↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
37/60

善意で作られた檻

技術院の中央展示室には、人間の四肢を模した白い義肢が並んでいた。


継ぎ目がない。駆動音もない。使用者の生体魔力を読み、失う前の身体を再現する。カインゼルはそれを《完全再生肢》と呼んだ。


「命名が簡潔すぎるわ」


「そこが気になるのか」とロイドが小声で言う。


性能試験の数値は圧倒的だった。感覚、温度、触覚、筋力。エリスの義肢が何年もかけて近づこうとしたものを、白い四肢は最初から備えている。


カインゼルは、特級技師資格の復帰と研究主任の席を提示した。さらに、エリス自身へ完全再生肢を無償提供するという。


「君はもう、故障や調整に時間を奪われなくていい。元の身体へ戻れる」


「元の身体を、誰が決めたの」


「災害前の生体記録が残っている」


「十二年前の私ね。今の私ではない」


エリスが拒むと、カインゼルは悲しむような目をした。


「恐怖が判断を曇らせている。急いで答えなくていい」


その言葉で、展示室が檻に変わった。


選ばせるように見えて、正しい答えは最初から一つしかない。拒絶は判断ではなく症状として処理される。


「私は、いま答えたのよ」


カインゼルは理解しなかった。理解できないのではなく、拒否を有効な選択肢として認めていないのだ。


退出しようとした瞬間、展示室の扉が閉じた。安全検査が終わるまで開かないという自動制御だった。


エリスは白い扉を見上げ、ため息をつく。


「善意で閉まる扉ほど、解除機構が必要ね」


彼女は義指の先から工具を一本出した。


「《超平和的どこでも開く君・礼節型》」


「ただの解錠具だ」とノアール。


「礼節型なのよ」


数分後、四人は正面玄関から堂々と出た。その背後で、完全再生肢の一本がエリスの歩き方を正確に再現し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。