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調和の守護者 リリィ&コピ第五部  作者: マスター


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第140話 風ではなく、石を呼べ

第139話では、四風巡りの第一周が終わりました。


南の熱を抜き、西の砂を落とし、東の井戸を冷やし、北の種を眠らせる。


風車は正しく回り、井戸水温も安定し、北の封印壺の霜も止まりました。


しかし台帳には、こう書かれていました。


一周目は、荒れを鎮める。

二周目は、道を整える。

三周目は、役を戻す。

四周目にして、種を問え。


そして二周目の最初、南の灰受けで黒い灰と赤い粒の中に、小さく光る粒が見つかります。


台帳には、


「光る粒は、地下の火が息を変えた印。

その時、風ではなく、石を呼べ」


とありました。


第140話では、その「石を呼べ」の意味を追います。

南の砂の口は、静かに熱を吐いていた。


ふう。


ふう。


熱抜き布の下では、黒い灰が浅い石皿に落ちている。


その中に、小さな光る粒があった。


赤でも黒でもない。


角度によって、黄色くも白くも見える。


ナジは紙風車を握ったまま、そっと身を引いた。


「触らない」


オルガが頷く。


「うん。今日も百点」


ラサの通信が入る。


『台帳の記述をもう一度読みます』


少し紙の擦れる音がした。


『灰受けを掃く時、赤灰の底に光る粒を見れば、南穴を閉じよ。

光る粒は、地下の火が息を変えた印。

その時、風ではなく、石を呼べ。』


リリィは灰受け布を見つめた。


「南穴を閉じよ……」


オルガがすぐに聞く。


「閉じるの?」


コピが即答した。


「完全閉鎖は推奨しません。ここでの『閉じよ』は、熱の通り道を狭める、または直接噴出を抑える意味の可能性があります」


ガル老人が頷いた。


「そうだ。南を全部塞げば、熱は床を押す。だが、開けすぎれば火の息が上がる」


ナジが眉を寄せる。


「じゃあ、石って何?」


ガルは答えなかった。


知らないのではない。


言いたくない顔だった。


ラサの声が少し強くなる。


『ガル老人。石のことを知っていますね』


ガルは杖を握りしめた。


「……昔、南には火止め石があった」


「火止め石?」


リリィが聞き返す。


「地下の熱を止める石ではない。熱の向きを変える石だ。南穴の奥に置き、火の息を直接上へ出さないようにしていた」


コピが地図を表示する。


「南砂の口、灰受け下部に未確認の石材反応があります。ただし一部がずれています」


オルガが顔をしかめる。


「つまり、その火止め石がずれてる?」


「可能性があります」


ナジが小さく言う。


「だから光る粒が出た?」


コピが答える。


「熱い気流が、通常より浅い層を通っているなら、鉱物粒子が地表側へ運ばれた可能性があります」


ラサが通信越しに記録する。


『火止め石。熱を止める石ではなく、向きを変える石。現在、ずれの可能性』


リリィは南の砂の口へ視線を戻した。


掘れば危険。


塞げば危険。


風で吹き飛ばせば、灰が舞う。


水で固めてもいけない。


では、石を呼ぶとは何か。


「火止め石を動かすんですか」


ガルは首を横に振った。


「人の手で奥へ入るな。石を呼ぶとは、石の音を聞くことだ」


オルガが小さく笑った。


「また耳の話?」


「石にも返事がある」


ガルは真面目に言った。


「火止め石が正しい場所にあれば、低く鳴る。ずれていれば、乾いた音が返る」


コピが頷く。


「音響確認なら可能です。灰受け本体を開けず、外側から火止め石の位置を推定できます」


リリィは決めた。


「聞きます。中心は触らない」


オルガが村人たちへ声をかける。


「全員、縄の外! 黒い粉を踏まない! 風上に立たない!」


ナジが紙風車を見ながら言う。


「今日はこっちが風上」


「ありがとう、観測者」


ナジは少し照れた。


コピが測定糸を三番耳杭へ通す。


一回目。


こん。


短く乾いた音。


ガルが眉を寄せる。


「軽い」


二回目。


耳杭の角度を少し変える。


こつん。


今度は、もっと浅い音。


コピが表示する。


「火止め石と思われる反響、南東側へ偏っています。正常位置からずれている可能性が高いです」


ラサの声が入る。


『直せますか』


ガルは言った。


「直接は無理だ。だが、呼び石なら使える」


「呼び石?」


ナジが顔を上げる。


ガルは村の方を指した。


「南の古い石置き場にある。火止め石を叩くためではない。近くに置いて、熱の道を少し変える石だ」


オルガが言った。


「置くだけで変わるの?」


コピが補足する。


「熱気流と砂粒の流路に小さな障害物を置くことで、直接噴出を避け、灰受け側へ誘導する構造と考えられます」


ナジは納得したように頷いた。


「石で風の道を曲げるんだ」


「うん」


リリィは頷いた。


「でも、重すぎる石はだめです」


ガルが少し驚いた顔をする。


「分かるのか」


「重すぎると、灰受けを潰します」


「その通りだ」


オルガが笑った。


「リリィも風守りっぽくなってきた」


