美少女技師の命名会議は三秒で終了した
工房の名を決める会議は、近隣住民七名とロイドの参加で始まった。
エリスは黒板へ大きく書いた。
《超絶機巧覇道要塞エリスティック・ギア・ゼロ》
「却下」
ロイドが三秒で言った。
「まだ説明していません」
「聞くと長くなる」
「要塞って、修理屋じゃないのかい」と老婦人が尋ね、マリナは「ゼロは何ですか」と首を傾げた。
「すべての技術がここから始まるという意味です。加えて、超絶は性能、機巧は分野、覇道は将来性を――」
「全部いらない」と住民たちの声が揃った。
候補は《蒼穹無限工房》《鋼鉄乙女秘密基地》と悪化を続けた。最後にロイドが、看板板へ「クロイツェル魔導工房」と書く。
エリスはすぐには答えなかった。
追放の日、技術院から消された姓。それを今度は、自分の場所へ自分で掲げることになる。
「……簡潔すぎませんか」
「何をする場所で、誰の工房か分かる」
マリナも「私は好きです」と言った。
エリスは短く頷き、看板用の照明魔導具を組み始めた。光量は通常の三倍、雨天自動点灯、来客感知、侵入者警告、祝祭時の七色発光まで盛り込もうとする。
「看板が飛ばなければ何でもいい」とロイドが釘を刺した。
「飛行機能は次期改修です」
「考えていたのか」
部品箱の底から、古い安定器が見つかった。刻印はカインゼル・ヴァルハルト名義の特許番号だった。廃工房の設備に、また彼の技術が残っている。
エリスは刻印を削らず、そのまま内側へ収めた。
夕暮れ、淡い青の明かりが「クロイツェル魔導工房」の文字を照らす。派手な仕掛けは住民全員に止められたため、看板は静かに光るだけだった。
けれど街道からでも、ここに工房があると分かる。
「悪くありません」
エリスは何度も看板を見上げた。
翌朝、その看板を目印に王立魔導技術院の監査官が訪れた。正式な工房名を掲げたことで、エリスは再び社会とつながり、同時に技術院からも見つかったのだった。




