第101話:同じ者の手
種蒔きから二百四十七日目の朝、大空洞に入った。
採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い発光は変わらなかった。布袋に入れた。
第一耕地に進んだ。二株が今日の頃合いだった。指で押して弾力を確かめてから摘み取った。
第三耕地に進んだ。第四十四バッチの頃合いだった。五本を一本ずつ根元から確かめてから摘み取った。三か所に水をかけた。
岩の隙間の霧花草は今日は葉を閉じていた。採取はしなかった。
水場を通りかかった時、水に指先を入れた。今日も温かかった。岩の表面に手を当てた。こちらも温かかった。
(六十五歩目と七十歩目を写す。ゴルドに持っていく)
割れ目の方へ向かった。
*
割れ目に一歩入った。苔の青白い光が通路の壁を薄く照らしていた。左右の苔の光が足元の土にぼんやりと映った。十八歩進んで向こう側に出た。
刻みを確かめた。
三十一本になっていた。
(ケルンが来た。この三日の間に)
三十一本目だけ表面が荒かった。残りはどれも滑らかで、触れると指が滑った。器の向きは変化なし。
(今日は奥まで進む)
松明を一本に火をつけた。奥の開口部に一歩入った。床が傾き始めた。
一歩ずつ数えながら進んだ。五十五歩目で祖父の最後の溝を確かめた。十本、変わらず並んでいた。六十歩目で自分の一本目を確かめた。表面はもう少し落ち着いていた。
六十五歩目で足を止めた。
右の壁に松明を近づけた。古い溝が一本あった。自分の二本目がその隣にあった。
(写す)
懐から紙を取り出した。炭の欠けを使って溝の輪郭を追った。刻みの入り始めの角度を先に写した。溝は細くて浅かった。表面が滑らかで、炭が少し滑った。丁寧に二度なぞって形を確かめた。懐にしまった。
そのまま進んだ。
六十六歩、六十七歩——土の匂いが少しずつ変わった。湿った重さに岩の古い匂いが混じっていた。
七十歩目で足を止めた。
右の壁に松明を近づけた。古い溝が一本あった。自分の三本目がその隣にあった。
もう一枚の紙を取り出した。七十歩目の溝を写した。入り始めの角度から終わりの向きまで追いかけた。写し終えてから、二枚を並べてみた。
形は似ていた。細さも浅さも同じだった。ただ、刻みの角度が少し違った。始めの向きが、六十五歩目の方がわずかに横に入っていた。
(角度が違う。でも似ている)
二枚を懐にしまい、先へ進んだ。
七十五歩目を越えた。七十六歩、七十七歩——土の匂いが一段階変わった。湿った重さの奥に、乾いた岩の埃が混じっていた。七十九歩目で松明の炎が一度揺れた。奥から空気が動いていた。
八十歩目を踏んだ。
右の壁に松明を近づけた。縦の溝が十二本並んでいた。
(十二本。次は八十五歩目のはず)
溝の形を確かめた。どれも同じ間隔で刻まれていた。前と変わらなかった。
八十一歩目には進まなかった。引き返した。
*
部屋に戻った。棚のそばに立った。松明の炎と苔の青白い光が交じり合った。しばらく待ったが、ケルンは来なかった。部屋を出た。割れ目を抜けて大空洞に戻った。
*
小屋に戻った。乾燥台に今日の十本を並べた。炭に火をつけた。弱火を保った。
この三日の間に積み上がっていた分を確かめた。乾燥台分を加える前の通常品が六百二十三本になっていた。一時間ほどで通常品十本と混合品一本が仕上がった。棚に加えた。通常品が六百三十三本になった。混合品が四十五本になった。
*
昼すぎ、ゴルドの鍛冶場へ向かった。煙が出ていた。中から金属を叩く音がして、止まった。
「レインです。二枚持ってきました」
「来い」
扉が開いた。ゴルドが顔を出した。額に汗が光っていた。
懐から紙を二枚取り出した。ゴルドが両方受け取った。
長い間、ゴルドは何も言わなかった。一枚を左手に、もう一枚を右手に持った。二枚を並べた。少し離した。また並べた。炉の火が遠くで揺れていた。
「……同じ者の手だ」
ゴルドが静かに言った。
「二枚の向きを合わせると、刻みの始まりの位置が一致する。角度が少し違うのは、刻む向きを調整したためだ。同じ技法だ。同じ石工が刻んだ」
「六十五歩目と七十歩目、どちらも同じ石工が」
「そうだ。五歩ずつ進むたびに確かめながら刻んでいった。数えながら歩いた者だ」
少し間があった。炉の木が沈んだ。
「建造か整備に使う刻み方だ。場所を測るために残す目印だ。探索の記録とは違う。その者は霧穴の中で、何かを測っていた」
(測っていた)
「霧穴を——誰かが整えていた、ということですか」
「わからない。だがこの刻み方が建造に関わる技法と同じなのは確かだ。石を扱う仕事を長年続けた者の手だ」
ゴルドが二枚の紙をレインへ返した。
「先に溝がまだあるなら、続けて写してこい。どこまで続いているか、見えてくるかもしれない」
「わかりました」
「——霧穴を整えた者がいたとするなら、その者はその場所を知っていて来た。たまたま通りかかった者の刻み方ではない」
それだけ言って、扉を閉めた。
(その者は霧穴を知っていた。測るために来ていた。ガルドより前に)
道を戻りながら、繰り返した。
*
夕方、シルバの小屋へ向かった。
「八十歩目まで進みました。八十歩目の右壁に溝が十二本ありました。六十五歩目と七十歩目の溝を写してゴルドさんに見せました。ゴルドさんは——同じ者が刻んだ、と言いました。同じ石工の技法だと。霧穴の中で何かを測っていた者かもしれない、とも」
シルバが炉の前でゆっくりと顔を上げた。
「ゴルドが測っていた、と言ったか」
「はい。建造か整備に使う刻み方だと」
短い間があった。炉の木がくすぶっていた。
「……一人、心当たりがある」
シルバが低く言った。炉を見たまま動かなかった。
「誰ですか」
「急ぐな。はっきりしてから話す」
「はい」
「その者がここまで来ていたとするなら——話すべきことがある。もう少し待て」
「わかりました」
「今日のことは記録に残しておけ。何を見た、何を写した、ゴルドが何と言ったか。全部」
「はい」
炉の火が揺れた。外は薄暗くなり始めていた。
*
夜、経営の書を開いた。
「同じ痕跡が二か所に残っているなら、それは繰り返された行いの証しだ。一度だけでは残らない。意図を持って続けた者だけが、同じ形を二か所に刻める」
(同じ石工が六十五歩目と七十歩目を刻んだ。霧穴の中で何かを測っていた。シルバが「一人、心当たりがある」と言った。どんな者だったのか)
棚を見た。通常品が六百三十三本。混合品が四十五本。
明日も採りに行く。