南の石置き場は、古い物置の裏にあった。


平たい石。

丸い石。

穴の空いた石。

黒く焼けた石。


ガルはその中から、手のひら二つほどの平石を選んだ。


表面に、細い溝が刻まれている。


「これが呼び石だ」


ラサが通信越しに聞く。


『溝の意味は?』


「熱い息を割る。正面で受けず、二つに分ける」


コピが確認する。


「流路分割用の溝と推定。仮配置に適しています」


オルガが石を持ち上げる。


「これくらいなら運べる」


ナジがすぐ言う。


「落とさないでね」


「急に厳しい」


「大事だから」


呼び石は、南の砂の口の中心ではなく、灰受けの手前に置かれた。


火止め石へ直接触れない。


灰受け本体も開けない。


熱抜き布の下に、少しだけ斜めに置く。


ガルが音を聞く。


「もう少し左」


オルガが石を動かす。


「ここ?」


「行きすぎだ」


「この言い方、ほんと全員同じ」


リリィが石の角度を少し戻した。


その瞬間、熱抜き布がふわりと上がった。


黒い灰が、舞わずに石皿へ落ちる。


ぱら。


ぱらぱら。


赤い粒も、灰受け布の中央へ落ちた。


光る粒は、新しく増えない。


コピが告げる。


「熱気流の直接上昇が低下。灰受けへの粒子沈降が安定。光る粒の新規検出なし」


ナジが息を吐いた。


「止まった?」


「増加は止まりました」


コピが答える。


オルガが軽く拳を握る。


「限定的成功?」


「はい」


「よし」


リリィは南の砂の口を見た。


火止め石は奥でずれている。


それ自体はまだ直っていない。


でも、呼び石を置いたことで、熱の息は少し曲がった。


黒い灰も赤い粒も、ひとまず舞わない。


南の二周目は、入口に立てた。


その時、ラサの通信が入った。


『台帳の続きです。南で光る粒を見た時は、石を呼び、三度聞け、とあります』


「三度聞く?」


リリィが尋ねる。


『一度目、石の位置。

二度目、熱の向き。

三度目、下の空洞。

三度目が返らぬ時、南穴の下に空きがある。』


コピがすぐに三番耳杭へ測定音を送る。


一度目。


こん。


呼び石が返る。


二度目。


ごくん。


熱の向きが変わった音。


三度目。


沈黙。


長い沈黙だった。


ナジの紙風車も、止まった。


オルガが低く言う。


「返らないね」


コピが解析する。


「南砂の口下部に空洞反応。灰受け本体の下、または火止め石の奥に空隙が形成されています」


ガルの顔色が変わった。


「南穴の下が、抜けている……」


ラサの声が硬くなる。


『どういう意味ですか』


ガルは言った。


「火止め石がずれただけではない。下の石床が、熱で食われている」


コピが地図を更新する。


「南砂の口下部に、局所空洞。拡大すれば、砂の口周辺の沈下、または熱気流の急変が起きる可能性があります」


オルガはすぐに周囲を見た。


「全員、さらに下がって!」


村人たちが縄の外へ下がる。


ナジも一歩、二歩と下がった。


リリィは南の地面を見つめた。


二周目は、道を整えるはずだった。


しかし南の道は、思ったより傷んでいる。


灰受けの詰まり。


火止め石のずれ。


そして、下の空洞。


風だけでは足りない。


石を呼べ。


その意味は、呼び石を置くことだけではなかった。


石の下で何が起きているか、聞くことだった。


その時、南の砂の口の中心で、小さな音がした。


こつ。


石が割れるような音。


続けて、地面がわずかに沈んだ。


ほんの指一本分。


だが、確かに沈んだ。


コピが警告を出す。


「南砂の口下部、微小沈下を検出」


ナジの紙風車が、今度は上を向いて回り始めた。


下から、熱い風が押している。


ガル老人が低く言った。


「三度目が返らぬ時、南穴の下に空きがある」


リリィは頷いた。


「次は、下の空洞を見ます。掘らずに」


南の地面の下で、熱と石が崩れ始めていた。

第140話では、二周目の最初として、南の灰受けと「光る粒」の意味を追いました。


台帳にあった、


「光る粒は、地下の火が息を変えた印。

その時、風ではなく、石を呼べ」


という言葉から、南には「火止め石」と呼ばれる石があり、地下の熱の向きを変えていたことが分かります。


しかし、その火止め石は本来の位置からずれている可能性がありました。


リリィたちは奥へ入らず、三番耳杭から音を送り、火止め石の状態を確認します。


そのうえで、直接火止め石を動かすのではなく、外側に「呼び石」を置き、熱い気流を少し曲げました。


これにより、黒い灰や赤い粒は灰受け布へ落ちるようになり、新たな光る粒の増加も止まります。


小さな成功です。


しかし、台帳に従って三度目の音を聞いたところ、返りがありませんでした。


これは、南穴の下に空きがあるという意味でした。


終盤では、南の砂の口の中心がわずかに沈み、下部に空洞ができている可能性が強まります。


次回は、南の砂の口の下にある空洞を、掘らずに調べる回になります。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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