つ目の名が眠る」


とあります。


次回は、風車の下に眠る六つ目の名を追います。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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