表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世の仲間ともう一度魔王を倒しに行く  作者: 雨森 澄
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/35

第12話 王の決定

 王の間は、先ほどよりも人が増えていた。


 家臣たちだけではない。鎧を着た兵士も何人か控えている。城下の被害を知らせに来た者たちだろう。誰もが疲れた顔をしていたが、リナとセイルが入ってくると、その視線だけは一斉に上がった。


 また見られている。


 セイルは、王の間に入った瞬間そう感じた。


 さっきから、ずっと見られている。


 竜を倒した者として。


 勇者として。


 そうではないのに。


 王は玉座に座ったまま、二人を見下ろしていた。表情は険しい。けれど、その目には先ほどとは違うものがあった。



「竜は討たれた」


 王の声が落ちる。


 低く、重い。


「被害は出たが、城下は守られた」


 家臣たちの空気がわずかに緩む。


 安堵と、興奮と。


 色々な感情が混ざっていた。


「その功績は大きい」


 セイルは視線を下げる。


 違う。


 そう言いたい。


 でも、どこから否定すればいいのか分からなかった。


「勇者セイル」


「……違います」


 反射みたいに言葉が出る。


 王の声に被さる。


 王の間が静まり返った。


 セイルは少し遅れて、自分が王の言葉を遮ったことに気づく。


「……すみません」


「よい」


 王は静かに言った。


 怒ってはいない。


 それが逆に逃げ場をなくしていた。


「そなたが何を思おうと、剣はそなたを選んだ」


「……」


「そして、竜を討った」


 また、その言葉。


 セイルの指先がわずかに強張る。


「僕は……」


 否定しようとして、止まる。


 自分一人では何もできなかった。


 でも。


 完全に何もしていない、とも言い切れなかった。


 あの戦いの感覚が、まだ手の中に残っている。


 火球を撃った瞬間。


 リナがそこへ踏み込んだ瞬間。


 偶然みたいに噛み合った、あの感覚。


 王は続ける。


「勇者セイル、並びに王女リナ」


 その名が並ぶ。


 リナは黙って聞いていた。


「そなたらに命ずる」


 空気が張る。


「魔王を討て」


 静かな声だった。


 けれど、その場にいる誰よりも重かった。



 少しだけ沈黙が落ちる。


 セイルは何も言えない。


 断ったはずだった。


 自分には無理だと、

何度も言った。


 なのに、

話は止まらない。


 まるで、

聖剣を抜いた瞬間から、

全部決まっていたみたいだった。


「……僕は、勇者なんかじゃありません」


 ようやく絞り出す。


 王は静かにセイルを見る。


「そう思う理由を聞こう」


「……竜を倒したのも、僕一人じゃないです」


 逃げ道がない。


 セイルは言葉を失った。


 隣で、リナが口を開く。


「行くよ」


 軽い。


 散歩にでも行くみたいな言い方だった。


「リナ様」


「その“様”いらない」


 リナは前を向いたまま言う。


 セイルは困った顔をした。


「……いや、それは無理です」


「なんで?」


「なんででもです」


「めんどくさいね」


 家臣の一人が小さく咳払いをした。


 たぶん笑いそうになったのを誤魔化したのだと思う。


 王は小さく息を吐く。


 それから、静かに告げた。


「準備が整い次第、出立せよ」


 それは確認ではなく、決定だった。


 セイルはゆっくり視線を落とす。


 断れない。


 そのことだけが、嫌になるほど分かった。


 隣で、リナだけが少し楽しそうだった。


「旅かぁ」


 小さく呟く。


 王の間の重さとは、まるで別の場所にいるみたいだった。



    読んでいただきありがとうございます。

    少しずつ更新していきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