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第19話 もう一度、君は理解してくれるだろう?

第19話 もう一度、君は理解してくれるだろう?


治癒制度改革法の公布式を迎えた朝、王都には春の雨が降っていた。辺境伯家の王都屋敷では、玄関脇の鉢に植えた黄色い水仙が濡れ、細い茎を石壁へ寄せている。エレノアは薄い青緑色のドレスを着て、食堂で焼いた卵と豆のサラダを食べていた。卓上には式典の招待状と演説原稿が並び、その隣では昼食用の胡桃パンを料理人が布へ包んでいる。


「演説は、この長さで本当に終わりますか。議員が一人ずつ挨拶を始めたら、昼食は三時過ぎになりますよ。卵と燻製肉を挟んでおきますが、冷める前に食べてくださいね」


「パンは冷めても食べられます。ですが、前回のように葡萄酒の乾杯を七回もするなら、途中で抜け出します。七回目には、何を祝っているのか誰も覚えていませんでした」


「私も三回目から水を飲んでいた。今日は乾杯より先に昼食を取ろう。公布された法律が、空腹で倒れる治癒師を減らすものなのだからな」


アルベルトは黒い正装の襟を直しながら、胡桃パンの包みを自分の鞄へ入れた。エレノアの鞄へ入れると、資料に押されてパンが平らになるためだった。彼の襟元には辺境伯家の銀の紋章があり、右の袖には昨夜つけたインクの小さな染みが残っている。侍女が着替えるよう勧めたが、アルベルトは乾いているから問題ないと言って断った。


同じ朝、レナードは王都の安宿で目を覚ました。鉱山から五日かけて乗合馬車に乗り、昨夜遅く到着したばかりだった。椅子には泥のついた灰色の作業着が掛けられ、洗面台には水へ浸したままの布が残っている。窓辺の小さな鉢では、白い雛菊が二輪咲いていた。


机の上には、鉱山町で買った帳面が置かれている。レナードは毎日、働いた時間と他人へ頼んだことを書いてきた。薪を六本運んだ日、ガイの荷車を一度だけ押した日、遅刻をしなかった日も記録している。その最後の頁には、エレノアに謝罪するため王都へ行くと書かれていた。


「今度こそ、押しつけずに話せる。私は働くことも、自分で洗濯することも覚えた。これを見れば、エレノアも分かってくれるはずだ」


レナードは帳面を内ポケットへしまい、鏡の前で髪を整えた。元騎士団長だった頃の礼装はすでに売ってしまい、着ているのは安い茶色の上着だった。肘には自分で縫った継ぎ布があり、針目が曲がっている。彼はそこを手で隠そうとしたが、すぐに腕を下ろした。


宿の食堂では、大麦粥と薄い山羊乳が出された。レナードは料金を払い、壁際の席で急いで食べた。隣では行商人が干し魚の値段を数え、銅貨を何度も積み直している。レナードが公布式の時刻を尋ねると、女将は昼前には議員が集まると教えた。


「知り合いが式へ出るのです。会って、渡したいものがあります。どこで待てば近づけますか」


「招待状がないなら、正門の外でしょうね。今日は警備が厳しいですよ。大声を出せば、話を聞く前に取り押さえられます」


「騒ぐつもりはない。最後に一言だけ話す。それで十分だ」


レナードは粥を食べ終え、器を返却口へ置いた。以前なら、そのまま卓上へ残していた。女将は何も言わなかったが、彼が扉を出る前に呼び止め、外は雨だから古い傘を持っていけと言った。傘の布には三か所も継ぎがあり、開くと片側へ傾いた。


議会前の広場には、多くの市民が集まっていた。治癒師たちは白い外套を着て、胸へ青いリボンをつけている。露店では温かな栗菓子と香草茶が売られ、雨に濡れた石畳へ甘い匂いが漂っていた。広場の中央には、改革によって補償を受ける元治癒師たちの席も用意されていた。


クララは灰色の上着を着て、仕立屋の弟子に傘を持ってもらっていた。ナディアは籠に入れた林檎を隣の者へ配り、雨で冷えた指を何度もこすっている。議会の壁には改革法の要点が大きく掲示されていた。一日六時間勤務、二時間ごとの休憩、危険手当、魔力枯渇時の休養と補償が、誰にでも読める文字で書かれている。


エレノアを乗せた馬車が広場へ入ると、人々から拍手が起きた。レナードは人垣の後ろで背伸びをし、馬車の扉を見つめた。最初にアルベルトが降り、続いてエレノアが姿を見せる。青緑色のドレスの裾が雨で少し濡れたが、彼女は自分で傘を持って石段へ向かった。


「エレノア!」


レナードは人々の間を押し分けた。借りた傘が誰かの肩へ当たり、布が骨組みから外れる。警備兵が二人、すぐに彼の前へ立った。レナードは内ポケットから帳面を出し、敵意はないと訴えた。


