仕組まれた死
王太子の訃報が届いたのは、リュシオラが発ってから、半年ほど経った頃だった。
国境の任地で、長らく患っていた病が、ついに篤くなったという。表向きは、それだけの話だった。長く飲ませ続けてきた毒が、ようやく、その役目を終えただけのことだった。
これで、王太子という不安の種は消えた。それでも、玉座を脅かす芽が、完全に絶えたわけではない。リディエンヌは、まだ生きている。
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時を同じくして、戦略室から、短い言伝てが届いた。
『計画、最終段階に移す』
その意味を、私は、すぐに理解した。リンドヴェールで動くのは、グラウ商会の名を借りた、ザイデルンの手の者だった。離宮を凶刃で襲わせ、あらかじめ用意した身代わりを、リュシオラの代わりに死なせる。段取りは、既に組み上がっていた。
イレブンが、間一髪で娘を連れ出す芝居を、寸分違わず演じきった。身代わりの亡骸だけが、王女として、リンドヴェールの地に葬られた。表向き、リュシオラは、その夜の凶刃に斃れた、と発表された。
娘の死の報せは、ヴァルデンツに届くなり、国中を怒りで沸き立たせた。嫁がせたばかりの姫を、あろうことか敵国で手にかけられた――その一点をもって、両国は、瞬く間に、開戦した。全て、ザイデルンの描いた筋書き通りに。
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開戦の報は、ヴァルデンツの民に、悲しみと同じだけの熱狂をもたらした。誰もが、失われた王女の仇を討つのだと、口々に言った。
その熱狂の中でこそ、次の一手は、誰にも怪しまれずに済む。私は、そう踏んでいた。




