↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/60

私の義肢は、間違いだらけでできている

王都技術評議会で、エリスは自分の義肢を公開した。


壇上へ上がると、記者たちが息を呑む。濃紺の正装に身を包んだ彼女は、黙っていれば冷静な名家の令嬢にしか見えない。


その印象は、最初の設計図を広げた瞬間に消えた。


「右腕、初期型。出力を上げすぎて肩の接続部を三回壊しました。左腕、第二型。指先の感度を欲張って雨の日に勝手にじゃんけんを始めました。右脚、制動不足で市場の噴水へ突入。左脚――」


「失敗自慢の会ではありません」と司会が止める。


「重要な技術史よ!」


早口で反論しながら、エリスは現在の四肢を作業台へ置いた。表面には傷があり、部品の色も揃っていない。改修日と理由が、小さな刻印で残されている。


「私の義肢は、間違いだらけでできています」


会場が静まった。


「だから、今の私に合わせて変えられる。昨日の正解を固定しない。痛みが出たら出力を落とす。仕事が変われば指を変える。怖くなったら外す。必要なら、また着ける」


完全治療側の技師が問う。


「故障と痛みを美化するのですか」


「いいえ。減らせる苦痛は減らす。でも、変化できることまで欠陥とは呼ばない」


リンファが装着部の診療記録を、ノアールが改修履歴を示した。ロイドとトルヴァンは、本人以外でも手動停止と最低限の修理ができる構造を実演する。


エリス一人の天才性を証明する発表ではなかった。


最後に、彼女は自分の右手を再装着した。接続音のあと、指が一本ずつ動く。


「完成していない身体で、生きてはいけない理由はありません」


評議会は完全治療の停止を決めなかった。しかし、患者が治療記録と基準状態を閲覧する権利、第三者工房へ相談する権利を認めた。


小さな前進だった。


工房へ戻ると、新しい看板の案が届いていた。


《クロイツェル魔導工房――失敗作展示中》


「誰が出したの」


全員が視線を逸らした。


エリスは怒りながらも、その紙を捨てなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。