第2話 嵐を呼ぶ魔術師と呪い
(自称)アルマートのライバル登場。
準備を整え、国境沿いに着陸したグラジオスから降りる。
ふいに空中を見て眉をひそめるアルマート。
「んー、結界弱まってるな。補強しておくかな?」
同じく空中を見たイジュンが目を細める。
「結界だよな?弱々しいな。いつ魔物に破られるか分からんぞ」
すると、ゴウゴウと音がして遠くに嵐が発生する。
「えっ何、嵐?なんで」
オトハが驚き、アルマートがため息をつく。
「やっぱりこうなる。
ああこれ、僕が来るといつもこうなんで慣れてください」
「どう言う事?」
レンが尋ねる。
「あ、嵐の近くに人が」
リュカがあそこ、と手を示す。
「視力良いですね!あの人が発生させた嵐です。
いつもより凄いんだけどー!?抑えてくれないかな?迷惑!!あと魔力の無駄遣い!」
アルマートが拡声の魔術を使い、声を響かせる。すると叫び声が風に乗って届く。
「何よ!偉そうに!分かっているわよそんな事!こっちは貴方に頼るのが癪なのっ!」
腰より上の少し巻き毛の金髪に、蒼と翠のオッドアイの瞳の女性が肩を怒らせながら近づいてくる。
魔力を制御した為嵐が弱くなり、アルマートの元に来た時には収まっていた。
「私の力じゃ聖女様を救えない。それが腹立たしいのよ!今も苦しんでる!
女神様の声も聞き取りにくいし!あんたのライバルとして失格ね。
お見苦しい所をお見せしまして申し訳ございません。
スヴェニ聖教国 魔術師団長のメルーナ・シャルヴァンです」
ターニャに向き直ると礼をとるメルーナ。
「DSEA本部所属【ガーディアン】グラジオス艦長 ターニャ・カネシロ大佐です」
敬礼するターニャ。
「この度の協力感謝申し上げます。教皇猊下から案内を仰せつかりました。皆様こちらへ」
手を示した所に素早く集まる。
左手を開くと”グリモワール”をが現われ、”媒介”であるペンダントが出現する。
メルーナが詠唱を開始する。
「彼方より此方へと 我らを運べ 転移:トランスファー」
足下に陣が展開され、次の瞬間立派な扉の前に移動する。
「この扉の先に猊下がおられます。教皇猊下!本部の方々とヴァータイト大尉をお連れしました」
「入れ!」と男の声。扉が左右に開く。
歩き出すメルーナに大人しくついて行く。
階段の上の立派な椅子には紫の肩につかない髪と瞳の男性。
こちらから見て左隣には、腰より下の長髪ブロンドに紅の瞳の女性。
右側にはマウスグレーの髪を刈り上げ、チョビ髭がある男性。腰に剣を佩いている。
メルーナは歩いて行くと剣を佩いた男性の右隣に立つ。
「よく来てくれた。
私はスヴェニ聖教国 教皇サミュエル・リエラ。
右にいるのは政務補佐のレオンティーナ・ネッケル。
左は近衛聖騎士団長のアラン・レスターだ」
女性が頭を下げ男性は騎士の礼をし、ターニャ達は敬礼をする。
「DSEA本部所属【ガーディアン】グラジオス艦長 ターニャ・カネシロ大佐です」
「ヴァータイト大尉は久しいな。見習いの時以来か。忙しそうだな」
「お久しゅうございます猊下。忙しいですが、やりがいがあります」
良いことだと頷くサミュエル。
「早速だが、ヴァータイト大尉には聖女を視てもらいたい。
カネシロ大佐達には現地のDSEAと我々が得た情報、ヴァータイト大尉が視た元に捜索をしてほしい」
「聖女がいる神殿までの案内は、シャルヴァン師団長がする。ヴァータイト大尉、どうか聖女を頼む」
「了解しました。
《疾風の魔導師》の2つ名とファンクォーツの誇り、DSEA所属の魔導師として必ず」
