第百三審 『落陽の刻』
失踪です。
書いたものを次の日に投稿。毎日締切に追われてる気分です。
ルナに視線を送り、頭の中でそう呟きながらある一点をイザナギに察されないように指さした。
僕の声があちらに届いているのかは分からないが、何とか僕の意志を汲み取ってくれたようだ。
次の瞬間、ルナを覆っている結界の周りに、一箇所の空間の歪みが作り出され、そこから勢いよく鎖が飛び出した。
それは天井に設置されていた『消火設備』を破壊。中に封じ込められていた消火薬剤が瞬く間に部屋中に散布され、周囲はとてつもない量のミストによって真っ白に染め上げられる。
自分の姿が完全に飲み込まれたことを確認すると、僕はミストの中を自由に動き回り始めた。
結界の影響か、イザナギの周辺には消火薬剤が舞っている様子は見えない。
それがむしろ、あいつの結界の大きさを確認しやすくする要素にもなっていた。
周囲に気を配っている様子を観察し、完全に背後に回り込んだ瞬間に、僕は煙の中から飛び出した。
その際、再度結界の形がちらつく。
しかし、僕は動作を中止することも、変更することもなく、限界まで振りかぶった鎌を一気に振りかざした。
接触により、一瞬火花が散る。
そう、火花が散ったのは『一瞬』だけ。
鎌との接点に、巨大な罅が入った。
尚、力を弱めることなく振り抜くと、展開されていた結界は丸ごと粉々に砕け散る。
この好機を逃すな。
そう自分に呼びかけ、振り抜いた鎌を往復させるように柄で顔を殴打した。
凄まじいスピードで吹き飛び、壁に打ち付けられたそいつに向かって、抱えていた鎌を全力で投擲する。
するとそれはイザナギの肩をギリギリ避け、少し上の壁に突き刺さって動きを拘束した。
結界の再展開を防ぐため、瞬時に距離を詰める僕は、懐から『それ』を取り出す。
立ち止まると同時に、片手に構えた『ピストル』の銃口をそいつの額に突きつけた。
息を切らしながら、俯いたままのそいつに、絞り出すように言葉を発した。
「……お前の、負けだ」
それに返事はない。
ただ静寂が流れていたその時、なにかに気がついたかのようにイザナギは突然顔を上げた。
直後、とてつもない衝撃音とともに建物の天井が崩壊する。
しかし、一切瓦礫は落下せず、バラバラになったそれらは全て迫ってくる太陽の元へ巻き上げられていった。
ハッとした僕はイザナギに視線を戻すが、そいつは空を見上げ、口を開けたまま硬直している。
その表情からは、ある種の『絶望』が感じ取れた。
「……『時間切れ』、だ」
ℵ
刃物が私の腹部から引き抜かれ、鮮血が飛び散る。
瞬く間に、喉元へ血が競り上がってくる感覚。
刃物の先端だけを裂け目の中に入れ、もう一方の裂け目から私に攻撃を仕掛けてくる芸当は、流石に予想外だった。
口元を拭いながらそんなことを考えていると、立ち上がった彼女は再度刃物を構える。
「どうした?治さない、のか?」
……悪趣味だ。
治るとは言え、痛いものは痛い、辛いものは辛い、苦しいものは苦しい。
私の異能力の発動に際して、腹部に負った傷は瞬く間に跡形もなく治療された。
彼女の目的は、確実に時間稼ぎ。
対象を始末することが目的なら、通過していくハルサさん達を全員まとめて相手しようとするだろう。
でも、そうしなかった。
私を含めた四人全員を巻き込んで戦闘を行うことが難しいと判断したのかもしれない。
私が正面から彼女を抑え、他の四人が『逃げ』に徹した時、どの道この場所を通り抜けられるのは時間の問題だと読んだのだろう。
逃げるための時間を稼ぐのであれば、私ひとりで十分だと言い切れる。その事を彼女も理解しているはず。
そのため、あの時私が飛び込んで来なければ、彼女は四対一で戦闘を開始していた可能性すらある。
加えて、対象の始末が目的であるなら、部外者である私になど目もくれず、逃げていく彼らを一人でも多く狙うはずだ。
その気になれば実行可能だったのだろう。
となれば、彼女の目的は元から『始末』ではなかったと考えられる。
お楽しみいただけましたか?
しばらく設定資料も更新してませんね。落ち着いたらやります。
では、また次回。




