第二十五話 選ばれし者たち
第二十五話 選ばれし者たち
天正十二年、春。
徳川家康と羽柴秀吉の決戦――『小牧・長久手の戦い』の火蓋が切れ落とされようとしていた。
同盟を結んだ徳川からの要請に応え、丹波の地からも秀吉の側面を突くための遠征軍が出撃しようとしていた。
丹波の本丸の大広間。
朔太郎の前には、遠征メンバーの選抜に向け、張りつめた緊張感が漂っていた。
1 大人たちの覚醒
「殿。我々教員四十名、全員を足軽隊の末席に加えていただきたい」
前に進み出て深々と頭を下げたのは、教頭の男性であった。
かつて13話で突如戦国へ叩き落とされた際、恐怖で震えていた大人たちの姿は、そこにはなかった。
全員が黒塗りの当世具足を身に纏い、手にはずしりと重い長槍を握りしめている。
「……正気か?」
朔太郎が冷ややかな目を向けた(魅力五十)。
「足軽は戦場の最前線、真っ先に死ぬ肉の壁だぞ」
「承知の上です」
教頭が力強く眼光を見返した。
「あの日、二一〇名もの生徒と仲間を死なせたのは、我々大人の無能さゆえ。……もう二度と、生徒たちだけに死線をくぐらせはしない。我々が槍を持ち、盾となってあの子たちを守ります」
覚悟を決めた大人たちの眼差し。
朔太郎はしばし沈黙したあと、ふっと短く鼻を鳴らした。
「……うむ。教員足軽隊、第一陣に組み込む。死にたくなくば、俺の指示通りに槍を突け」
2 右腕(参謀)の捜索
教員たちの覚悟を見届けたあと、朔太郎は手元の軍事帳面(政務八十五)を繰りながら、低く呟いた。
「……三千の軍勢、そしてこの異界の兵器と知識。俺一人で差配するには、そろそろ限界だ」
朔太郎の頭脳(智謀八十)は完璧だが、現場の指揮、物資の計算、徳川や豪商との外交交渉、さらに五百名の高校生のメンタルケアまで、一人で処理するには仕事量が膨大すぎたのだ。
「俺の意図を正確に汲み取り、我が『右腕』として陣を仕切れる者を、学生の中から選抜する」
「右腕……参謀(軍師)ってことですか!?」
側にいたバレー部のさくらと、剣道部の千佳子が顔を見合わせた。
「そうだ。俺の指示を論理的に理解し、異界の若者どもへ伝達できる頭脳。……特進科、あるいは生徒会の中で、最も勘定と大局観に長けた者を連れてまいれ」
朔太郎の「右腕」という重責。
それは、この丹波の運命を左右する「第二の指揮官」の発掘を意味していた。
3 遠征ドリームチームの結成
かくして、対秀吉戦に向けた「小牧・長久手・丹波遠征軍」の布陣が完成した。
・先鋒・白兵隊: 剣道部・千佳子が率いる足軽隊&教員足軽隊四十名。
・機動騎馬隊: 馬術部が率いる丹波騎馬隊二〇〇。
・遠射・狙撃隊: アーチェリー部&弓道部の一〇〇。
・投擲爆撃隊: 野球部・三十名(炮烙玉装備)。
・野戦築城隊: 土木科・一〇〇名(突貫要塞構築)。
・補給・衛生隊: さくら率いる家庭科部&バレー部(兵糧・救護)。
・主首護衛: 忍者犬・パグの丸。
丹波・丹後の防衛に一千を残し、出陣するのは厳選された精鋭「二千」。
「ぶひっ!」
朔太郎の膝の上で、丸が頼もしく(?)鼻を鳴らした。
4 出陣の刻
「……全員、揃ったな」
本丸の広場に結集した二千の精鋭と、選抜された現代の高校生たち。
長槍を手に馬上に跨がった朔太郎は、冷ややかに、しかし全身から溢れ出る圧倒的な威圧感(統率九十)で全軍を見渡した。
「向かうは小牧・長久手。天下人・豊臣秀吉の喉元だ。……我が陣の理と牙、天下に見せつけてやるぞ」
「「「おーっ!!」」」
地響きのような雄叫びが、丹波の山々を揺らした。
落ちこぼれ忍び・柘植朔太郎と、覚醒した高校生たち。
ついに「右腕候補」を携えた最強の異次元軍団が、歴史の最大決戦・小牧・長久手の戦場へ向けて進軍を開始したのである!




