↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
調和の守護者 リリィ&コピ第五部  作者: マスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/20

第142話 砂袋の奥で鳴るもの

第141話では、南の砂の口の下にある空洞を、掘らずに調べました。


台帳には、


「空きを掘るな。

石を落とすな。

熱を追うな。

まず、床の声を聞け」


とありました。


リリィたちは、床聞き板で南穴の外縁を調べ、空洞が村中央側へ伸びていることを確認します。


さらに、欠けていた支え石の代わりに仮支え石を置き、南穴の沈下を止めました。


しかし台帳には、


「南の床を支えれば、熱は西へ逃げる。

西が砂を落とせねば、風締め場が鳴る」


とも書かれていました。


終盤では、西の風締め場から低い音が響きます。


第142話では、風締め場と砂袋の奥で何が鳴っているのかを追います。

西の風締め場は、また鳴っていた。


ごん。


低い音。


風車の軋みでも、砂丘の崩れる音でもない。


石の奥から返ってくるような、重い音だった。


ナジは紙風車を胸の前で止めた。


「風が重い」


オルガがすぐに周囲を見た。


「みんな、風締め場には近づかない! 砂袋にも触らない!」


村人たちは、もう慌てて走らなかった。


縄の外へ下がる。


火を消す。


顔に布を当てる。


それぞれが、言われる前に動いた。


ラサの通信が入る。


『今の動きも記録します。村人側、安全手順の定着あり』


オルガが笑った。


「いい記録だね」


リリィは風締め場を見た。


砂袋は、前に上段を少しずらしただけだ。


完全には開けていない。


けれど、南穴を支えたことで、熱い風の一部が西へ回った。


その圧が、砂袋の奥を鳴らしている。


コピが測定する。


「風締め場内部、圧力上昇。砂袋の奥に石材反応があります。以前は砂袋に遮られ、反響が弱かった箇所です」


ガル老人が目を細めた。


「奥に石がある?」


ラサが聞く。


『ガル老人、心当たりは?』


ガルは少し黙った。


「……分け石かもしれん」


ナジが顔を上げる。


「分け石?」


「西の風を、砂落とし穴と風車側に分ける石だ。風締め場は、ただ閉じる場所ではない。本来は分ける場所だった」


オルガが眉を上げる。


「名前は風締め場なのに?」


ガルは苦い顔で答える。


「閉じた後の名前だ。昔は、西分け場と呼んだ」


ラサの通信が少し強くなる。


『記録します。旧称、西分け場。後に風締め場へ変更』


リリィは小さく頷いた。


名前が変わると、役目も変わる。


分ける場所が、閉じる場所になった。


それだけで、村の見方は変わってしまう。


コピが風締め場内部の映像を拡大した。


観測機は入口から中へ入り、砂袋の隙間へ光を当てる。


奥には、たしかに石があった。


平たい石。


中央に浅い溝。


左右へ風を逃がすような形。


だが、その石の片側は、砂袋に押されて斜めになっていた。


「石材、傾斜しています。左側の通気路が狭まり、右側へ風が偏っています」


ナジが紙風車を右へ向ける。


くる。


重く、遅く回る。


「右が強い」


コピが頷く。


「右側は風車方向。左側は砂落とし穴方向と推定」


オルガが言った。


「つまり、砂を落とす方に行かず、風車側へ寄ってる?」


「はい。そのため風車基部と風締め場に負荷がかかっています」


リリィは風締め場を見る。


「分け石を戻します」


ガルがすぐに首を振った。


「人は入るな」


「入りません。砂袋も大きく動かしません」


コピが提案する。


「上段の小袋をさらに一指分だけ戻し、分け石の左側へ通気を作る方法があります。石自体を直接動かさず、圧力差で傾きを緩められる可能性があります」


ラサが確認する。


『一指分だけ?』


ガルが答える。


「それ以上はだめだ。砂が来る」


オルガが村人へ声をかける。


「作業は外から! 袋は引っ張りすぎない! 砂が出たら止める!」


ナジが紙風車を構える。


「僕、右と左を見る」


「縄の外からね」


「分かってる」


ロープが砂袋に結ばれた。


前にずらした小袋。


それを、今度は少しだけ戻す。


戻すといっても、閉じるのではない。


分け石の左側へ、細い風の道を作るためだ。


コピが合図する。


「開始」


ロープが張る。


ぎし。


砂袋は動かない。


もう一度、少しだけ力を加える。


ざら。


古い砂が落ちる。


オルガが手を上げる。


「止めて」


コピが測る。


「崩落兆候なし。砂流入は微量。継続可能」


リリィが頷く。


「もう少し」


砂袋が、指一本分だけ戻った。


その瞬間。


ごん。


また音がした。


だが、今度は少し違った。


重い音のあとに、低い返りが続く。


ごおん。


ガルが耳を澄ませた。


「分け石が鳴った」


ナジが紙風車を左へ向ける。


くる。


今までより、安定して回る。


「左にも風が行った!」


コピが表示する。


