第百一審 『何でも屋』
失踪です。
なんと今回、作者お気に入り回です。
目を開けると、視界一面に広がる砂埃が真っ先に飛び込んでくる。
……気を失っていたのか?どのくらいの間?ハルサは無事なのか?
様々な思考が渦巻く中、立ち上がろうと体に力を込める。
……だが、その瞬間足に激痛が走り、咄嗟に動作を中断してしまう。
「折れたか……」
脛の周辺に触れてみると、同じように激しい痛みが生じた。最悪だ、この期に及んで。
気を失う直前、何が起きたのかを必死に思い出そうと記憶を手繰り寄せようとする。
「……『爆発』」
……そうだ。俺は爆発に巻き込まれた。
全てが一気に押し寄せるようにフラッシュバックし、何故今の状況に至ったのかを理解した。
あの時、俺は膨れ上がるあいつの結界の脅威に気づけず、それが起こした爆発によって吹き飛ばされ……。という所までは記憶にある。
概ね、それにより壁に頭を打ち付け……というところだろう。そのどこかしらのタイミングで足を折ってしまったらしい。
あいつが頑なに纏っていた結界を解除しなかったのは、あれがただの結界ではなく展開し続けた末に効果を発揮するものだったことを意味する。気づいていたとしても、対処は難しかっただろう。
そんなことは今はどうでもいい。
ハルサ、あいつは無事なのか。
凩 ルナは結界の中に閉じ込められている。この程度の衝撃で破れてしまうものだとも思えないため、無事だと考えるのが丸い。
爆発の直前、あいつの危機を呼びかける声はこちらに届いていた。ということは、脅威には気づいていたことになる。
あいつが行動不能となると、戦況は絶望的。俺ももうまともに動ける状況ではない。
安否を確認するべく何とか立ち上がろうとするが、やはり体がそれを拒む。
焦りから苛立ちを覚え始めた時、依然として立ち込める砂埃の奥からこちらに近づいてくる気配に気がついた。
手でそれを掻き分けながら姿を現したそいつは、頭から血を流しながらも変わらない態度を貫いている。
「生きてたようで何よりだな。オルタ」
「お前……!怪我は─────」
「見ての通り。動作に影響する程の怪我はしちゃいない」
何故、まだ動けているのか。
腹部の大きな怪我からは未だ血が滴り続け、爆発による損傷も、ああは言っているが受けている。もうとっくに限界が来ていてもおかしくはないのだ。
「動けるか?」
「……いいや、残念ながら」
「そうか」
「申し訳ないが、後は頼んでも良いか?例え失敗したとしても、恨みはしない」
「あぁ、もちろん。だが、一つだけ条件がある」
ハルサは更に一歩、前へ進み出た。
「正式に『依頼』をしてもらおうか」
「依頼……?」
「そうだ。僕らはずっと、お前の思惑の全貌が分からないまま、行動を共にしていた。だが、僕らも仕事だ。正式に依頼をしてもらわないと商売として成り立たないからな」
脳の処理が追いつかない、が。悪い話をされているという訳でもなさそうだった。
「それにあたって、聞いておかないとならないことがある。依頼内容、目的、そして依頼主の名前。今はそれだけで構わない」
「依頼内容は……『シーカ領領主の計画の、阻止』」
彼はただ、真剣な眼差しでこちらを見ている。
「目的は……『領土の防衛』」
「ダメだ、具体性が足りない。それに、今となっては領土の目的が暴かれ、阻止することによって大規模な被害が出る可能性が示唆されている。それを依頼したいのなら、もっと納得できるような具体的な内容が必要だ」
この期に及んで何故そんなに面倒なことを……と思ったが、彼の思惑が読めたような気がして、思わず鼻で笑ってしまった。
「依頼内容は、『シーカ領領主の計画の阻止』。依頼主は、『粼 レルエ』」
そう改め、一拍置いてそれを告げた。
「兄さんを、救ってやってくれ」
お楽しみいただけましたか?
僕の中の『ハルサ』が出ていて、個人的に結構満足しています。
では、また次回。




