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前世の仲間ともう一度魔王を倒しに行く  作者: 雨森 澄
第2章

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第21話 森の奥

 奥へ進むほど、森は暗くなっていった。


 木々の幹が太くなり、枝が頭上で絡み合って空を塞いでいる。昼なのに薄暗く、地面には苔が厚く積もっていた。踏みしめるたびにじわりと水分が滲み出し、湿った冷たさが足の裏から這い上がってくる。


 鳥の声がない。


 虫の音もない。


 聞こえるのは、二人の足音だけだった。


「……静かすぎる」


 リナが小さく言う。


「はい」


 セイルも声を潜めた。


 視線だけが忙しく動いている。



 少し進んだところで、地面が変わった。


 土が黒く変色している。草も枯れていた。根元から腐ったように萎れ、触れれば崩れそうなほど干からびている。木の幹にも黒い染みが広がっていて、樹皮がぼろぼろと剥がれ落ちていた。


「なにこれ」


 リナがしゃがみ込む。


「……分かりません。でも、普通じゃないです」


 セイルは周囲を見回しながら答える。


 空気が違う。


 さっきまでとは明らかに質が変わっていた。湿った土の匂いの奥に、腐った何かの臭いが混じっている。


「行ける?」


 リナが訊く。


「……行きましょう」



 その直後だった。


 茂みが大きく揺れた。


 一体目が飛び出す。さっきの獣より一回り大きい。黒い毛並みに泥が混じり、牙の根元が黒ずんでいた。


 すぐ後ろから、二体目。


 リナは迷わず前へ出た。


 一体目が低く跳ぶ。剣が走る。手応えがある。だが、深くない。


 硬い。


「っ、さっきより全然」


 獣が体勢を立て直す。速い。


 二体目が横へ回り込む。


「左です」


 セイルが声を出すより先に手が動いていた。火球が二体目の進路を焼く。獣が怯む。その隙へリナが踏み込んだ。


 剣が毛皮の隙間へ入る。赤黒い血が飛んだ。


 一体目が咆哮する。地面が震えるような低い音だった。枯れた葉がはらはらと落ちてくる。


 リナは素早く距離を取る。


 息が少し荒い。


「これ、もう一体いたら厳しいね」


 セイルは周囲を確かめる。


 気配は二体だけだった。


「……今は、これだけです」


「じゃあいける」


 リナが踏み込む。


 セイルは視線を一体目と二体目の間で素早く動かす。どちらが先に来るか。どこへ火球を撃てばリナの剣が届くか。


 一体目が地面を蹴った。


 火球を放つ。顔の横で弾ける。獣の動きがぶれる。


 そこへ、リナが深く踏み込んだ。


 剣が今度は深く入る。獣が大きくのけぞった。


 二体目が隙を突いて横へ回り込む。


「右!」


 リナはもう動いていた。振り返りざまに剣を払う。鈍い感触。二体目が地面へ転がった。


 静けさが戻る。


 枯れた葉が、ゆっくりと二人の足元へ落ちてきた。



 リナは剣を下ろし、大きく息を吐いた。


「倒した」


「……はい」


 セイルも息を整える。


 手が少し震えていた。


 森の奥はまだ暗い。


 腐った臭いも消えていない。


 それでも、さっきまで感じていた圧迫感だけは薄れていた。


「……なくなった?」


 リナが奥を見る。


 セイルも静かに頷く。


「はい」


「じゃあ帰ろう」

    読んでいただきありがとうございます。

    少しずつ更新していきます。

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