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エピローグ

【補足事項① リズという少女について】


依頼人リズは、表向きは王宮関係者の娘として扱われていた。

実父実母は戸籍上のみ存在。

エテルナ国では、守り神の生まれ変わり。

巫女として大事に、育てられてきた。

しかしこれらは恐らく、エテルナ国民の眷属化に伴う、無意識下の庇護(ひご)と想定される。

実際はリコリスという名の、数百年生きた大魔族。

彼女に関する詳細は、別途巻末のAPPENDIX(アペンディックス)-1参照。


【補足事項② 石白化症の原因について】


症状の身体硬直及び記憶欠落は、何代にも(わた)るエテルナ国民への眷属化の副作用と推定。

身体強化と耐性補助を主目的としていた、上位種からの力の影響は、長期連続稼働(かどう)による不具合を引き起こしていた。

影響元からの供給を停止したことで、以降同症状の発生は確認されていない。

眷属化という仕組み自体は、魔物という知恵を持たぬ者を支配下に置くというロジックだけだと考えられてきたが、

新たに今回の事例を取り扱い、再定義した情報を添付(てんぷ)しておく(巻末APPENDIX-2参照)

尚、今回ベラドンナ死後も魔物の眷属化が解かれなかったのは、傍にいたリコリスがベラドンナと共鳴し、権能(けんのう)を引き継いだものと考察。


【補足事項③ ベラドンナという魔族について】


ベラドンナという魔族の女が、多数の魔物を使役してエテルナ国を襲撃したのは、同種族であるリコリスへの執着であると推定。

リコリスが魔族でありながら人間社会に溶け込み、人々を守護するような立場であったことを許容できなかった可能性が大。

リコリスに対する数々の発言からも、それは明白である。

発言内容は全てヒアリングして記録済みであるが、その中にはリコリスを仲間に引き込もうとしていた(ふし)もあり、バックボーンが無いか調査を検討。

調査はサザンドールと合同で行うものとし、スケジュールは現在協議中。


【補足事項④ ■■】

〇〇××……


俺はパーソナル・ターミナルを操作しながら、宙に表示させたパワーポイントで報告書を作成していた。

今はアステリスク国に戻る、馬車の中。

最初はあれだけ苦戦した山道の揺れも、今では慣れたものだった。


「こんなに、あけすけに書いちゃっていいの?」


俺の横で窓の外を眺めていたフネが、パワーポイントの中身に目を通し、心配そうに首を傾げる。

相棒なりにきちんと考えているようで、俺は思わず感心した。


「この報告書は、アステリスク支部だけで保管する用の社外秘だ。ギルド本部向けは、ノーマンさんと相談してカバーストーリーを別に用意している」

「……?そっか。かばーだよね。じゃあ、安心だ!」


フネが満面の笑みで頷く。

どうやら細かい話までは、理解していないらしい。

俺の感心した気持ちを、返して欲しい。

フネは再び窓から身を乗り出すと、遠くに離れていくエテルナの国の方角に顔を向けた。

吹き(すさ)ぶ風に(あお)られ、彼女の黒髪が大きく(なび)く。


「またすぐ戻ってくるんでしょ?リコりんと別れるの、かなしー」


可愛い綽名(あだな)を付けられた大魔族――リコりん。

フネが言うように、俺たちがアステリスク国に戻るのは一時のことだ。

次に向かうのは、サザンドール連邦国家の中の一つ、メルカティス。

そこで今後のエテルナ国との交易と、国家を持続させるための交渉の場に臨む予定だった。

もちろん交渉の場には、リコリスも来る。

それでも、彼女のいない馬車の中には、僅かな物足りなさを感じた。


「ちょっとの辛抱だ。我慢しろ」

「なんだか、リコりんはもう他人って気がしないのよねー」


大きく馬車が跳ねた。

前方で馬がいななく声と、トビーの鞭を振るう音がキャビンに響く。

フネが何気なく呟いた言葉――

結局、彼女が視た夢は、リコリスに繋がっていたものだったのか。

最近は夢の話を全くしなくなった。


「それにしても、一つだけまだ分かってないことがあるんだよな」

「なーに?」

「リコリスが戦いの中、傷つきエテルナの国に流れ着いたのは分かる。人々が差別なく彼女を受け入れたのも理解した。しかし、たったそれだけのことで、彼女はなぜ数百年もこの土地に固執したのだろうか?」


俺は腕を組んで、唯一整理しきれなかったその接続点に思いを馳せる。

悩んではみたものの、答えは出ない。

フネが俺の身体にぴったりと身を寄せて、意地悪そうな顔で口に手をあてて笑った。


「ニシシ。それが分からないから、オサムは鈍だって言われるのよ!」


意味不明なことを告げられる。

俺は車内の天井を見上げると、肩をすくめて、次のサザンドールとの交渉事に思考を向けた。

分からないことを、これ以上時間をかけても仕方がない。

その時、俺とフネの間で眠っていたモフモフ生物が、突然起き上がって俺に通知する。


「オサム様。異性の感受性レベル、マイナス百と断定!」

「ピットちゃん、せいかい!」


一人と一匹の(かしま)しい笑い声。

俺はここ最近で一番の徒労感を覚えながら、大きく伸びをしたのだった。





異世界PMは不具合を許さない ~傀儡国家と孤独な姫を改修する~


第一部に引き続き、ここまでお付き合い頂いた方々、本当にありがとうございます。

面白く読んでもらおうと、一生懸命に書いてみましたが、中々上手く書けない部分も出てきて、非常に苦戦した二作目となりました。

それでも、イセマネ第二弾として描きたいことは描けた気はします。

オサムとフネの次作にも、是非お付き合い頂けると幸いです。


本当にありがとうございました!


第三部はこちらから


異世界PMは不具合を許さない 〜連邦国家の神託システムを改修する〜

https://ncode.syosetu.com/n3397mp/



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