第108話:届いた文
種蒔きから二百六十八日目の朝、大空洞に入った。
採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い発光は変わらなかった。布袋に入れた。
第一耕地に進んだ。二株が今日の頃合いだった。指で押して弾力を確かめてから摘み取った。
第三耕地は今日の頃合いではなかった。三か所に水をかけた。
岩の隙間の霧花草は今日は葉を開いていた。三枚を刈り取って別の布袋に入れた。
水場を通りかかった時、水に指先を入れた。今日も温かかった。
割れ目へ向かった。刻みを確かめた。
三十六本になっていた。
(ケルンが来た。三日の間に)
三十六本目だけ表面が荒かった。器の向きは変化なし。今日は奥の開口部には入らなかった。割れ目を出た。
小屋へ戻った。
*
乾燥台に今日の五本と霧花草を並べた。炭に火をつけた。弱火を保った。
この三日の間に積み上がっていた分を確かめた。乾燥台分を加える前の通常品が七百七十八本になっていた。一時間ほどで通常品五本と混合品一本が仕上がった。棚に加えた。通常品が七百八十三本になった。混合品が六十二本になった。
棚を整えた。
昼前、小屋の外に人の気配があった。扉が叩かれた。届け屋だった。
「セイロス様より文をお預かりしております」
受け取った。封を開いた。
「先日、教会の者が再度参りました。仕入れ先についてお答えするよう求められましたが、明かさないことにしております旨をお伝えしました。念のためお知らせいたします」
(セイロスのところにも来た)
文を折りたたんで棚の端に置いた。
*
夕方近く、ミアが来た。
「師匠からの伝言がある」
「はい」
「三日前、教会の者が鍛冶場に来た。ポーションを誰から仕入れているか確かめたいと言ってきた。師匠は答えなかった」
「答えなかったんですね」
「そうだ」
短い間があった。
「——師匠は、怒っていたのか。それとも静かに答えなかったのか」
「静かに、答えなかった」
それだけだった。
(ゴルドの鍛冶場にまで)
「今日、セイロスさんからも文が来ました。先日、同じように来たと」
ミアがうなずいた。
「師匠に伝える」
扉が閉まった。
*
夜、シルバの小屋へ向かった。文を持っていった。
「セイロスさんから文が来ました。教会の者が再度来て、仕入れ先を聞かれたと。断ったと書いてありました。ゴルドさんのところにも三日前に来たと、ミアが伝えてくれました」
シルバが文をゆっくりと読んだ。
「セイロスのところにも。ゴルドのところにも」
「はい」
短い間があった。炉の木がくすぶっていた。
「次はここへ直接来る。それか——お前の取引先に、別のところから買えと圧力をかけようとする。そういう動き方だ」
「変えるな、ということですか」
「変えるな。ゴルドもセイロスも、動かない。そういう人間だ。お前も動くな。今は続けることだけだ」
(ゴルドは、静かに答えなかった)
「はい」
「文はとっておけ。日付と内容を記録の紙に写しておけ。形が見えてきた時に使う」
「わかりました」
炉の火が揺れた。外は暗くなっていた。
*
夜、経営の書を開いた。
「圧力には重さがある。重さに対抗するのは力ではなく、動かない根だ。根が深ければ、重さは逃げていく。根を深くするために必要なことは、今も続けることだ」
(セイロスが断った。ゴルドが断った。シルバが言った——今は続けることだけだ。今日も採って作った。それだけのことだ)
棚を見た。通常品が七百八十三本。混合品が六十二本。
明日も採りに行く。