「私は彼女の元婚約者だ。危害を加えるつもりはない。話をするためだけに来た。最後に一言だけでいい」


「辺境伯夫人から、あなたとの面会を認める届けは出ていません。これ以上近づけば拘束します。お下がりください」


「私の話を聞けば、エレノアも納得する。頼む、この帳面を見せるだけだ。私は以前とは違う」


レナードは警備兵の腕を振り払い、石段へ走ろうとした。濡れた靴底が滑り、片膝を石畳へつく。それでも立ち上がろうとしたため、二人の警備兵が両腕を押さえた。帳面が手から落ち、開いた頁へ雨粒が落ちた。


エレノアは石段の途中で足を止めた。レナードの茶色い上着、曲がった継ぎ布、荒れた指が見えた。以前より痩せ、髪にも白いものが混じっている。その姿を見れば、かつてのエレノアは治療が必要ではないか、食事を取っているかと考えただろう。


だが今、彼女の鞄には午後の演説に使う資料があり、アルベルトの鞄には昼食の胡桃パンが入っている。料理人は冷める前に食べるよう何度も言っていた。議会の中では、クララたちが自分の席へ着くのを待っている。エレノアには、レナードのために止めたくない予定があった。


「手を離せ! エレノア、私は変わった。鉱山で働き、自分のことは自分でできるようになった。今度こそ君を大切にする。君は理解してくれるだろう?」


レナードの声は、雨の中でも広場の端まで届いた。周囲の人々が口を閉じ、エレノアの返事を待っている。彼女は傘の柄を両手で握り、息を一度吐いた。レナードの声が震えていても、それを止める役目は自分にはなかった。


「理解しています。あなたは今でも、自分が変わったと認める役目を私に求めています」


「違う。私はただ謝りたいのだ。君に許せとは言わない。帳面を見て、私の努力を知ってくれるだけでいい」


「それが、認めてほしいということです。あなたが洗濯をして、時間どおり働くのは、あなたの生活です。私が褒めなければ続けられないのなら、私を大切にするための変化ではありません」


「では、私はどうすればいい? 何をすれば、君は私が変わったと信じるのだ?」


「その答えを私へ求めないことから始めてください。私はあなたの教師でも、母親でも、治療師でもありません。もう一度婚約する相手でもありません」


レナードは何か言おうとしたが、口だけが動いた。雨に濡れた帳面の文字はにじみ、働いた時間も運んだ薪の数も読めなくなっていく。警備兵の一人が帳面を拾い、彼の足元へ置いた。もう一人は、抵抗をやめるなら手を離すと告げた。


「エレノア、私は君を失ってから、何もなくなった。爵位も家も仕事も失った。君まで私を見捨てるのか」


「あなたが失ったものは、あなたの行いによって失われました。私はあなたの人生を奪っていません。自分の人生を返してもらっただけです」


エレノアはレナードへ背を向け、石段を上った。アルベルトは彼女の腰へ手を回すことも、急いで中へ連れていくこともしなかった。ただ半歩隣を歩き、議会の扉を自分の分だけ開けた。エレノアはもう片方の扉を自分で押し、彼と並んで中へ入った。


レナードが抵抗をやめると、警備兵は約束どおり腕を離した。彼は石畳へ落ちた帳面を拾い、濡れた頁を閉じた。広場にいた人々は式典の開始を知らせる鐘を聞き、議会へ視線を戻している。誰もレナードを慰めず、罵りもしなかった。


「中へ入ろうとしなければ、逮捕はしない。ただし、辺境伯夫人へ近づくことは禁止されている。今日は宿へ戻れ」


「私は五日もかけて鉱山から来た。話は、これだけなのか」


「五日かけたのは、あなたが決めたことだ。夫人が五日分の返事をする義務はない。歩けるなら、自分で立ってくれ」


レナードは濡れた膝へ手をつき、自分で立ち上がった。壊れた傘をたたみ、骨の曲がった部分を紐で縛る。帰り道、露店から栗菓子の甘い匂いがしたが、銅貨を宿代へ残すため買わなかった。代わりに屋根のある場所へ入り、帳面の頁を一枚ずつ広げて乾かした。


議会の中では、公布式が始まっていた。エレノアは演壇へ上がり、新しい制度によって治癒師が休む権利と対価を受け取る権利を得たことを話した。自分を使い切るまで働くことだけが献身ではなく、明日も患者の前へ立てるよう休むことも仕事の一部だと伝えた。傍聴席のクララは、震える右手を左手で支えながら拍手した。


式典が昼休みへ入ると、エレノアとアルベルトは中庭へ出た。雨はやみ、濡れた水仙が日差しを受けている。二人は石の長椅子へ座り、料理人が包んでくれた胡桃パンを取り出した。布に包まれていたため、パンはまだ少し温かかった。


「冷める前に間に合いました。卵も崩れていません。あなたの鞄へ入れて正解でしたね」


「私の資料は少し折れた。パンのほうを守りすぎたらしい。それでも食べるには問題ない」


「午後の演説で使うのは私の資料です。あなたの分は予備ですから、多少折れても構いません」


エレノアは胡桃パンを一口食べた。焼いた卵の塩気と燻製肉の香りが広がり、胡桃が奥歯で小さく砕けた。議会の外でレナードが何をしているのか、確かめようとは思わなかった。彼女は自分の昼食を最後まで食べ、午後の式典が始まる前に温かな香草茶も一杯飲んだ。


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