表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世の仲間ともう一度魔王を倒しに行く  作者: 雨森 澄
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
30/35

第28話 重なる影

 川は静かだった。


 夕方の光が、水面を金色に染めている。流れは緩やかで、岸辺の石を薄く濡らしながらゆっくりと下っていった。時折吹く風が水面を撫でると、金色の光がさざ波のように揺れて散った。対岸の木々が西日を受けて赤みがかり、その影が川面に長く伸びている。


 リナは川辺へしゃがみ込み、指先を水へ入れた。


「冷た」


 思わず声が漏れる。


 ひんやりとした感触が腕まで伝わった。



 少し離れた場所では、セイルが座っていた。


 手のひらを見つめている。


 指先に小さな火が灯る。


 すぐに消える。


 また灯して、また消した。


 川の流れる音だけが、静かに続いていた。


 何かを確かめるみたいだった。



 リナはぼんやり思う。


 最近、戦いのあとによく見る光景だった。


 魔力の調子でも見ているのか。


 それとも別の何かか。


 分からない。



 ふとした瞬間。


 セイルの仕草が誰かに重なることがあった。


 くだらない偶然だと思う。


 思うのに。


 最近、その偶然が少し多い。



 戦いの時だけだ。


 魔法を撃つタイミング。


 周囲を見る目。


 何を優先するかの判断。


 そういうところが、時々、昔の仲間を思い出させる。


 でも。


 彼は、こんなに自信のない人じゃなかった。



「ねえ」


 リナが声を掛ける。


 小さな火が消えた。セイルが顔を上げる。


「……はい」


「昨日さ」


 少し間。


「昔ならもっとできたって言ってたよね」


 セイルの肩がわずかに止まった。


 川面が風に揺れ、金色の光が細かく砕けた。


「……言いましたね」


「あれ」


 リナは川を見ながら続ける。


「前に旅したことあるって言ってたのと関係ある?」


 セイルは少しだけ視線を落とした。



「……あります」


 短い返事だった。



 リナは少しだけ目を細める。


「そっか」


 それ以上は聞かなかった。


 西日がさらに傾き、川面の金色が少しずつ橙色へ変わっていく。対岸の木々の影が伸びて、水面の半分を暗く塗り替えていった。


 リナは流れる川を眺めながら考える。


 ――昔ならもっとできた。


 それは、どういう意味なのだろう。


 川の音だけが、静かに続いていた。

    読んでいただきありがとうございます。

    少しずつ更新していきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