それを聞いてかける名が多いな、とリュカが言い。
色々肩書きを持っていると大変だがな、とイジュンが言った。
国と組織を背負っているから大変ねとレンが言い、大尉なら大丈夫そうだけれどとオトハは言った。
ターニャは部下達の言葉を聞き流しながら静かにたたずんでいた。
メルーナは自分の無力さを悔しみ唇を強く噛んでいた。
「シャルヴァン師団長、案内を。
あまり自分を責めるな。私も己の無力さを責めているのだから」
ぼそりと呟かれた言葉にメルーナが目を見張る。
「少しは肩の力も抜け」
アランも言う。
「すみません」
小さな声で礼を言うメルーナ。
「現地職員が収集した情報は、神殿ににいる【センチュリオン】の方が説明します。我々が得た情報はこちらです」
そう言うと書類を艦長に渡すレオンティーナ。
「ありがとうございます。我々も、全力を尽くします」
「よろしく頼む。我々も全力で支援する」
皆が敬礼をする。メルーナが降りて手を示す。
「聖女様は神殿におられます。案内いたします。猊下、御前失礼いたします」
早歩きになるメルーナについて行く。近道を突っ切り神殿へ。
人がせわしなく歩き回っているが、メルーナ達を見ると道を空ける。
建物の奥の扉を開くと、広い部屋に聖女が横になっている。
白い髪に、水色の瞳の女性。熱があるのか顔が赤く、息も荒い。首元に黒いアザが見える。
そのそばに看護の女性がおり、メルーナに気づくと数歩下がる。
「結界の聖女 フロウ・ド・ルーゼン様です」
「これはまた。アザは分かりやすく見えてるだけ。黒い縄が呪いだね。生き物みたいに動いてる」
一目見てアルマートがそう言う。
「黒い縄?がうっすらと。それにそこから嫌な空気が部屋中に漂っているな」
イジュンが言う。
そして「払いたまえ、清めたまえ」と呟き、カバンから榊の枝を取り出しバサバサと音を立てて左右に振る。
部屋に充満していた嫌な空気が瞬く間に払われ、驚くメルーナ。
「もしかして、惑星ホヅミのご出身で?」
「ああ、一応魔法武術の師範代だ」
「凄い。感謝します」
「いいえ、これくらいは」
そこにレンが口を挟む。
「聖女様はいつから呪いに?」
「呪われたのは1週間前になります」
いつもの通り結界強化の儀式を執り行おうとした所、突然倒れて。
それから女神様に祈りが届きにくくなり、聖女様方や”神聖魔術”も発動しにくくなりました。
私達も呪いを解こうとしましたが、強力で。呪いをかけた者の正体も分からず、返せないので困り果てています。
浄化の聖女様でも術がかかりにくくなり浄化ができず。
今の所瘴気を払う事しかできていません。
「聖女様は何人かいると聞きました。ご無事なのですか?」
オトハが聞く。
「はい、呪いは結界の聖女様だけに現れていて、他の2人の聖女様には現れていません。
ただ”神聖魔術”がいつもより発動しにくいと。
それを察知した悪意ある魔物が活発になり、
魔術師団や近衛聖騎士団が対応に追われて、周辺国とDSEAに協力を求めました」
「あまり騎士を見なかったな。皆出払っているから?」
そういえば、とリュカが言う。
「最低限の兵と魔術師だけ残しています。近衛聖騎士団長と私は猊下達の護衛として残っています。
ヴァータイト大尉、どうですか?」
呪いの解析をしていたアルマートにメルーナが聞く。
「呪いを返す事も可能だけど。かけたモノのが僕より強いと失敗して帰ってきちゃうし。
正体を見極めてからじゃないと。
それにこれ、ナニカの力で増幅されてるな?」
神殿は、パルテノン神殿みたいなイメージ。




