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【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
ヴィーナスは星への祈りを捧げている。
未だ塔の頂上付近の吹き曝しのテラスで、いつも通りの全裸に近い格好のままだ。
冷たい強風が水色の髪を激しく揺らすが、彼女は身じろぎ一つしない。
「…………」
食事も摂らず、睡眠もとらない。
ひたすらに、自らが絶対と信奉する星に祈りを捧げ続けている。
「もうまもなくです……星よ。まもなく塔は完成し、貴方様のために……汚い人類を掃除できます……」
伏せていた目を開け、ヴィーナスは恍惚とした表情で頬を紅潮させながらつぶやいた。
眼下から微かに聞こえる石を積む音が、彼女の心を高揚させる。
最近になって労働力となる人員がさらに増えた。それにより、塔の建築速度は指数関数的に跳ね上がっている。
塔を天まで届かせ、そこからヴィーナスが毒電波の力を最大出力で放てば、世界中の人間が等しく彼女の支配下に落ちる。
そして、たったひと言、こう命令するのだ。
『死ね』
と。
魔人であるヴィーナスが望むのは、美しい星を食い尽くす害虫たる人間どもを完全に駆逐すること。
その大願を成就させるためだけに、彼女は途方もない時間をかけてきた。
「ついに……ついに、念願が叶うのですね……」
ヴィーナスの瞳から、大粒の涙がとめどなく溢れ落ちる。
心から人類抹殺を喜び、震える手で自身の豊かな胸を抱きしめた。
「……メルクリウス。貴方も喜びなさい」
ヴィーナスが優雅な所作で背後を振り返る。だが。
「メルクリウス……?」
そこに控えているはずの、手先の姿が見えない。
視線を巡らせても、バルコニーには乾いた風が吹き抜けるだけだ。
「何をやっているのでしょうか、あの愚妹は」
ヴィーナスはひどく不愉快そうに、深くため息をついた。
彼女は再び目を閉じ、祈りの形をとって支配の波動を放つ。するとしばらくして。
「お呼びでしょうか」
虚ろな目をした銀髪の冒険者、ギンコが静かに姿を現した。
ゲーヒィンに貸し与えている手駒の一つだ。
凄まじい身体能力を持っているため、ヴィーナスとしては塔の建築要員として使いたかった。
だが、塔の下層で実務管理を行っている下品な貴族が、どうしても欲しがって聞かなかったのだ。仕方なく貸し与えていたのである。
自らの微かな呼びかけに真っ先に呼応したのが、このギンコだった。
近くに控えていたのか、あるいはSランク冒険者ゆえの鋭敏な感覚が残っているためか。
「メルクリウスはどこです」
「塔の外で、重力の魔人の傍にいました」
「重力の……魔人。なんですかそれは。聞いていませんよ」
ヴィーナスの毒電波により、ギンコの精神は完全に支配されている。
彼女の脳内には、重力の魔人、すなわちガイアの情報が詳細に刻まれていた。
ギンコはヴィーナスに命じられるがまま、抑揚のない声でガイアについて語り始める。
重力の魔人、ガイア。現在は冒険者パーティ星空の夜のリーダーを務めていること。
都市長の娘であるチワの依頼を受け、このザドゥに潜入しているということ。
「なるほど……重力の魔人……」
ヴィーナスの美しい瞳から、再びひと筋の涙がこぼれ落ちる。
「ああ、なんと哀れなのでしょう……。魔人として星に生んでいただいた恩を忘れ。人間に与するなど。万死に値します……」
ヴィーナスの静かな怒りに呼応するように、強烈なプレッシャーが周囲に放たれた。
ビリビリと空気が震え、巨大な塔そのものが低く鳴動する。
彼女は瞳に暗い怒りの炎を燃やしていた。
今すぐにでも奥の手を発動させ、愚かな同胞を処刑しようとする。
だが、彼女はギリッと奥歯を噛み締め、振り上げた拳を震わせながら下ろした。
極限まで膨れ上がった怒りの力が、徐々にしぼんでいく。
「最終計画を前に、無駄な力を使ってしまうところでした……危ない……」
あくまで、ヴィーナスの大目標は全人類の抹殺だ。
その瞬間のために、彼女はずっと力を温存し続けてきた。
まだ塔の高度が足りず、儀式の準備が完璧に整っていない段階で、全力を出すわけにはいかない。
星への祈りが失敗に終わってしまうからだ。
「まあ、良いです。重力の魔人。奴をこの手で抹殺するのは後回しにしましょう」
同格の魔人を殺すのは、ひどく骨が折れる作業だ。
今のヴィーナスは塔の完成という神聖な儀式に集中している。その邪魔はされたくない。
それに、ガイアはまだ塔の内部へ侵入してきてはいない。
どうやら、ヴィーナスの未知の能力を相当に警戒しているようだ。
ならば、今すぐ直接手を下す必要はない。
「重力の魔人の処分については、アレに任せましょう」
「……承知いたしました」
ギンコが音もなく一礼し、影のように下がっていく。
バルコニーに残されたヴィーナスは、冷たい風を浴びながら遥か頭上の空を見上げた。
ヴィーナスの配下となった者たちは、外界から資材を運び込み、塔に設置された転送の魔道具によって最上階へと送り届けている。
そして最上階では、魔法が使える奴隷たちによって、塔の壁や床、螺旋階段が急ピッチで構築されていた。
かなりの数の奴隷が休むことなく作業を続けている。
最上階で働く優秀な奴隷たちは、ヴィーナスが、というよりは下層のゲーヒィンが選別した者たちだ。
「あの下品な男。目利きの才だけはあるようですからね」
ゲーヒィンに好き勝手させているのは、それが理由だ。
労働力の選別において、あれほどの悪辣な才能を持った男を今から代わりに見つけ出すのは難しい。
それに、ヴィーナスとしてもこれ以上計画を先延ばしにはしたくなかった。
彼女は一秒でも早く、この美しい世界から害虫たる人類を抹殺したいのだ。
「ああ……星よ。もう少し……ご辛抱なさってくださいまし……」
ヴィーナスは両手を胸の前で組み、再び熱を帯びた瞳を閉じる。
「まもなくです。まもなく、地上からゴミが消え、美しい星を取り戻してみせますので……」
【おしらせ】
※9/19(土)
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