THE WAND'S ECHO
最新エピソード掲載日:2026/10/12
人間同士の争いが絶えない世界。人々は自らを守るために力を求め、やがてその力を他者を支配し、打ち倒すために使うようになった。そして、争いの果てに生まれたのが、杖を用いて奇跡を起こす「魔法」だった。
しかし、魔法には大きな代償があった。魔法使いは自らの寿命を削ることで、杖に宿る力を引き出す。通常なら七十年ほど生きられる人間も、魔法使いになれば二十年ほどしか生きられず、二十五歳を迎えた者は歴史上一人もいなかった。
それでも、人々は魔法を求め続けた。なぜなら、杖は単なる道具ではなかったからだ。
魔法使いが命を終えると、その想い、記憶、後悔、そして願いは杖に宿り、次の持ち主へと受け継がれる。杖は幾世代もの人間の意志を蓄積し、時には新たな持ち主を導き、時には過去の持ち主の願いを叶えるために力を貸す。こうして杖は家系の象徴となり、魔法を受け継ぐ貴族たちは、歴史と権力を独占していった。
四大魔法貴族の一つ、ラファエル家の跡取りである十二歳の少年、ルービリアス・ラファエル。彼は魔法学校への入学を前に、身の回りの世話をする召使いを探していた。そこで出会ったのが、ユリウス教を信じないという理由で、誰にも引き取られなかった十一歳の孤児、ヴィルツだった。
信仰も生まれも異なる二人の出会いは、やがて杖に宿る意志の謎へとつながっていく。受け継がれた願いは、本当に正しいのか。偉大な先祖の意志に従うことは、正義なのか。それとも、過去の過ちを繰り返すことなのか。
杖に宿る無数の人生と、魔法によって築かれた世界の真実。二人の少年は、歴史と伝統に覆われた世界の矛盾に立ち向かうことになる。
人は死んでも、意志は残る。では、その意志を受け継ぐ者には、何を選ぶ自由があるのだろうか。