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前世の仲間ともう一度魔王を倒しに行く  作者: 雨森 澄
第2章

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第30話 こぼれた名前

 川沿いの道を歩きながら、リナは何となく隣を見る。


 セイルは相変わらずだった。


 聞かれたことには答える。


 でも、自分から話すことは少ない。


 川の流れが岸の草を揺らし、水の匂いが風に混じって届いた。



「その旅の仲間って、どんな人だったの?」


 リナが聞く。


 セイルは少し考えた。


「……皆さん、変わった方々でした」


「変わってたんだ」


「はい」


 少し間。


「今考えると、どうして上手くいっていたのか分かりません」


「全員、性格はばらばらでしたから」


「でも、不思議と噛み合っていました」


 その言い方に、どこか懐かしさが混じっていた。



「楽しそう」


 リナが言う。


 セイルは少しだけ目を細めた。


「……そうですね」


 短い返事だった。


 でも、それだけで十分だった。


 きっと嫌な思い出ではないのだろう。



 しばらく歩く。


 川幅が少し広くなっていた。流れが緩やかになった分、水面が穏やかに光を映している。岸辺の石が水に磨かれて丸く白く、踏み込めばひんやりと冷たそうだった。遠くで水鳥が鳴き、その声が川面を渡って届いた。


「もう会えないの?」


 何となく聞く。


 セイルの足がわずかに止まりそうになる。


 それでも歩きながら答えた。


「……はい」


 静かな声だった。


「そうなんだ」


 リナもそれ以上は聞かなかった。



 少し沈黙が続く。


 川の音だけが穏やかに流れていた。鳥の声が遠くから聞こえ、風が水面を渡って草を揺らす。


 その時だった。


「……リナス」


 小さな声だった。


 思わず漏れたみたいに。


 リナが横を見る。


「えっ?」


 セイルがはっとする。


「……いえ、なんでもありません」


 少し間。


 リナは首をかしげた。


 川の音が続いている。風が吹いて、水面がさざ波を立てた。


 今の名前。


 聞き間違いだろうか。


 そんなことを考えたが、セイルはもう前を向いて歩いている。


 結局、リナは何も聞かなかった。


 ただ、その名前だけが、川の音に混じってしばらく耳の奥に残っていた。

    読んでいただきありがとうございます。

    少しずつ更新していきます。

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