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調和の守護者 リリィ&コピ第五部  作者: マスター


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第141話 南穴の下で鳴らない石

第140話では、二周目の最初として、南の灰受けと「光る粒」の意味を追いました。


台帳には、


「光る粒は、地下の火が息を変えた印。

その時、風ではなく、石を呼べ」


とありました。


南には、地下の熱の向きを変える「火止め石」がありましたが、その石はずれている可能性があります。


リリィたちは、直接奥へ入らず、呼び石を置いて熱い気流を少し曲げました。


その結果、黒い灰や赤い粒は灰受け布へ落ち、新しい光る粒の増加も止まります。


しかし、三度目の音が返らず、南穴の下に空きがあることが分かりました。


終盤では、南の砂の口の中心がわずかに沈みます。


第141話では、南穴の下にある空洞を、掘らずに調べます。

南の砂の口のまわりに、もう一重の縄が張られた。


さっきまでの縄より、さらに外側だ。


オルガが声を張る。


「ここから内側は立ち入り禁止! 見たい人は後ろから! ナジも後ろ!」


ナジは紙風車を抱えて、少し不満そうに言った。


「後ろでも見えるよ」


「えらい。百点継続」


「そろそろ百二十点ほしい」


「今日は沈む地面があるから、百点満点」


ナジは口を尖らせたが、下がった。


南穴の中心は、指一本分ほど沈んだままだった。


大きな崩落ではない。


けれど、誰も楽観しなかった。


コピが地表を測る。


「沈下は停止しています。ただし、下部空洞の縁が不安定です」


ラサの通信が入る。


『台帳の該当箇所を読みます』


紙札をめくる音。


『三度目が返らぬ時、南穴の下に空きがある。

空きを掘るな。

石を落とすな。

熱を追うな。

まず、床の声を聞け。』


オルガが言った。


「掘るな、落とすな、追うな。やることがどんどん減っていくね」


ガル老人が低く答える。


「だから聞く」


リリィは頷いた。


「床の声を聞きます」


ガルは三番耳杭の外側を示した。


「床聞き板が要る」


ナジが目を輝かせる。


「今度は板?」


オルガが小さく笑う。


「布、石、杭、板。だいぶ道具が増えてきた」


ガルは真面目に言う。


「南の床は、直接叩くな。板を置いて、板越しに聞く」


コピが補足した。


「振動を広く分散し、局所崩落を避けるための道具と考えられます」


ラサが通信越しに記録する。


『床聞き板。南穴下部空洞の反響確認用。直接打撃禁止。』


床聞き板は、南の古い石置き場にあった。


薄いが、しなりのある板。


木ではなく、乾いた葦を重ね、樹脂で固めたものだった。


端には小さな穴があり、紐を通せる。


ガルはそれを見て、少しだけ目を細めた。


「まだ残っていたか」


リリィは板を手に取った。


軽い。


だが、硬すぎない。


「これをどこへ?」


「沈んだ中心には置くな。外縁だ。床の縁を聞く」


コピが投影で位置を示す。


「推奨設置点は三か所。南東、南西、北側外縁」


オルガが村人へ声をかける。


「板を置く人は二人だけ! 置いたらすぐ下がる! 叩かない!」


ナジがすぐ言う。


「叩かない。聞く」


「そう。よく分かってる」


床聞き板が南東の外縁に置かれる。


コピが細い測定糸を板に触れさせた。


一度目。


こん。


低い音が返る。


ガルが頷く。


「そこはまだ持っている」


二度目。


南西。


こつ。


短く、硬い音。


ガルの眉が寄る。


「浅い」


三度目。


北側外縁。


音を入れる。


……返らない。


沈黙。


ナジの紙風車が止まった。


コピが解析する。


「北側外縁下に空洞反応。南穴中心部から北側へ空きが伸びています」


オルガが顔をしかめる。


「村の方?」


コピが地図を出す。


「はい。南穴下部の空洞は、わずかに村中央方向へ伸びています」


ラサの声が硬くなる。


『中央井戸方向ですか?』


「直結は未確認です。ただし、風車基部と中央井戸の間の地下風へ影響する可能性があります」


ガルが低く言った。


「南の床が食われている」


リリィは地図を見た。


南穴の下にできた空洞。


それが村の中央へ伸びている。


もし熱がそこを通れば、井戸や風車へ影響する。


でも、今すぐ塞ぐことはできない。


「台帳に次は?」


ラサが読み上げる。


『床が鳴らぬ時、砂を入れるな。

水を入れるな。

風を増やすな。

支え石を探せ。』


オルガが言う。


「今度は支え石」


ナジが首を傾げた。


「支える石?」


ガルが答える。


「空洞を埋める石ではない。床が落ちないよう、風の道の縁に置く石だ」


コピが南穴周辺を走査する。


「支え石と思われる石材反応が二つあります。一つは南西側に残存。もう一つは移動または欠落しています」


ラサがすぐ記録した。


『支え石、二つ一組の可能性。一つ欠落』


オルガがため息をつく。


「また足りない」


リリィは周囲を見る。


「欠けた支え石は、どこへ?」


ガルは答えに詰まった。


ナジが顔を上げる。


「昔の畑の境に、変な石があるよ」


全員がナジを見る。


「変な石?」


