第百九審 『鮮やかな絶望』
失踪です。
なんかまた急に暑くなってきましたね。
それら全てが太陽の裏に入り込んだ僅か数秒後、先程と同じような衝撃波と破片が散る。
「ルナ」
「……あ、あぁ、分かってる。『食屍龍』、準備はいいかい?」
指揮されると、再度口元にエネルギーを収束させ始める。
……残り、三十秒。
最後の核は中心部、つまり外角を突き破る必要がある。
「ハルサ!同じ場所を狙うんだ!この一撃に全てがかかっている!!」
ただ頷いて天を仰ぎ、太陽の中心を捉えて手のひらを空に向けた。
「もう少し、頑張ってくれ」
聖霊達に呼びかけ、神経を集中させる。
残り時間から見て、チャンスはもうない。これを逃せば最悪の事態に陥るのは明白だった。
……残り、二十秒。
「三」
……
「二」
……
「一」
……
「打て!!」
発射と同時に、これまでよりも更に強い衝撃が全身を後方に押し返した。
待つまでもなく、それらは太陽の表面に直撃。
内部を抉っている感覚が伝ってくる。
……数秒間照射し続け、軈て両者の光束が途絶えるが、落下してくるそれは未だに速度を緩めずこちらに向かってきている。
「駄目か……!!」
もう一度試すにも、時間が足りないのは火を見るより明らか。
残り、十秒。
限界までこちらに迫った太陽による上昇気流が、ただ僕らの横を通り過ぎる。
風の鳴き声が、僕らを嘲笑った。
残り、三秒。
二秒。
一秒……。
ℵ
事の重大さは、言われるまでもなく理解していた。
際限なく吹き荒れる風。赤い光に照らされる私たち。目の前で私たちの行く手を阻む暴聖。そして、上空からこちらに迫ってくる太陽。
戦闘中、何度か確認できたのだが、どうやら事は『あの太陽を破壊しよう』と進んでいるらしい。
氷のオブジェクト、いくつかの光束。内いくつかは見覚えのあるものだった。それを図っているのはルナ率いるBetter Tomorrowのメンバーで間違いない。
「考え事かい?」
突如背後に現れたそいつはナイフを振りかざすが、間に割り込んできたファントムによって弾き返される。
このアウトレイジという名前の七聖も、いくら戦おうとも底が見えない。永遠と同じ態度を貫き、異能力の出力にも波がない。寧ろ増大していっている。
何より、『速い』。こちらの決定打となるような攻撃は全く当たる気配が見えなかった。
しかし、こいつも似たような状況だ。
接近すれば姿の見えないファントムが対処、距離を取れば私の攻撃が驚異となる。
特に、私の攻撃は当たれば致命傷は免れない。
これを続けていても埒が明かない。そう考えて前線をファントムに任せて後退した時、視界の奥でとある光景を目の当たりにした。
先程も見えた光束が、太陽そのものに直撃している。
これまでは周辺に浮かんでいたものを狙い、破壊していたのも確認できていたため、この環境でもなんとか意図を読み取れた。
しかし、今回は太陽そのものを?
あちら側の都合が良いタイミングで結界が消滅したため、領主はBetter Tomorrow側に着いたと読んでいるが、だとすると疑問が残る。
何故太陽本体を狙っている?
太陽の破壊を目的に、周囲に浮かんでいるコアのようなものを破壊していたというのは簡単に予想できるのだが、本体を狙うに至った理由が分からない。
……それらを破壊することで、本体の強度が下がる?
可能性としては捨てきれないが、別の理由があるような気がする。
「……もう一つ、核があるのか……?!」
どちらにせよ、一時的にでもあちらの援護に回った方がいいと私は判断した。正解がなんであれ、やることは変わらない。
「ファントム、悪い、少し席を外す」
返事は待たずに走り出した。
正直、場所はどこでもいい。アウトレイジからの妨害を受ける可能性を考慮して、少しでも離れておく必要があったのだ。
とは言え、あちらも相当切羽詰っているだろう。急ぐに越したことはない。
立ち止まり、その場で即座に弓を構えて矢を引いた。
核があると予想される場所は、対象の中心。この大きさの獲物の中心部分にまで影響を及ぼすことが出来るかは分からないが、既にやるより他に選択肢は残されていなかった。
次第に、引き絞った矢の先は激しい輝きを放ち始め、段々と強くなっていく。
私は大きく深呼吸をすると、それを唱えた。
「……『響彩望終焉』《ヴィヴィッド・オブ・ホープレス》」
お楽しみいただけましたか?
アカネ、やれるのか……?
では、また次回。




