第百審 『過去の幻想』
失踪です。
第百話、なんと第百話。
しかし、それらは同じく視界の外から飛び込んできた鎖によって貫かれて機能を失う。
……そうか、今この状況は三対一。こちらが優位に立ち回ることが出来るのは何らおかしいことでは無い。
一度大きく刀を振りかざして斬撃を打ち出すと同時に飛び上がり、テラスに飛び乗った。
飛来した斬撃が結界を削り始め、僕も刀を薙いで圧力をかけていく。
先程のイザナギの行動から察するに、結界はダメージの蓄積によって破壊することが出来る。
つまり、再展開しない限りはこれを繰り返せばいずれ突破が可能ということになる。
火花を散らしていたその時、手元に明確な違和感が伝う。
刹那、不意に刀が接していた結界を通り抜けた。
数秒としないうちにその結界内を漂っていた帯が刀に巻き付き、とてつもない力で引かれ、抵抗する間もなく刀を奪い取られてしまった。
「良い刀だ、僕が大切にしまっておいてあげるよ」
それは帯に包まれ、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
「丸腰になってしまえば、流石にこの距離でも僕に有利が着く」
『ハルサ─────』
「……いや」
『受け取りな─────!!』
「それはどうかな?」
その瞬間、目の前にひとつの刃物が飛来し、地面に突き立てられる。
それを引き抜いて振りかざし、黒い軌道を描いてイザナギの喉元を切り裂き通過した。
同時に大きく一歩後退したそいつは流れ出る血を触って確認すると、小さくつぶやく。
「鎌……?!」
ルナから受け取ったのは、黒塗りの大鎌。
それなりに年季が入っているように見える上、このような武器を使っている奴はほとんど見た事がない。
何故、ルナはこれを……?
「今の君に、これが受け切れるかな……!」
刹那、気配が迫った方向を見やると、またしても帯がこちらに迫ってきている。
……しまった、今の僕では斬撃が撃てない。あれを対処するのが難しくなっていることを読まれている。
回避が懸命。そう判断した瞬間、数発の銃声がこの空間に轟いた。
瞬く間に目と鼻の先にまで迫っていた帯に風穴が開き、最初からただの布切れであったかのように地面に落下していく。
この機に乗じ、結界が透過状態にあることに賭けてギリギリまでイザナギとの距離を詰めることに成功し、腕を掴みあげてテラスの枠外に投げ飛ばした。
やはり気になるのが、先程から展開されたままになっているあいつの結界。
普通の結界とも少し見た目が違うように見える上に、追い詰められた際に『解除』ではなく『透過』を選んだ理由も僕には分からない。
結界術師になら分かるような理由があるのだろうか。
それに、従来の結界と違ってかなり目立つ見た目だ。『ただの結界ではない』というのは知識が備わっていなくても分かるのだが……。
投げ出されて下のフロアに着地するイザナギを追ってテラスから飛び降りると、僕とオルタに挟まれるイザナギの構図が完成する。
険しい表情で僕を睨むそいつの奥で、未だに煙が立ち上るピストルを構えているオルタと目が合った。
俯き、ただ静止していただけのイザナギの口角が突然上がった。
嫌な感覚……まるで何かを忠告されているかのような背筋を悪寒が走る。
「オルタ!!」
「『惨焉奔』《カタストロ・フィア》」
いち早く迫る気配に気がついた僕らは咄嗟に声を上げるが、その言葉がオルタに届いた頃には手遅れになってしまっていた。
「君たち二人には、冥府への片道切符をプレゼントするよ!!」
「屈め!!」
「受け切れるものなら受け切ってみな!!!」
ℵ
『変わらず……静かな場所……』
『聞こえるのは……の声……』
『「あの人」がいなくなって…………経った……』
「──────?」
『え?……あぁ、いつか……』
『……帰って……る……』
『いつの日か……』
『会え……なら……』
お楽しみいただけましたか?
ついに話数が三桁に突入しました。感慨深いですね。
では、また次回。




