四本の義肢を、一度捨てる
中央核への通路は、人体と魔導具を一つの完成形として認識する。
四肢統合制御につながったままでは、エリスの義肢が白い術式の端末にされる。中心へ入る方法は一つしかなかった。
四本すべての接続を解除する。
リンファが手順を確認し、ロイドが固定具を支え、トルヴァンが義肢を一本ずつ受け取る。ノアールは記録板を伏せた。これは公開する失敗記録ではない。エリスが残してよいと決めるまで、彼女の時間だった。
右腕。左腕。右脚。左脚。
接続が外れるたび、身体が軽くなり、同時に世界へ対する支えを失っていく。幼い頃、目覚めた時の白い天井が記憶の底から浮かんだ。
「途中でやめてもいい」とリンファが言った。
エリスはすぐには答えられなかった。怖くないふりをする必要がないと、ようやく知っていた。
「怖い。でも、続けたい」
最後の義脚が外れた。
二十歳の天才魔導技師は、世界を変える装置も、敵を倒す武器も持たず、仲間の腕の中に残った。
義肢を失うことが怖いのではない。動けない間に置いていかれることが怖かったのだと、エリスは理解した。
だが、誰も先へ行かなかった。
「運ぶぞ」とロイドが言う。
「接続部は私が診る」とリンファが続く。
「義肢は全部持った」とトルヴァンが示す。
「帰還経路も記録しました」とノアールが告げた。
エリスは目を閉じ、身体の重みを預けた。
「お願い。私を、中心まで連れていって」
それは敗北ではなかった。彼女が自分で選んだ、最も難しい前進だった。




