表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世の仲間ともう一度魔王を倒しに行く  作者: 雨森 澄
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/35

第18話 眠れない夜

 夜は静かだった。


 宿の外では風が鳴っている。窓の隙間から入る冷たい空気が、部屋の薄いカーテンをわずかに揺らしていた。遠くで犬が一声鳴いて、それきり静かになった。


 リナは目を開ける。


 暗い。


 小さな部屋だった。


 城の寝室とは比べものにならないくらい狭い。天井の木目が、窓から差し込む月明かりに薄く浮かび上がっている。


 でも、不思議と嫌な感じはしなかった。


 しばらくぼんやり天井を見る。


 それから、ふと気づいた。


 廊下の向こうで、小さく床が鳴った。



 部屋を出る。


 宿の廊下には、もう灯りがほとんど残っていなかった。


 階下から漏れる橙色の灯りだけが、床を薄く照らしている。どこかの部屋からいびきが聞こえ、風が吹くたびに宿の古い壁がかすかに軋んだ。


 廊下の窓の前に、セイルが立っていた。


 ぼんやり外を眺めている。


 窓の外には、夜の町が見えた。


 家々の灯りはほとんど消えていて、石畳が月明かりを受けて鈍く光っている。遠くで犬の鳴き声だけが聞こえていた。


「寝ないの?」


 リナが声をかける。


 セイルが肩を揺らした。


 少し驚いた顔で振り返る。


「……リナ様」


「眠れない?」


 セイルは少し黙った。


「はい……」


 夜風が廊下へ入り込む。


 少し冷たい。


「怖い?」


 不意に、リナが訊く。


 セイルはすぐには答えなかった。


 窓の外を見る。


 静かな町。


 暗い街道。


 その先へ続いていく、知らない場所。


「……分からないです」


 小さい声だった。


「急に、色々変わったので」


 リナは黙って聞いていた。


「本当なら、村から出ることもなかったと思いますし」


 廊下の端で、風が小さく唸った。宿の壁が、またかすかに軋む。


「でも」


 リナが言う。


「旅って、ちょっと楽しくない?」


 セイルは少しだけ目を瞬かせる。


「……楽しい、ですか?」


「うん」


 リナは窓の外を見る。


 月明かりの中で、石畳がひっそりと光っていた。


「知らない場所いっぱいあるし、美味しいものもいっぱい知れるし」


 少しだけ間が落ちる。


「……今日のパン、美味しかったです」


 セイルが小さく言った。


 リナが笑う。


「でしょ」


 夜風が静かに吹き抜ける。


 不思議だった。


まだ知り合って数日しか経っていない。


それなのに、こうして話していると少しだけ落ち着いた。


理由は分からない。


でも、その感覚は嫌じゃなかった。


 窓の外では、夜の町が静かに眠っている。町の輪郭が月明かりの中にぼんやりと浮かび、煙突の先からかすかに煙が立ち上っていた。


 旅はまだ、始まったばかりだった。

    読んでいただきありがとうございます。

    少しずつ更新していきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