第九十九審 『兄弟喧嘩』
失踪です。
お腹痛い
飛び込んでくるなり着地と同時に地面を滑って僕の一歩前でブレーキをかけ、片手に構えた銃口をイザナギに向けた。
「改めて……久しぶりだな、兄貴」
「お前……この期に及んで、まだこの状況が理解出来ていないのか?!」
「出来てるさ、その上で邪魔しに来たんだから」
曇った表情のそいつは、歯を食いしばった。
「なら、お前も彼と同じ道を辿ってもらおうか!」
そう告げると同時に両腕を大きく広げ、浮遊しながら自分の周りに結界を構築していく。
そのままテラスに着地するのを横目に、オルタは僕に視線を移した。
「お前、その怪我大丈夫なのか?」
「あぁ、自分でも分からないが、特に問題は無さそうだ」
「すげぇな……で、今の状況を察するに、恐らく『落陽の刻』が本来想定されていた時間よりも早まったんだろう」
「……読めていたのか?」
「まぁ、こういうことも起き得るだろうなとは思ってたさ。だからお前らには少し余裕を持って目的地に向かってもらった」
「そんなことはどうでもいい。お前はあいつの計画を止められたとして、どうするつもりだ」
「そんなことって……。『落陽の刻』が何なのかはあいつから直接聞いただろうから割愛させてもらう。落ちてくる太陽をこの領土を覆っている結界で受け止める、これがあいつの計画の大まかな内容だ。どうやったらあの質量の物体の衝突を受け切れるか、色々と画策していたみたいだけど、正直言って計画が成功するとは思えない。そもそもあれを受け止めようとすること自体、かなり無理があるからな」
「なら、どうするって言うんだ」
「それよりも成功率が高い策がある。少なくともあいつのよりはな」
その瞬間、僕らの間の地面にに飛来した帯が複数本突き立てられ、砂埃が舞う。
両者は咄嗟の回避に成功し、特に損傷も無さそうに見える。
「とにかく、最優先はあいつを鎮圧して話を聞かせることだ!お前は前に出てくれ、『罠』は気にしなくていい、とにかく前に進め!!」
頷き、言われた通り僕はこれまで通りイザナギの元へ駆け出し、距離を詰めていく。
パッと見て確認できる花が集合している箇所は複数ある。進路上にも存在していることも踏まえてこのまま直進していくのは厳しいだろうと考えていると、目の前まで迫ったその場所に、何かが飛び込んでいくのが確認できた。
それを正確に視認した瞬間、僕は思わず動揺してしまった。
「オルタ……?!」
まるで狙ったかのように花の真上に着地した彼は、想像通り地面から生成された帯に体を何ヶ所も突き刺される。
だが、数秒と経たないうちにその体はホログラムのようにバラバラに崩れ去った。
「進め!止まるな!!」
背後からは、今目の前にいたはずのあいつの声が響き渡った。
脳の処理が追いつく前に過ぎ去ってしまったが、何とか理解できたような気がする。
恐らくオルタは『自分の分身を作り出せる異能力』を使うことが出来るのだろう。
今のは、彼の分身が罠を踏み抜いた。
そして、あいつが仕掛ける罠の効果発動は一度きり。繰り返したい場合は再度展開が必要になる。
つまり、オルタは自分の分身を使ってあいつの罠を消費させた。『罠』は気にしなくていいとはそういう事だったのか。
しかし、気がかりなのはあいつが纏っているあの『結界』だ。
先程までのただ自分の身を守るだけの透明な結界とは見た目がかなり異なっている。まるでイザナギが自信が水槽の中に漂っているかのような……。
何かしらの術式が付与されているものと見るのが自然だ。今のところ詳細は不明なのだが。
テラスが目の前にまで迫り、思い切り地面を蹴って飛び乗ろうとした瞬間に、視界にこちらへ向かってくる帯が映りこんだ。
お楽しみいただけましたか?
次で百話なんですって、本当に?
では、また次回。




