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前世の仲間ともう一度魔王を倒しに行く  作者: 雨森 澄
第1章

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第7話 ずれた連携

 竜は明らかに怒っていた。


 黒い翼が大きく広がる。


 熱を含んだ風が吹き荒れ、通りに積もっていた灰が一気に舞い上がった。崩れた建物の火が煽られ、赤い火の粉が夜みたいに空へ散っていく。


 咆哮。


 鼓膜が震えた。


 近くの窓ガラスが音を立てて割れる。


 それでも、リナは止まらなかった。


 竜が前脚を振り下ろす。


 リナは横へ流れるように避け、その勢いのまま懐へ入る。


 剣を振る。


 だが、届かない。


 また、ほんの少しだけ足りない。


「……っ」


 リナが小さく舌打ちする。


 距離感が噛み合わない。


 頭では届くはずなのに、今の体だとわずかに届かない。


 そのズレだけが、ずっと残る。


 竜の尾が唸りを上げて迫る。


 リナは地面を蹴った。


 身体を低く倒し、そのまま滑るように抜ける。


 熱風が背中をかすめた。


 着地。


 すぐ踏み込む。


 止まらない。


 セイルはその動きを目で追っていた。


(違う)


 胸の奥に引っかかる。


 ただ強いわけじゃない。


 動きが速いだけでもない。


 何かが噛み合っていない。


 でも、戦えている。


 むしろ、少しずつ竜を押し始めている。


 理由が分からなかった。


 それでも。


 手だけは動く。


 火球を作る。


 狙うのは傷じゃない。


 竜の視界。


 呼吸。


 爪が動く瞬間。


 ほんの少しだけ邪魔をする位置へ、魔法を差し込む。


 火球が弾ける。


 竜の目線が揺れる。


 そこへリナが入る。


 剣が鱗を擦った。


 硬い音。


 火花。


 浅い。


 でも、確かに傷は増えている。


 竜が低く唸った。


 巨大な首が振られる。


 その勢いだけで空気が押し潰され、セイルは思わず息を詰めた。


「危な――」


 言い切る前に、リナが飛ぶ。


 瓦礫を蹴って高く跳び、竜の頭上を抜ける。


 着地。


 振り向きざまに剣を払う。


 今度は届いた。


 鱗が砕ける。


 赤黒い血が飛び散った。


 竜が大きくのけぞる。


 その瞬間。


 セイルの胸が強く鳴った。


(今だ)


 理屈じゃない。


 考えるより先に魔法を放っていた。


 火球が竜の目の前で炸裂する。


 眩い火花。


 竜が怯む。


 そこへ、リナがさらに踏み込んだ。


 剣が深く入る。


 鈍い感触。


 竜の咆哮が空を震わせた。


 熱風が吹き荒れ、近くの壁が崩れ落ちる。


 それでも。


 二人とも止まらなかった。


 ただ、前へ出続けていた。

    読んでいただきありがとうございます。

    少しずつ更新していきます。

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