「砂落とし穴方向への通気、回復。風車方向への偏流、低下」


ラサの声が明るくなる。


『西分け場、部分復旧。分け石反響あり』


オルガが拳を握る。


「よし。今回も?」


コピが答える。


「限定的成功です」


「はい、よし」


リリィはほっとした。


西の風は、分かれ始めた。


砂落とし穴へ少し戻り、風車側への負荷は下がった。


しかし、すぐに別の表示が出た。


「砂落とし穴本体の落下音が増加しています。西側で砂を受ける量が増えました」


ガルが頷く。


「分け石が戻れば、砂も戻る。当然だ」


ナジが不安そうに聞いた。


「穴、詰まらない?」


「詰まる前に聞く」


ガルは言った。


「二周目は、道を整える。分け石を鳴らしたら、砂落とし穴も聞く」


ラサが台帳を読む。


『西を分けたら、落としを聞け。

落としが重ければ、布を上げるな。

落としが軽ければ、砂舌を伸ばせ。

落としが鳴らねば、西を閉じるな。』


オルガがため息をついた。


「また次の確認」


リリィは頷いた。


「でも、順番がある」


砂落とし穴へ移動する。


砂留め布はまだ斜めに張られている。


砂舌も、副落としも残っている。


ただ、さっきより砂の落ちる音が強い。


ざら。


ざらざら。


ナジが紙風車を低く構える。


「重い。ちょっと重すぎるかも」


コピが測定する。


「砂落とし穴本体への砂流入増加。詰まりには至っていませんが、堆積速度が高いです」


ガルが砂留め布を見る。


「布を上げるな」


オルガが聞く。


「上げたら?」


「砂が跳ねる。穴の縁が削れる」


「じゃあどうする?」


ガルは砂舌を指した。


「本体側の砂舌を太くせず、長くする。落ちる前に少し寝かせる」


コピが頷く。


「有効です。急落を避け、砂を段階的に沈降させます」


村人たちが動いた。


浅く、長く。


砂舌を延ばす。


砂を押し込まず、表面をならす。


ナジが紙風車を見ながら言う。


「もう少し下。違う、下っていうか、ゆっくり」


オルガが笑う。


「風守り語、むずかしい」


コピが補正する。


「傾斜を一度下げます」


「それ!」


砂の音が変わる。


ざらざら。


から。


ざら。


へ。


砂落とし穴は、重すぎずに砂を飲み込み始めた。


コピが告げる。


「堆積速度、低下。西風の分配、短期安定」


ラサが記録する。


『西分け場、砂落とし穴、二周目調整完了。仮安定』


オルガが空を見る。


「仮安定、いい言葉だね」


「便利だけど、油断できない言葉だよ」


リリィが言うと、オルガは肩をすくめた。


「知ってる」


その時、村中央の風車が鳴った。


ぎい。


だが、乱れてはいない。


正しく回っている。


中央井戸の水温も安定。


南の灰受けも、赤い粒の増加は止まっている。


北祠の眠り布も静かだ。


二周目の西は、ひとまず整った。


けれど、ラサの通信が入る。


『台帳の続きです。二周目、西の後は東。冷やし室ではなく、井戸床を見る、とあります』


オルガが眉をひそめた。


「井戸床?」


ガルの顔が変わった。


「中央井戸の底だ」


ナジが紙風車を止める。


「底を見るの?」


コピが中央井戸のデータを開く。


「中央井戸底部に、微弱な沈殿反応。水温は安定していますが、底層で濁りが発生しています」


リリィは村の中心を見た。


西風を分けたことで、砂は落ちた。


風車も落ち着いた。


だが、その影響は今度、井戸の底へ出ている。


ラサが台帳を読み上げた。


『東を整える時、冷やしだけを見るな。

井戸の底が濁れば、風は冷えても水は眠らぬ。』


オルガが低く言った。


「次は井戸か」


ナジの紙風車が、今度は村中央へ向いた。


静かに回っている。


けれど、井戸の底では、何かが動き始めていた。

第142話では、西側の風締め場で鳴っていた低い音の正体を追いました。


風締め場は、もともと「西分け場」と呼ばれ、西風を砂落とし穴側と風車側へ分ける場所でした。


しかし、砂の年以降、砂袋で閉じられたことで「風締め場」と呼ばれるようになり、本来の役目が忘れられていました。


砂袋の奥には「分け石」がありましたが、砂袋に押されて傾き、風車側へ風が偏っていました。


リリィたちは、砂袋を大きく動かさず、一指分だけ戻して分け石の左側へ通気を作ります。


その結果、砂落とし穴側へも風が戻り、風車側への負荷が下がりました。


小さな成功です。


ただし、西風が砂落とし穴側へ戻ったことで、今度は砂落とし穴本体に砂が入りすぎる状態になりました。


そこで、砂舌を浅く長く伸ばし、砂を急に落とさず段階的に沈める形へ整えました。


二周目の西は、ひとまず仮安定です。


しかし台帳によれば、次の二周目・東では冷やし室ではなく「井戸床」を見る必要があります。


終盤では、中央井戸の底で微弱な濁りが発生していることが分かりました。


次回は、中央井戸の底で何が動き始めているのかを追います。


原案・構想:マスター

物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。