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調和の守護者 リリィ&コピ第五部  作者: マスター


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第146話 六つ目の名

第145話では、風待ち村に五つの役が戻りました。


南の灰読み。

西の砂聞き。

東の井戸見。

北の種守り。

中央の風車読み。


夜、風車は「口」となり、五つの役に名を返すよう求めます。


五人が名乗ると、風車は安定しました。


しかしその直後、風車の下から音がします。


こつ。


こつ。


台帳には、こうありました。


「役が名を返した夜、風車の下を聞け。

そこに、六つ目の名が眠る」


第146話では、風車の下に眠る六つ目の名を追います。

風車の下は、暗かった。


羽根はゆっくり回っている。


ぎい。


ぎい。


そのたびに、地面の奥から小さな音が返った。


こつ。


こつ。


ナジは紙風車を握りしめる。


「誰か、叩いてるみたい」


オルガがすぐ言った。


「近づきすぎない」


「分かってる」


「穴を覗かない」


「分かってる」


「紙風車を突っ込まない」


「それはやらない!」


ラサは台帳を抱え、風車の影を見ていた。


「六つ目の名……五つの役以外に、まだ何かあったのでしょうか」


ガル老人は答えない。


リリィは風車の足元を見た。


そこに入口はない。


石の台座。


砂よけの低い囲い。


そして、古い通気孔が四つ。


東、西、南、北へ向いている。


コピが測定する。


「風車基部の下に小型空洞反応。四方向の通気路とは別に、中央直下へ伸びる縦穴があります」


オルガが眉を寄せる。


「縦穴?」


「はい。ただし塞がれています」


ラサが台帳をめくる。


「続きがあります」


村人たちが静かになる。


ラサは読んだ。


「六つ目は、風を読む者にあらず。

風を使う者にあらず。

風を止める者にもあらず。

名は、止め役」


ナジが首を傾げる。


「止め役?」


オルガも言う。


「風を止める者じゃないのに、止め役?」


ガル老人が低く答えた。


「止め役は、風を止めるんじゃない。人を止める」


広場が静まり返った。


リリィはゆっくり頷く。


「風を動かしすぎないように、止める人」


ガルは言った。


「そうだ。五つの役は、それぞれ自分の場所を守る。だが、自分の場所を守りたいあまり、強く動かそうとすることがある」


ラサが小さく息をのむ。


「南は熱を抜きたがる。西は砂を落としたがる。東は井戸を冷やしたがる。北は種を守りたがる。中央は風車を安定させたがる」


「その時、誰が止める?」


ガルの声は重かった。


ナジが紙風車を下ろした。


「止め役……」


コピが風車下の音を拾う。


こつ。


こつ。


一定ではない。


五つの役が風車へ近づくたびに、少し強くなる。


ラサが記録する。


六つ目。止め役。風ではなく、人を止める役。


オルガが腕を組んだ。


「嫌われそうな役だね」


ガルは苦く笑った。


「だから、消えた」


ラサが顔を上げる。


「消えた?」


「止め役は、いつも嫌われた。急ぐ者を止める。便利に使おうとする者を止める。自分たちの畑だけを守ろうとする者を止める」


ガルは風車を見上げた。


「砂の年、最後まで風の道を全部閉じるなと言ったのも、止め役だった」


ラサの手が止まる。


「その人は……」


「村を出た」


短い言葉だった。


だが、その場の空気が重くなる。


ガルは続けた。


「風守りたちは割れた。村は急いだ。止め役は反対した。だが、誰も聞かなかった」


ナジが小さく言った。


「だから、六つ目の名が眠った?」


ガルは頷いた。


「名乗る者がいなくなった」


風車の下で、また音がした。


こつ。


リリィは風車の台座を見る。


「掘りません」


オルガが頷く。


「うん。もう分かってる」


コピが言う。


「縦穴の状態を外部から確認します。台座側面の小孔から音を送れます」


ガルが風車の台座にある小さな穴を示した。


「止め穴だ」


オルガが小さく笑う。


「名前が直球」


「風車が急ぎすぎた時、ここで音を聞く」


コピが測定糸を通す。


一度目。


こん。


短い返り。


二度目。


ごん。


深い返り。


三度目。


こつ。


最初に聞こえた音と同じだった。


コピが表示する。


「縦穴下部に石板反応。音が返っています」


ラサが台帳を読む。


「止め穴が三度返れば、名を問え。

名なき時、風は人を試す。

名ある時、風は待つ」


ナジが顔を上げる。


「誰が名乗るの?」


誰もすぐには答えなかった。


灰読みのガル。

砂聞きの倉番。

井戸見の井戸番。

種守りのミナ。

風車読み見習いのナジ。


それぞれの役は、もうある。


だが、止め役は違う。


全員を止めなければならない。


時には、村全体を止める。


便利な役ではない。


喜ばれる役でもない。


