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108/109

第108話:届いた文

 種蒔きから二百六十八日目の朝、大空洞に入った。


 採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い発光は変わらなかった。布袋に入れた。


 第一耕地に進んだ。二株が今日の頃合いだった。指で押して弾力を確かめてから摘み取った。


 第三耕地は今日の頃合いではなかった。三か所に水をかけた。


 岩の隙間の霧花草は今日は葉を開いていた。三枚を刈り取って別の布袋に入れた。


 水場を通りかかった時、水に指先を入れた。今日も温かかった。


 割れ目へ向かった。刻みを確かめた。


 三十六本になっていた。


(ケルンが来た。三日の間に)


 三十六本目だけ表面が荒かった。器の向きは変化なし。今日は奥の開口部には入らなかった。割れ目を出た。


 小屋へ戻った。



 乾燥台に今日の五本と霧花草を並べた。炭に火をつけた。弱火を保った。


 この三日の間に積み上がっていた分を確かめた。乾燥台分を加える前の通常品が七百七十八本になっていた。一時間ほどで通常品五本と混合品一本が仕上がった。棚に加えた。通常品が七百八十三本になった。混合品が六十二本になった。


 棚を整えた。


 昼前、小屋の外に人の気配があった。扉が叩かれた。届け屋だった。


「セイロス様より文をお預かりしております」


 受け取った。封を開いた。


「先日、教会の者が再度参りました。仕入れ先についてお答えするよう求められましたが、明かさないことにしております旨をお伝えしました。念のためお知らせいたします」


(セイロスのところにも来た)


 文を折りたたんで棚の端に置いた。



 夕方近く、ミアが来た。


「師匠からの伝言がある」


「はい」


「三日前、教会の者が鍛冶場に来た。ポーションを誰から仕入れているか確かめたいと言ってきた。師匠は答えなかった」


「答えなかったんですね」


「そうだ」


 短い間があった。


「——師匠は、怒っていたのか。それとも静かに答えなかったのか」


「静かに、答えなかった」


 それだけだった。


(ゴルドの鍛冶場にまで)


「今日、セイロスさんからも文が来ました。先日、同じように来たと」


 ミアがうなずいた。


「師匠に伝える」


 扉が閉まった。



 夜、シルバの小屋へ向かった。文を持っていった。


「セイロスさんから文が来ました。教会の者が再度来て、仕入れ先を聞かれたと。断ったと書いてありました。ゴルドさんのところにも三日前に来たと、ミアが伝えてくれました」


 シルバが文をゆっくりと読んだ。


「セイロスのところにも。ゴルドのところにも」


「はい」


 短い間があった。炉の木がくすぶっていた。


「次はここへ直接来る。それか——お前の取引先に、別のところから買えと圧力をかけようとする。そういう動き方だ」


「変えるな、ということですか」


「変えるな。ゴルドもセイロスも、動かない。そういう人間だ。お前も動くな。今は続けることだけだ」


(ゴルドは、静かに答えなかった)


「はい」


「文はとっておけ。日付と内容を記録の紙に写しておけ。形が見えてきた時に使う」


「わかりました」


 炉の火が揺れた。外は暗くなっていた。



 夜、経営の書を開いた。


「圧力には重さがある。重さに対抗するのは力ではなく、動かない根だ。根が深ければ、重さは逃げていく。根を深くするために必要なことは、今も続けることだ」


(セイロスが断った。ゴルドが断った。シルバが言った——今は続けることだけだ。今日も採って作った。それだけのことだ)


 棚を見た。通常品が七百八十三本。混合品が六十二本。


 明日も採りに行く。

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