第100話:話してきた
種蒔きから二百四十四日目の朝、大空洞に入った。
採取ポイントで三本を摘み取った。根元の青白い発光は変わらなかった。布袋に入れた。
第一耕地に進んだ。二株が今日の頃合いだった。指で押して弾力を確かめてから摘み取った。
第三耕地は今日の頃合いではなかった。三か所に水をかけた。
岩の隙間の霧花草は今日は葉を閉じていた。採取はしなかった。
水場を通りかかった時、水に指先を入れた。今日も温かかった。岩の上に手を当てた。岩も温かかった。
(割れ目を確認する。今日は時間をとる)
割れ目の方へ向かった。
*
割れ目に一歩入った。苔の青白い光が続いた。十八歩進んで向こう側に出た。刻みを確かめた。
三十本になっていた。
(ケルンが来た)
三十本目だけ表面が荒かった。器の向きは変化なし。
(部屋で少し待つ)
棚のそばに腰を落ち着けた。松明の炎と苔の青白い光が交じり合った。
しばらくして、奥の開口部から足音が近づいてきた。一定の歩幅だった。
「ケルンさん」
「……俺だ」
「刻みが三十本になっていました」
「そうか」
少し間があった。ケルンが部屋の入口あたりに立った。
「向こうへ行ってきた」
(向こう——ケルンが発見した広い場所へ)
「どこまで行きましたか」
「広い場所の奥まで。前回より進んだ。匂いがまた変わった。もっと深い匂いだった。岩の古い匂いと、何か他のものが混じっていた」
「ガルドが言っていた場所の匂いですか」
少し間があった。
「近い気がした。手前かもしれない。あるいは——もう、その場所の中にいるのかもしれない」
(「もう、その場所の中にいるのかもしれない」)
「壁の線はどうでしたか」
「端の方まで続いていた。松明が届く範囲では、壁の横一面に伸びていた。形は——読めなかった。でも確かに、何かを記録している形だと思う。長い時間前に、誰かが来て残した」
少し間があった。炎が揺れた。
「お前の溝はいくつになったか」
「三本です」
「そうか」
また少し間があった。
「ケルンさんは、これからも続けますか」
ケルンが短い間を置いた。
「……続ける。ガルドが言っていた場所まで行く。それだけだ」
(それだけだ、と言った)
「俺も続けます」
「そうか」
足音が奥の開口部の方へ遠ざかっていった。
*
部屋を出た。割れ目を抜けて大空洞に戻った。
(ケルンが「もう、その場所の中にいるのかもしれない」と言った。壁の線は端の方まで続いていた。ガルドが言っていた場所——霧穴の奥の深い場所に、ケルンがたどり着こうとしている)
*
小屋に戻った。乾燥台に今日の五本を並べた。炭に火をつけた。弱火を保った。
この三日の間に積み上がっていた分を確かめた。乾燥台分を加える前の通常品が六百三本になっていた。一時間ほどで通常品五本と混合品一本が仕上がった。棚に加えた。通常品が六百八本になった。混合品が四十四本になった。
記録の紙を取り出した。「刻みが三十本に増加——話間にケルン来訪。今日もケルンと接触:向こうの広い場所の奥まで進んだ。匂いがまた変わった。壁の線が端まで続いていた。もうその場所の中にいるかもしれないと言っていた。通常品六百八本。混合品四十四本」。
*
夕方、シルバの小屋へ向かった。
「刻みが三十本になっていました。今日ケルンと接触しました。向こうの広い場所の奥まで行ったと言っていました。匂いがまた変わった——ガルドが言っていた場所の手前か、もうその中にいるかもしれないと言っていました。壁の線は端の方まで続いていたと」
シルバが炉の前でゆっくりと顔を上げた。
「ケルンが奥まで行ったか」
「はい」
短い間があった。炉の木がくすぶっていた。シルバがゆっくりと炉を見た。しばらく動かなかった。
「一つ、話してもいいか」
(話してもいいか、と聞いた)
「はい」
「ガルドが魔王のいる場所から戻った時のことだ。俺は一度だけ、ガルドに聞いたことがある。何をしてきたかを。一度だけだ」
「はい」
「ガルドは言った。——話してきた、と」
(「話してきた」)
「魔王と、ですか」
「そうだ。討伐した、とは言わなかった。戦った、とも言わなかった。ただ——話してきた、とだけ言った」
少し長い間があった。炉の火が揺れた。
「それだけでしたか」
「それだけだった。何を話したかは言わなかった。聞こうとすると、ガルドは黙った。それが全部だった」
シルバが炉を見たまま続けた。
「でも——戻ってきた時のガルドの目が違った。来る前とまるで違う目をしていた。重いものを下ろした後の顔だった。それを見て、俺はそれ以上聞けなかった」
(ガルドは魔王と話した。討伐したのではなく——話した)
「話してきた、というのが——本当のことだと思いますか」
「ガルドが俺に嘘をついたことはない」
シルバが静かに言った。炉を見たまま動かなかった。
「向こうでケルンが見つけた場所の壁の線。降下通路の古い溝。——全部、一つの方向に向かっていると俺は思っている。お前が続けていることは、正しい」
「はい」
「急ぐな。ただ、続けろ」
炉の火が揺れた。外はもう暗くなっていた。
*
夜、経営の書を開いた。
「何かを伝えるために言葉を選ぶ者がいる。言葉の代わりに沈黙を選ぶ者もいる。残された者は、その沈黙の形から何かを読み取ろうとする。言葉より沈黙が正確に残ることがある」
(ガルドは「話してきた」と言った。それ以上は言わなかった。右手に跡があった。向こうの壁には何かが記録されていた。——全部、繋がっている。いつかわかる。続けていれば)
棚を見た。通常品が六百八本。混合品が四十四本。
明日も採りに行く。




