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師匠は、私を捨てていなかった

カインゼルが差し出した帳簿には、十年分の送付記録が残っていた。


希少合金、神経接続糸、白晶石の代替材、専門書、治療情報。名義はすべて別人だったが、最終承認者はカインゼルである。以前、工房へ届いた最高級部品も、その一つだった。


「捨てたのではなかった、と言いたいの?」


「君が技術院を離れても、生存と研究を支える責任がある」


「私に知らせずに?」


「知らせれば受け取らなかった」


あまりに迷いのない返答に、エリスは怒るより先に呆れた。


工房へ戻ると、彼女は送られた部品をすべて床へ並べた。トルヴァンが仕入れ記録と照合し、リンファが治療情報を分類する。ロイドは「返す」「買い取る」「証拠として保管」の札を用意した。


エリスは最高級の神経増幅器を持ち上げる。性能は見事だった。魔力損失は旧型の三分の一、発熱も少ない。


「この曲線……腹立たしいほど美しいわ。ここから共振を逃がしているのね。しかも端子を三層にして――」


話す速度が上がり、ノアールが「怒りながら設計を褒めている」と記録した。


「設計と人格は別評価よ!」


「便利な規則を覚えたな」とロイドが言う。


笑いが消えたあと、エリスは部品を保管箱へ戻した。


支援された事実は、監視されていた事実でもある。助けられたことはありがたい。だが、知らないところで人生を調整されるのは嫌だった。


彼女はカインゼルへ三つの箱を送った。返却品、代金を払って使う品、調査証拠として保管する品。


添えた手紙には一文だけ記した。


《私を助ける方法を、私に隠れて決めないで》


翌日、技術院から正式な招待状が届いた。

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