第27話 噛み合った
翌日。
空はよく晴れていた。
昨日までの湿った森の空気が嘘みたいに、風が軽く乾いている。道は緩やかな坂になっていて、両側の草が朝の光を受けて柔らかく輝いていた。遠くの木立が風に揺れ、葉の裏が白く翻るたびに光がちらちらと散った。
二人は並んで歩いていた。
少し前までなら、不自然だった距離。
でも今は、並んでいることの方が自然だった。
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「眠そう」
リナが横を見ながら言う。
「……少しだけ」
「夜更かしするから」
セイルは何も言わなかった。
代わりに少しだけ視線を逸らす。
リナが小さく笑う。
「ちゃんと寝ないと倒れるよ」
「ちゃんと寝てます」
「本当に?」
「先に寝てるからご存知ないでしょうけど」
「先に寝るけど……」
軽いやり取りだった。
でも、少し前より自然だった。
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坂を登り切ったところで、道が少し平らになった。
その瞬間だった。
草むらが揺れる。
二人とも、ほとんど同時に動いていた。
リナが踏み込む。セイルの火球が横を焼く。獣が避ける。その先へ、剣。深く入る。短い悲鳴。
静けさが戻った。
風が草を揺らしている。
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リナは剣を下ろしたまま、小さく息を吐いた。
「……今の」
少しだけ目を見開いている。
「普通に動けたね」
セイルは答えなかった。
ただ、自分の手を見る。
考えていなかった。
リナがどこへ行くか、動く前から分かっていた。
合わせようとしていなかったのに、合っていた。
不思議だった。
でも。
なぜか、少し懐かしい気がした。
「ねえ」
リナがまた口を開く。
「……はい」
「なんか、戦ってる時だけ変だよね」
朝の光の中で、草が静かに揺れていた。
「初めてじゃないみたい」
セイルは少しだけ視線を落とした。
でも、その沈黙は否定ではなかった。
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また歩き出す。
今度は、最初から歩幅が揃っていた。
坂の向こうに続く道が、朝の光の中へまっすぐ伸びている。風が二人の間を抜けていった。
二人とも、そのことには触れなかった。
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