ラサが静かに言った。


「私が」


ガルがすぐに言う。


「記録係が持ちすぎるな」


「分かっています」


ラサは頷いた。


「でも、記録係は、全員の言葉を見ます。誰か一人の場所ではなく、村全体の流れを見る役目です」


オルガが言った。


「重いよ」


「はい」


ラサは短く答えた。


「でも、誰も止められない記録なら、また同じことになります」


ナジがラサを見た。


「ラサ姉ちゃんが止め役?」


ラサは少し迷い、それから言った。


「一人ではありません」


リリィはその言葉に頷いた。


「一人で持たない方がいい」


ラサは村人たちを見た。


「止め役は、記録係が合図を出します。でも、止めるかどうかは、五つの役が声を返して決める。私一人が命令する役にはしません」


ガルは長く黙った。


やがて、低く言った。


「それなら、昔よりいい」


ラサは少し驚いた顔をした。


ガルは目を逸らす。


「昔は、一人が背負いすぎた」


ナジが風車を見る。


「じゃあ、名乗る?」


ラサは深く息を吸った。


風車の下へは近づかない。


止め穴に向かって、声を出す。


「六つ目、止め役。ラサ。記録で止めます」


風車が、一度止まった。


村中の空気が止まる。


次の瞬間。


風車の下から、音が返った。


こつ。


こつ。


そして、風車の羽根がゆっくり回る。


ぎい。


正方向。


静かな回り方だった。


コピが告げる。


「風車基部、振動低下。五つの役と止め役の応答が成立した可能性があります」


オルガが息を吐く。


「成功?」


コピは少しだけ間を置いた。


「三周目、役戻しの中核は成立しました」


ナジが笑った。


「限定的じゃない!」


「ただし、運用はこれからです」


「やっぱり付いた」


広場に小さな笑いが起きる。


だが、すぐに台帳の続きで静まった。


ラサが読み上げる。


「止め役が名を返したら、四周目を急ぐな。

種を問う前に、止め役を試せ。

風が欲しい者、砂を恐れる者、水を求める者、種を望む者。

その声を聞け」


オルガが首を傾げる。


「試す?」


ガルが答えた。


「村の中で、意見が割れる」


その時、村人の一人が前へ出た。


麦を管理している男だった。


「風が安定したなら、西をもっと開けてほしい。麦倉の砂を減らしたい」


井戸番の女性がすぐ言う。


「東も必要です。井戸が温まれば、村全体が困ります」


ミナが不安そうに言った。


「北をこれ以上動かすのは怖い。種はまだ眠らせたい」


灰読みの補佐が南を見る。


「でも南の熱も放っておけない」


声が重なり始める。


リリィは動かなかった。


ここで決めるのは、リリィではない。


ラサは記録板を握った。


そして、風車の下へ向かって、もう一度言った。


「止めます」


村人たちが静かになる。


ラサの声は震えていた。


それでも、続けた。


「今は、どこか一つを大きく動かしません。まず全員の声を記録します。四周目に入るかどうかは、その後です」


風車の下から、こつ、と音が返った。


まるで、それでいい、と言うように。


しかし、コピの表示に新しい警告が出た。


「村北側、封印壺の内部圧に微変化」


ナジが顔を上げる。


「種?」


コピは慎重に答えた。


「発芽ではありません。ただし、外部の議論中に北風穴の環境が変化しています」


ガルが低く言った。


「声で風が動く夜だ」


ラサが台帳を見る。


そこには、こうあった。


「村が急げば、北は目を開く」


リリィは北の祠を見た。


止め役は戻った。


だが、その最初の仕事は、もう始まっていた。


村が種を求める前に、種が目を覚まし始めるかもしれなかった。

第146話では、風車の下に眠っていた「六つ目の名」を調べました。


五つの役は、南の灰読み、西の砂聞き、東の井戸見、北の種守り、中央の風車読み。


しかし、台帳にはさらに六つ目として「止め役」が記されていました。


止め役は、風を止める役ではありません。


風を動かしすぎようとする人を止める役でした。


かつて砂の年に、風の道を全て閉じることへ反対した止め役は、村から去り、その名も記録から消えていました。


今回、ラサが止め役として名乗ります。


ただし、一人で命令するのではなく、五つの役の声を聞き、記録によって止める形を選びました。


これにより、三周目の役戻しの中心が成立します。


しかし、すぐに村の中で意見が割れ始めました。


西を開けたい者。

東を守りたい者。

北を動かしたくない者。

南の熱を恐れる者。


止め役の最初の仕事は、四周目へ急がないことでした。


終盤では、北の封印壺に微変化が出ます。


台帳には、


「村が急げば、北は目を開く」


とありました。


次回は、村の願いと北の種の反応を見ながら、四周目へ進むべきかどうかを問う回になります。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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