↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
44/57

第44話 モブ、中ボスと対峙する

 鉄棒を持った男は大きく、声も大きい。

 しかも指示を出している。


 厄介だ。

 あれを残すと敵の動きがそろう。

 そろうと事故る。

 だが、まだ届かない。


 まず雑魚を減らす。


 奥の3人が左右に散った。

 囲もうとしている。


 それはよくない。


 俺は足元にあった軽い空樽を蹴る。

 樽が転がり、護衛たちの足元へ向かった。


「うわっ」


 1人が止まり、もう1人が避ける。

 その先には荷箱がある。


 詰まった。

 敵は勝手に細くなる。


 俺はそちらへ走る。

 ただし、走りすぎない。

 革の小盾は軽いが、殴る回数が多い。スタミナ管理は必要だ。


 先頭の護衛が斜めに剣を振る。

 小盾を合わせて弾き、その硬直に盾を叩き込む。


 ばしん。


 鼻。

 護衛が仰け反った。


 再現した。

 なら、次は顎。


 ドゴッ。


 落ちる。


 2人目が横から来る。

 これは受けず、低く短くローリング。

 剣を頭上へ抜かせ、起き上がりざまに盾を足へ当てる。


 ばしん。


 弱い。

 だが、膝なら崩れる。


 護衛が片膝をついた。

 そこへ顎。


 ドゴッ。


 倒れた。


 鼻は怯む。

 顎は落ちる。

 膝は崩れる。

 手は武器を落とす。


 確定ではない。

 だが、再現性はある。


 現実の人型は面倒だ。

 でも、こういうところは便利だ。


 残りは中ボスと――


「モブ!」


 ユーフェリアの声が飛ぶ。

 残った護衛が横道へ走っている。

 ソウゴたちの方だ。


 俺は投擲用の石を護衛の足元へ投げる。


 コツン。


 音に反応して、護衛が一瞬だけ止まった。

 その一瞬で鍛冶屋が前へ出る。


「おらよ」


 拳が入った。

 護衛が吹っ飛び、壁にぶつかって動かなくなる。


 鍛冶屋は鼻を鳴らした。


「俺の仕事場を荒らすからだ」


 いい。

 かなりいい。


 誤操作で敵対した時だけではない。

 味方ルートでも殴ってくれる鍛冶屋だ。

 かなり強い。


「鍛冶屋さん、本当にお強いですね……」


 ユーフェリアが少し引いている。


「炉の前に立つってのは、そういうことだ」


 そうなのか。

 そういうことかもしれない。


 これで残りは中ボス。

 鉄棒を持った大男で、太い腕に厚い革鎧。首には傷があり、顔には古い火傷の跡がある。


 これは中ボス。

 だが、あとから道中湧いてくるタイプの、雑魚寄りの中ボスだ。


 男が鉄棒を肩に担ぐ。


「小さい盾で、よく暴れたな」

「軽いからな」

「それで俺の棒を受ける気か?」

「受けない」

「賢いじゃねぇか」


 中ボスが笑う。


 鉄棒が振り上がる。

 重く、遅い。

 その代わり範囲が広い。


 この手の攻撃はパリィできない。

 なら避ける。

 そのために誘導し、硬直を取る。


 鉄棒が横薙ぎに来る。


 後ろには下がらない。

 そこにはソウゴたちがいる。

 下がれば巻き込む。


 なら、前へ。


 俺は鉄棒の内側へ向かって、低く短くローリングする。

 鉄棒が背中の上を通った。


 風が重い。


 当たれば死ぬ。

 本当に死ぬ。


 男の脇へ抜け、そのまま盾を胴へ叩き込む。


 ばしん。


 入った。

 だが、男は倒れない。


 やはり硬い。


 俺はすぐに離れる。

 欲張らない。


 鉄棒が戻り、そのまま縦に振り下ろされた。

 地面が砕け、破片が飛ぶ。


 小石より痛そうだ。


 俺は横へ歩く。

 走らない。

 スタミナを残す。


 男が俺を見る。

 目が怒っている。


 ターゲットが俺に固定された。

 これならソウゴたちは巻き込まれにくい。


「モブ、加勢を――」

「来るな。当たると死ぬ」


 ソウゴが足を止める。


 中ボスが踏み込んだ。

 今度は上段からの叩きつけ。


 避けるだけでは足りない。

 地面を砕かれれば、破片まで飛んでくる。


 俺は男ではなく、左にある樽へ石を投げる。


 コツン。


 男の視線が一瞬だけそちらへ動いた。

 踏み込みが半歩ずれ、叩きつける位置もずれる。


 俺は右へ抜ける。

 飛んでくる破片の方向もずれた。


 よし。

 音は人型にも効く。


 そのまま踏み込み、盾で膝を殴る。


 ばしん。

 もう1発。

 ばしん。


 男の膝がわずかに揺れた。


 効いている。

 だが、浅い。


 雑魚より体勢値が高い。

 膝を狙っても、すぐには崩れない。


 筋力2で、武器は革の小盾。

 相手は中ボスだ。


 すぐに崩れないのは当たり前だ。

 回数がいる。


 男が前蹴りを出す。

 近距離潰し。


 予想通り。

 俺は横に避ける。


 ここだ。


 膝へ盾を叩き込む。


 ばしん。

 ばしん。

 もう1発。


 ばしん。


「しつこいぞ!」


 男が怒鳴り、鉄棒を振り回す。


 これはダメだ。

 暴れに付き合うと死ぬ。


 俺は荷箱の陰へ逃げる。

 鉄棒が荷箱を砕き、木片が飛び散った。


 その向こうに積まれていた荷物の布がめくれる。


 青白い結晶。

 結晶亀の大盾。

 作りかけの小盾。

 鉱山結晶。


 そして。


 錆びた長剣。


 あった。


 俺の初期武器だ。


 ロウグは許せない。

 絶対に許せない。


 だが、今は回収できない。

 中ボスがいて、鉄棒がある。

 雑に突っ込めば死ぬ。


 それでも見えた。


 見えたなら、ルートはある。


 俺は革の小盾を握り直す。


 もう少しだ。

 まずこいつを倒す。


 そして、初期武器を取り返す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。