「平たいのに、片側だけ黒く焼けてる石。みんな座るのに使ってる」


ガルの顔色が変わった。


「それは……」


ラサの声が強くなる。


『ガル老人』


「……支え石かもしれん」


オルガが額に手を当てた。


「大事な石、だいたい別用途になってるね」


リリィはすぐに言った。


「見に行きましょう。でも動かすかどうかは、見てから」


畑の境の石は、村の南東にあった。


子どもたちが休む腰掛けになっていたらしい。


平たい石。


片側に黒い焼け跡。


裏側には、細い溝が刻まれていた。


コピが測定する。


「南穴の残存支え石と材質、溝形状が一致。欠落支え石である可能性が高いです」


ナジが小さく言った。


「座ってた……」


ガルが苦い顔をする。


「知らなければ、ただの石だ」


ラサの通信が静かに入る。


『今から、ただの石ではなくなります』


オルガが石の周囲を見る。


「戻す?」


リリィは首を横に振った。


「すぐには戻さない。ここも何か支えているかもしれない」


コピが畑の境を確認する。


「この石は現在、畑境の土留めとして機能しています。撤去すると、小規模な砂流入が起きる可能性があります」


ナジが言う。


「じゃあ、抜いちゃだめ?」


「そのままでも南穴が危ない」


オルガが言った。


「また、どっちも困るやつ」


リリィは少し考えた。


「仮支え石を作ります」


ガルが眉を上げる。


「作る?」


「本物は動かさない。形を写して、仮の支え石を南穴へ置く」


コピが頷く。


「古い石置き場に近い材質の平石があります。完全な代替にはなりませんが、床聞き試験用の仮支えとして使える可能性があります」


ガルはしばらく黙り、頷いた。


「試し置きなら、できる」


作業はすぐに始まった。


仮支え石は、呼び石よりも重い。


だが、大きすぎない。


片側に浅い溝を刻み、熱い風が正面から当たらないようにする。


オルガが石を運びながら言う。


「これ、腰にくるね」


ナジが心配そうに見る。


「落とさないでね」


「今日二回目」


「大事だから」


南穴へ戻ると、熱抜き布がまだ静かに揺れていた。


黒い灰は仮灰受けに落ちている。


光る粒は増えていない。


だが、中心の沈みはそのままだ。


コピが仮支え石の位置を示す。


「中心ではなく、北側外縁。空洞の縁に沿わせます」


ガルが耳を澄ませる。


「石を寝かせすぎるな。立てすぎるな」


オルガが苦笑する。


「今日もそれ」


リリィが角度を合わせる。


「ここ?」


ガルは少しだけ黙り、頷いた。


「そこだ」


仮支え石が置かれた。


すぐには何も起きない。


コピが床聞き板を再び北側外縁に置く。


測定音を送る。


こん。


返った。


弱い。


けれど、返った。


ナジが目を輝かせる。


「鳴った!」


ラサの通信が弾む。


『北側外縁、反響回復。仮支え石、有効』


コピも告げる。


「空洞縁の振動が低下。南穴中心部の沈下進行、停止を確認」


オルガが拳を握る。


「よし。今回は?」


コピは少し間を置いた。


「限定的成功です」


「分かってた!」


リリィは南穴を見た。


本物の支え石は、畑境にある。


動かせない。


でも仮支えで、南穴の沈下は止まった。


二周目の南は、少し整った。


しかし、ラサの通信がすぐに入った。


『台帳の続きです。支え石を仮に置いた時は、必ず西を聞け、とあります』


オルガが西を見た。


「また西?」


ラサは読み上げる。


『南の床を支えれば、熱は西へ逃げる。

西が砂を落とせねば、風締め場が鳴る。』


コピが西側データを確認する。


「風締め場周辺で微弱な振動を検出」


ガルが顔をしかめた。


「南の熱が、西へ回ったか」


ナジの紙風車が、西を向いた。


ゆっくり。


重く。


その先で、風締め場の方角から、低い音が聞こえた。


ごん。


砂袋の奥で、何かが鳴った。


リリィは西を見た。


南穴は沈まなくなった。


だが、支えたことで熱の逃げ方が変わった。


二周目の次は、西。


砂落とし穴だけではなく、風締め場そのものが鳴り始めていた。

第141話では、南の砂の口の下にある空洞を、掘らずに調べました。


台帳には、


「空きを掘るな。

石を落とすな。

熱を追うな。

まず、床の声を聞け」


とありました。


リリィたちは、床聞き板を使って南穴の外縁を調べます。


その結果、南穴の下の空洞は、村中央側へ少し伸びていることが分かりました。


さらに台帳には、空洞を直接埋めるのではなく「支え石」を探すように記されていました。


欠けていた支え石は、畑の境で腰掛け代わりに使われていましたが、今は畑の土留めにもなっていたため、すぐには戻せません。


そこでリリィたちは、本物を抜かず、古い石置き場の石で仮支え石を作りました。


仮支え石を南穴の北側外縁に置くと、返らなかった床の音が戻り、南穴の沈下も止まります。


小さな成功です。


しかし、台帳には、南の床を支えれば熱は西へ逃げる、とありました。


終盤では、風締め場周辺で低い振動が出始めます。


次回は、西側の風締め場と砂袋の奥で何が鳴っているのかを追います。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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