第104話:石の仕事
種蒔きから二百五十六日目の朝、大空洞に入った。
採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い発光は変わらなかった。布袋に入れた。
第一耕地に進んだ。二株が今日の頃合いだった。指で押して弾力を確かめてから摘み取った。
第三耕地に進んだ。第四十五バッチの頃合いだった。五本を一本ずつ根元から確かめてから摘み取った。三か所に水をかけた。
岩の隙間の霧花草は今日は葉を開いていた。四枚を刈り取って別の布袋に入れた。
(八十五歩まで進む)
割れ目の方へ向かった。
*
割れ目に一歩入った。苔の青白い光が通路の壁を薄く照らしていた。十八歩進んで向こう側に出た。
刻みを確かめた。
三十三本になっていた。
(ケルンが来た。三日の間に)
三十三本目だけ表面が荒かった。残りはどれも滑らかで、触れると指が滑った。器の向きは変化なし。
松明を一本に火をつけた。奥の開口部に一歩入った。床が傾き始めた。
一歩ずつ数えながら進んだ。五十五歩目で祖父の最後の溝を確かめた。十本、変わらず並んでいた。六十歩目で自分の一本目を確かめた。七十歩目で古い溝と自分の三本目。
八十歩目で右の壁を確かめた。溝が十二本。変わらなかった。
(先へ進む)
八十一歩、八十二歩——土の匂いが一段変わった。湿った重さの底に、硬い岩の気配が混じった。八十三歩、八十四歩。
八十五歩目を踏んだ。
右の壁に松明を近づけた。縦の溝があった。一本、細くまっすぐ。表面が滑らかだった。
(これも古い)
懐から紙を取り出した。炭の欠けを使って溝の輪郭を追った。刻みの入り始めの角度を先に写した。溝は細くて浅かった。前に写したものに似ていた。丁寧に二度なぞって形を確かめた。懐にしまった。隣に自分の四本目を刻んだ。
八十六歩目には進まなかった。引き返した。
*
部屋に戻った。棚のそばに立った。松明の炎と苔の青白い光が交じり合った。しばらく待った。
奥の開口部から足音が近づいてきた。
「来ていたか」
ケルンだった。
「はい。八十五歩まで進みました」
「そうか」
短い間があった。
「向こうへ行ってきた」
レインが顔を向けた。
「広い場所の奥まで。前より遠くまで進んだ」
「何がありましたか」
ケルンがしばらく間を置いた。
「壁の線が続く部屋の、さらに奥に開口部があった。暗くて中は見えなかった。松明を持っていって確かめようとした。入り口の前で止まった」
(開口部)
「中に入らなかったんですか」
「入らなかった。——ガルドが一人で入って、また出てきた場所だと思った。だから止まった」
長い間があった。炎が揺れた。
「それがガルドの言っていた場所だと思いますか」
「わからない。だが——その開口部の前に立った時、何かが変わった。匂いが変わった。向こうから来る空気が違った。これより先は別の場所だと感じた」
(別の場所)
「また行きますか」
「行く。次は松明を増やして中まで入るつもりだ」
「わかりました」
ケルンが少し間を置いた。
「——お前はここへ来るたびに少し先へ進んでいるな」
「続けています」
「ガルドに似ている」
それだけ言って、ケルンは奥へ戻っていった。
(ガルドに似ている)
部屋の中でしばらく立っていた。苔の光が壁に揺れていた。
割れ目を抜けて大空洞に戻った。
*
小屋に戻った。乾燥台に今日の十本と霧花草を並べた。炭に火をつけた。弱火を保った。
この三日の間に積み上がっていた分を確かめた。乾燥台分を加える前の通常品が六百八十八本になっていた。一時間ほどで通常品十本と混合品一本が仕上がった。棚に加えた。通常品が六百九十八本になった。混合品が五十一本になった。
*
夕方、シルバの小屋へ向かった。懐に溝の紙を入れていた。
「八十五歩目まで進みました。右の壁に溝がありました。古い溝です。写してきました」
紙を差し出した。シルバが受け取った。しばらく黙って見ていた。
「ケルンとも会いました。向こうの広い場所の奥に開口部があったと。入り口の前で一度止まったと」
「そうか」
シルバが紙をゆっくり返した。
「溝の形は持っていけ。ゴルドに見せてきてくれ。次のことはまた続きを話す」
「はい。——アレンのことを少し聞いてもいいですか」
短い間があった。炉の木がくすぶっていた。
「一つだけ言える」
「はい」
「場所に詳しい者が霧穴に来ていた可能性がある。溝を測りながら刻んでいったとするなら——その者は霧穴の形を調べていた。場所の形を知るために来ていた」
(場所の形を知るために)
「誰かがここを——整えていた、ということですか」
「わからない。だが——その者が来ていた理由が、測るためだったとするなら。何かを作ろうとしていた者の仕事に見える」
シルバが炉の方に視線を戻した。
「急ぐな。一つずつ確かめてからでいい」
「わかりました」
「今日のケルンの話も記録に残しておけ。開口部があったということを」
「はい」
炉の火が揺れた。外は暗くなっていた。
*
夜、経営の書を開いた。
「探す者と整える者は違う。探す者は先へ進む。整える者は後から来る者のために形を残す。どちらも、一人では終わらない仕事だ」
(ケルンが開口部の前で止まった。ガルドに似ていると言った。アレンという者が霧穴の形を調べていた可能性がある。ガルドより前から、誰かがここを知っていた)
棚を見た。通常品が六百九十八本。混合品が五十一本。
明日も採りに行く。




